ナビスコ杯決勝でG大阪を破って優勝を決め、選手とともに喜ぶ鹿島の石井正忠監督(中央) 【No Ball,No Life】
10月31日、23回目を迎えたナビスコ杯の決勝は鹿島がG大阪を3-0で下し、幕を閉じた。昨季3冠王者の連覇を阻み、大会最多6度目の優勝。これで国内の主要タイトルは17冠目となり、2位で7冠のG大阪、東京Vとの差をさらに広げた。常勝軍団復活への確かな一歩を刻んだ。
そんな鹿島の指揮を執ったのは、7月に就任したばかりの石井正忠監督だ。就任直後にリーグ戦でいきなり6連勝し、ナビスコ杯でも一気に優勝へと駆け上がった。「選手が90分間戦ってくれた。理想の形」と喜び、選手には「こういった試合ができるのだから、今後はこの試合を最低限のラインとしてやっていこう」と伝えたという。
その石井監督、サポーターへの神対応が話題になっている。ナビスコ杯制覇から一夜明けた1日、練習後のクラブハウスでは1時間以上もサインや写真撮影などのファン対応を行う姿が見られた。「1人でも多くのサポーターの方と触れ合いたい。それは現役の頃から変わっていません」。そう言うと、優しく目尻を下げた。
練習の見学に訪れたファンと選手全員で集合写真を撮ることも取り組みの一つだ。他のクラブでも選手が個別に撮影に応じる場面はあるが、集合写真は珍しい。「少しでも多くの方が見学に来るきっかけになれば」との思いから発案し、今では名物の1つになりつつある。
8月には採取したカブトムシをファンにプレゼントした。しかも昆虫飼育用のケースに腐葉土を入れ、自ら仕分ける手の込みよう。SNSで告知したが、翌日にすぐ完売した。「自宅の門のところの木に飛んでくるんです。それも何十日も連続で。30匹とかですかね」と笑う。
プレゼントするきっかけとなったのは7歳の長女だった。登校する際にカブトムシを見つけたが弱っており、帰宅するころには死んでしまっていたという。ところが、このカブトムシに近所の男の子がいたずらをし、頭だけを取って角が見える状態で土に埋めていた。
「それを見て娘が号泣して。あまりにかわいそうだったので、次の日から来たカブトムシを全部飼うようになったんです。そしたら毎日来るようになって。どうしようもなくなって、クラブに引き取り手を探してもらったんです」