九回、無失点に抑えた藤川。連投もこなし、今季2勝目を手にした(撮影・森本幸一) (セ・リーグ、阪神3x-2中日、12回戦、6勝6敗、19日、甲子園)揺れるスタンド。虎党の大合唱-。すべてが背中を押してくれた。これ以上ない舞台に球児が応えないはずがなかった。
「チームが勝ってよかった。(連投は)初めてじゃないよ。久しぶりだったね。まだまだ素人です。まだ春先なんでね。残り99試合。チームにとって重要な仕事ができればいいと思います」
前日18日に日本球界では4年ぶりにセーブをあげたばかり。休む間もなく、2日連続で出番がやってきた。
2-2の九回。本来ならばマテオがいく場面だったが守護神は股関節付近を痛めており、この日まで休養予定。1番・大島から始まる相手打線を封じるべく、金本監督から指名された。
いきなり大島に中前打を許したが、続く荒木のバントを得意のフィールディングで二塁封殺。二死後、ビシエドを歩かせ、暴投も重なったことで二、三塁とされたが、最後はナニータを高め真っすぐで平凡な左飛に仕留めた。金本監督はこの1球を「高めで押した、力で抑えたレフトフライ。昔の球児を思いだしましたね」と絶賛した。
日本球界で救援で勝利投手になったのは2012年7月14日のヤクルト戦(甲子園)以来1405日ぶり。先発に転向してもぎとった4月3日のDeNA戦(横浜)との違いについて問われても「こっちは(特別な)感情はないですけどね」と笑った。「迷惑をかけないように頑張ります」。全盛期のような剛球連発は難しいかもしれないが、ゼロで切り抜ける術は体で覚えている。
春季キャンプ中のことだった。球団の写真撮影に1時間ほど要したことがあった。苦い表情で謝るスタッフに「そんなん気にせんでええよ! アメリカのときなんて1日中拘束されたけど、それが当たり前やったから」と逆に励ましたという。チームが変わろうとしているときだからこそ、ベテランの気配りがチームにいい影響を与える。それは球児も当然、理解している。
自主トレ期間は、鳴尾浜を中心に汗を流した。
「(田面ら)鳴尾浜にもいい選手がたくさんいます。(僕が)疲れたら代わってほしいですネ」
球児節は半分冗談、半分本気だったのかもしれない。今はただ身を粉にして働く。それが自分が築いた道だ。 (阿部祐亮)
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