第96回全国高校野球選手権群馬大会(20日、高崎健康福祉大高崎6-2前橋育英、高崎城南)46大会が行われ、群馬3回戦では昨夏初出場優勝を果たした前橋育英が、シード校の高崎健康福祉大高崎に2-6で逆転負けを喫し、連覇が絶たれた。昨夏、2年生で優勝投手となった今秋のドラフト1位候補の右腕、高橋光成(こうな)投手(3年)が七回に悪夢の6失点。巨人の原沢敦・球団代表兼GMら11球団35人のプロ関係者が見つめる中、最後の夏が終わった。
涙が止まらない。高橋光はベンチに戻ると人目もはばからずに泣いた。昨夏は甲子園で優勝旗を手にしたが、最後の夏は3回戦で幕を閉じた。
「終わってしまって、悔しいです。ここが夏の大会のヤマ場だとしっかり準備してきたけど、研究されていて、打たれて…。力不足です」
魔の七回だった。2点リードで迎えたが、二死走者なしから四球を機に右前打、四球で満塁。その後も死球でまず1点。相手の3番・脇本直人外野手(3年)に右前2点適時打で逆転され、4番・柴引良介内野手(2年)には中越え2点三塁打を浴びるなど、この回に6点を献上した。
「あの回がなければ勝てた」。ベンチで唇をかんだ高橋光は、1月に右手親指を骨折。100球を超え、球威が落ちたところを打ち込まれた。
昨夏の主力は大半が卒業し、1メートル88の大型右腕にとっては苦悩の1年だった。チームは昨秋と今春の県大会のいずれも初戦で敗退。「あの(優勝の)後は勝って当たり前というプレッシャーを感じ、練習試合で打たれて、悩んで落ち込んだこともあり、大変な1年だった」という。
それでも、この日は自己最速にあと1キロに迫る最速147キロの直球と鋭く落ちるフォークを武器に8回を投げ、7三振を奪った。今秋のドラフト1位候補だけに高崎城南球場には11球団35人のプロ関係者が集まり、巨人・原沢球団代表兼GMは「この試合でどうこうということはない。体、持っているものは存在感があり、上位指名の可能性はある」と高評価した。
本人も、これで野球人生を終わらせるつもりはない。「プロに行けるようにしたい」とキッパリ言い切った。
「プロでどんな試合でも負けない投手が目標。プロでできるように、引退してもトレーニングをしていきたい」。これまで球団にこだわらずプロ一本でと公言しており、今秋のドラフト会議では上位で指名される可能性が高い。この悔しさをバネに、高橋光がさらなる高みを目指す。 (赤堀宏幸)
★昨夏は優勝の立役者
昨年、前橋育英は群馬大会を制して夏の甲子園初出場(春は1度出場)。2年生エースだった高橋光は、1回戦(対岩国商)で9連続を含む13奪三振の快投。1-0で完封勝利を飾った。2回戦(対樟南)も1-0の完封で突破すると、その後も横浜、常総学院、日大山形と強豪を次々と破り、決勝に進出。準決勝まで自責点0(2失点)だった高橋光は、決勝(対延岡学園)で3失点(自責点2)したが、6安打5奪三振で完投。前橋育英が4-3で勝ち、初出場優勝を達成。高橋光は6試合で50回を投げ、防御率0.36と圧巻の活躍だった。
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