阪神は22日、東京都内のホテルでスカウト会議を行い、23日のドラフト会議での早大・有原航平投手(22)の1位指名を決め、公表した。7球団の競合が予想される大学No.1右腕だが、くじ引き役の和田豊監督(52)は「運気が逃げる」と開運アイテムについては沈黙。クライマックスシリーズ(CS)を5勝1分けと無敗で突破した指揮官が、日本シリーズ前に大仕事を果たす。
ドクドク、ドクドク…。今、その男のボディーには、勝ち運の血流が波打つ。日本球界で天運なら今、和田監督の右に出る者はいない。CSを無敗で勝ちあがった勢いで、早大・有原の『交渉権』を引いてみせる。
スカウト会議出席のため、搭乗を待つ大阪空港出発ロビー。
--左手で引くか?
「言わないよ。運気が逃げるから」
--金ネクタイは?
「だから言わんって」
東京都内のホテルで行われた約2時間の会議後。
--必勝アイテム?
「だから、あしただって」
--金色ネクタイは持ってきてはいるのか?
「しつこい!! それは言えないと言っただろう(笑)」
明らかに秘策アリ。だが、決して口を開かなかった。2年前のドラフト会議で藤浪晋太郎(大阪桐蔭高)を4球団競合の末に引き当てた際、身につけたゴールドネクタイが大本命だ。午前中には神田神社(神田明神)を訪れ、必勝祈願。そして、左手で「当たりくじ」を引いた。
昨年のドラフトは大瀬良(九州共立大)を1位指名したが、3球団が競合し、広島が交渉権をゲット。その大瀬良が今季10勝を挙げ、広島のCS出場に大きく貢献した。今回は、CSの勝ち運を逃さないために必勝アイテムなどもいっさい明かさず。最大限にまで運気を高めて、狙うのが大学No.1右腕、有原だ。
スカウト会議後の中村GMは「公言します」と駆け引きもしなかった。意中の有原はスリークオーターから繰り出す最速156キロの直球を最大の武器とし、縦のスライダーは威力十分。東京六大学リーグでは1年春から登板を果たし、3年秋には最優秀防御率(0・72)のタイトルを獲得。今春には5勝を挙げて初のベストナインに選出された。
映像を直接チェックしたことを明かした和田監督も「(魅力は)マウンドさばきからすべて。マウンドでの立ち姿が一番、投手としてのもの(力量)を物語っている」とゾッコン。中村GMは「少なくとも(競合)5球団は覚悟している」と見通しを語ったが、編成トップからは自信がみなぎる。なぜか?
CSファイナルステージで巨人に4連勝。無敗(5勝1分け)のままCS優勝を飾った猛虎の将の剛腕にかかれば…。
「日本シリーズの前に大仕事をしてね」と景気づけを誓った和田監督。有原獲りから、大一番へ-。引く、引く、引く!! 最高の脚本を現実とする。 (栃山直樹)
★早大・有原、ドラフトは「TV中継見る」
阪神など7球団の1位指名が予想される早大・有原は22日、小雨が降る東京・西東京市の早大グラウンドで午前8時から投内連係など約2時間半、汗を流した。大学の広報を通じ、「特に他の日と変わりません。落ち着いており、感謝しております。(当日は)寮内でリラックスしてドラフト会議のテレビ中継を見ることができます」とコメント。岡村猛監督(59)は「まだ有原は全国区ではない。先輩の斎藤佑樹(日本ハム)は甲子園で優勝して、球場(神宮)に人をたくさん連れてきた。もっとみんなに知ってもらえるように」と激励した。
★2012年10月25日 阪神、オリックス、ロッテ、ヤクルトが藤浪(大阪桐蔭高)を1位指名。和田監督は早朝、勝負事の神様として知られる神田神社(神田明神)で必勝祈願。黄金のネクタイで臨み、左手で交渉権確定のクジを探し当てた。阪神は1984年に嶋田章弘(箕島高)を1位指名で引き当てて以来12連敗中だったが、負の歴史に終止符を打った。
★13年10月24日 午前中に前年同様、神田神社を訪れ、必勝祈願。阪神、広島、ヤクルトが大瀬良(九州共立大)を1位指名し、広島が交渉権を獲得。外れ1位で入札した柿田(日本生命)もDeNA、日本ハムと競合。交渉権はDeNAがゲット。岩貞(横浜商大)を入札するも日本ハムと争奪戦に。3度目で当たりくじを引いた。
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