「父の死を受け入れることができないのに、人生の応援歌を歌わなければいけない…精神的に歌うのが辛かった」
スケジュールが詰まっていたため、15周年を迎えた02年3月から1年間休業。突然の活動休止に重病説や死亡説も出た。休業中、脳裏をよぎった引退の2文字を取り払ってくれたのが元歌手、二葉百合子さん(84)の歌謡浪曲「岸壁の母」だった。
「たまたまテレビを付けたら二葉先生の65周年コンサートでした。心の迷いがあるからか歌声が突き刺さって、『私がすがれるのは先生だけ。強いノドと、強い精神力があったらもう1回歌えるかもしれない』と思い、手紙を書きました」
歌のレッスンを快諾した二葉さんから掛けられた言葉は、「あなたも歌の壁にぶつかったのね。それは成長の証しよ」。それから毎日習った。
「車で自分の『夜桜お七』をかけて、10カ月ぶりに歌ってみたの。そしたら高い声が出たので、『これで何とか歌うことできるかな』って」
自信と歌声を取り戻し、翌03年4月に復帰。再び歩き始めた。
その後は演歌にとどまらず、ボーダーレスに活躍。09年にはフォークデュオ、ビリー・バンバンのカバー曲「また君に恋してる」が大ヒット。昨年はエアバンド、ゴールデンボンバーの「片想いでいい」もカバーした。
「私は歌手としてとっても運が良い。色々な方々に出会い、色々なタイプの素晴らしい曲を歌わせていただいた。自分では想像していなかった30周年です。だって、ゴールデンボンバーさんですよ」