W杯メンバー発表から一夜明けた11日。カズは「こういう発表は、がぜん、やる気が出るね」と目を輝かせた。サッカー選手としてのモチベーション。それがW杯にあることを熟知している男ならではの言葉だった。
「自分にも何かできることがあるとすれば、チームリーダーとしての役割だろう。そこが一番近いと思う」
カズは真顔でこう話した。そして「その間のスケジュールを空けておくつもりだ」とも。“その間”とはもちろん、南アW杯。12日には予備登録(30人)の残り7人が発表になるが、カズは「30人枠の7人は、南アフリカには行けないわけでしょ。ならば、サポートメンバーの方がいいね」。南アにも帯同し練習相手などを務める4人ほどのサポートメンバー入りを熱望した。
W杯のたびに思いだされる98年フランス大会での衝撃的な落選。自身最後の代表ゴールを決めた2000年6月6日のハッサン国王杯・ジャマイカ戦(カサブランカ、〇4−0)以降代表戦には出ておらず、W杯も知らない。Jリーグ開幕の93年からサッカー界の主役を務めてきたキングにとって、どんな立場でもいいからW杯の地を踏み、空気を感じ、においをかぎたい。それが本心だ。
だから、右すねの骨折から完全に復帰していないGK川口の“サプライズ”代表入りにも、「代表から離れていたベテランの冷静な判断が必要。ヨシカツ(川口)でよかった」とうなずいた。自らが呼ばれれば、川口とともにリーダーの役目を全うする。「4強」の目標に到達するのに必要なことと理解している。
だが43歳は、W杯ピッチに立つ夢も捨てていない。「“母国”での(次回14年)ブラジル大会は楽しみにしている。とにかく行きたい」。15歳でサッカー留学したブラジルを「母国」と表現したほど、かの地でのW杯はカズにとっては特別なものだ。
体力の衰えは自覚している。「これから3年間冷凍保存してもらい、最後の1年で勝負したい。けさ、このことを家族で話し合ったんだ。3年間会えなくなるってね」。荒唐無稽(むけい)な話にカズのW杯への思いがほとばしる。4年後、47歳での出場となれば、カメルーン代表FWロジェ・ミラの42歳39日のW杯最年長出場記録を塗り替えることになる。
「日本代表のユニホームはいつでもあこがれている。ここ10年間、呼ばれていないが、どんな形でもいいから着たい」
日本代表・岡田武史監督(53)は前日の発表会見で、カズについては「ノーコメント」としたが、熱いこだわりが胸にたぎるカズは、いちるの望みをポジティブに待つ。(宇賀神隆)