阪神が、米大リーグ、カブスの藤川球児投手(34)の再獲得へむけて調査を行っていることが3日、分かった。アンディ・シーツ駐米スカウト(42)が視察を完了しており、渡米中の中村勝広GM(65)に近く状況を報告する。球団では手術を受けた右肘の状態を考慮し、2012年までの抑えではなく、先発で迎え入れるウルトラCプランも準備。動向を注意深く見守っていく。
阪神は、藤川の復帰へむけた準備を進めている。3Aアイオワの一員として登板した7月30日(日本時間31日)、ニューオーリンズとのダブルヘッダー。2005年から3年間阪神でプレーしたシーツ駐米スカウトがネット裏に陣取った。
第2試合の六回、藤川がマウンドに上がると、三脚を立ててビデオカメラを設置。スピードガンを持って1球1球、球速を測った。手術を受けた右肘の回復状況を細かくチェック。藤川が降板すると球場を後にした。
シーツ氏は「元チームメートに会いに来ただけだ」とだけ話したが、目的は明らか。球団関係者は、藤川の再獲得=復帰にむけて調査していることを認めた。
「大リーグにいって右肘を故障し、いろんな思いもあるでしょう。もし彼が日本に戻ることも選択肢に考えているなら、いの一番に声をかけたい。ウエルカムです」
右肘の状態にも最大限配慮する。先発転向プランだ。「手術を受けた右肘の状態のこともあるので、先発でどうか。あの球速、球種、投球術があれば、先発で10勝はできるだろう」と関係者は構想を明かした。
阪神で球団最多の220セーブを挙げた藤川の、選手生命を考えての提案だ。昨年6月にトミー・ジョン手術を受けたが、登板間隔を空けることができる先発の方が、より長く活躍できるともいわれる。
藤川は30歳を過ぎてから、代名詞の「火の玉ストレート」だけでなく、フォークボール、カーブ、さらに米国でツーシームとカットボールも習得。先発として通用する多彩な球種を身につけた。阪神は能見、メッセンジャー、藤浪、岩田に続く先発がなかなか出てこない状況もある。経験豊富な藤川が加われば、層は厚くなる。
藤川はカブスと2年契約(3年目の来季は球団オプション)を結んでおり、今後もメジャーでのプレーを最優先に考えている。だがカ軍が契約を更新しなければフリーエージェント(FA)となり、今後は流動的になる。シーツ氏は週明けにも渡米中の中村GM、西海岸担当のウィリアムス駐米スカウトらと合流。藤川の現状を報告するもようだ。
5日(同6日)にメジャー復帰予定の藤川について、阪神側も大リーグに懸ける思いを十分理解している。夢をかなえてほしいことに変わりはないが、今オフの状況は不透明だ。球児が再び人生の岐路に立ったときに備えて、阪神は迎え入れる準備を整える。
★佐々木主浩 1999年オフにFAで横浜(現DeNA)からマリナーズへ移籍。1年目に新人王を獲得し、メジャー通算129セーブ。2004年に年俸6億5000万円の2年契約で横浜に復帰し、05年に現役引退
★石井 一久 02年1月にポスティングシステム(入札制度)でヤクルトからドジャースへ。同年14勝を挙げ先発で活躍。メッツを経て06年にヤクルトに復帰し、13年に西武で現役引退。日米通算182勝
★高津 臣吾 03年オフにFAでヤクルトからホワイトソックスへ移籍。04年は6勝19Sと救援で活躍したが、05年8月に解雇されてメッツへ。06年にヤクルトに復帰。韓国、台湾などでもプレーし、12年にBCリーグ・新潟で現役引退
★川上 憲伸 08年オフにFAで中日からブレーブスへ。09年に7勝を挙げた。12年に中日復帰
この記事をシェアする