2006.02.18 更新
まさかの転倒!転がり落ちた銅メダル…女子団体追い抜き
アッ、アッ! ヒャ〜!! 痛恨の転倒。リードしていた残り2周手前のカーブ。日本は先頭を田畑に譲るために、外側に膨らんだ大津(右上)の体重が後ろにかかり過ぎ、尻もち。そのままコース外側のクッションに突っ込んだ(共同)
悲劇が足下をすくった…。新種目の女子団体追い抜きの3位決定戦で、日本(田畑、石野、大津)はロシアに敗れて4位に終わった。大津広美(21)=富士急=が4周目のコーナーで痛恨の転倒、ロシアに抜かれ、競技は終了した。だが、練習不足にもかかわらず、銅メダルにあと一歩のところまで迫ったポテンシャルの高さは証明。今後、団体追い抜きが日本の得意種目になる可能性は十分。トリノが“お家芸”への出発点だ。
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もう、時間は戻せない。1度崩れた体勢は、一瞬に流された。残り2周の手前のカーブ。先頭を譲るため外側に膨らんだ大津が、コントロールを失い転倒。そのままコース外側のクッションに激突した。日本のメダル獲得は、まばたきする間に、夢と消えた。
日本勢にとって、今大会初のメダルをかけた3位決定戦。歓喜のロシア勢とは対照的に、田畑と石野は肩を落とし、転倒した大津の悔し涙がリンクをぬらした。
「悪夢」が起こるまで、日本はわずかながらロシアをリードしていた。相手を引き離そうと先頭に立ったチーム最年長の田畑真紀(ダイチ)がラップを上げようとした直後、最後尾の大津が腰から落ちた。「(前の2人と)離れたのであせってしまった。あと2周頑張ればメダルに手が届いたと思うと、本当に悔しい…」と小さな声を振り絞った。
今五輪から採用された団体追い抜き。「三位一体」で、空気抵抗にさらされる先頭を交代しながら滑るため、チームワークが何よりも重要視される。3人の最後尾の選手のタイムで勝負が決するだけに、呼吸を合わせ、足並みも合わせながら、1人の脱落者を出すことなく滑り切らなくてはならない。
青柳徹強化副部長(37)は「団体で力を合わせる競技は日本人に合っている。個々の力が多少劣っていても戦える」。“和”を重んじる日本人の気質が相乗効果にもなる。女子は昨年1月のワールドカップ(W杯)で優勝するなど、隠れたメダル候補といわれてきた。
だが、表彰台目前で散ったことで、新たな課題が突きつけられた。トリノ入りして以降、個人種目優先のため、「団体追い抜き」の練習をしたのは直前のわずか2日間。所属チームが異なるため、本番直前になるまで登録5選手が顔をそろえることはなかった。
練習不足のなかでの4位。大津の転倒がなければ、ロシアを振り切るだけの力を日本は備えていた。登録5選手中ただ1人2日間全4レースに出場した田畑は、「3人で最後まで落とさなければいけると思っていた。やっぱり先頭交代が難しい。練習が必要です」。
女子チームを担当した羽田雅樹コーチ(44)は「個人種目との兼ね合いの中でどう強化していくか、今後考えていく」。所属チーム間の垣根を取り払うことや、ナショナルチーム単位での強化を急ぐ構え。4年後のバンクーバー大会でメダル獲得へ。この芽を摘んではならない。
◆石野枝里子
「今まで通りの日本の作戦で負けたので、実力かな。悔しい結果だけど、攻めのレースはできた」
◆ロシア・スピードスケート女子団体追い抜きのエカテリーナ・アブラモワ。日本に勝って銅メダル
「スポーツ選手にとって4位は一番悲しい結果。勝つか負けるかという点で、最も難しいレースだった。すべてがうまくいった」
■団体追い抜き
五輪では今大会で初めて正式種目になった。自転車競技の団体追い抜きのスケート版。3人1組でチームを編成、リンクの対角から2チームが同時にスタートし、空気抵抗の強い先頭の選手を入れ替えながら、男子は8周(3200メートル)、女子は6周(2400メートル)する。3人の中で最後にゴールした選手のタイムが採用される。途中で相手チームを追い抜いた場合はその時点で勝負が決まる。個人力量とチームワークが要求される。
8カ国が出場する五輪では、予選のタイムでトーナメント方式の組み合わせが決まり、勝ち抜き方式で順位を決める。エントリーは1チーム5選手で、レースごとに選手の入れ替えが可能。
★団体追い抜きのツボ
◆駆け引き 出場する3人のメンバーは各レースの20分前までに提出。対戦相手が先にエントリーするのを待ってから、メンバー表を提出するコーチもいる。3000メートルの持久力と1500メートルのトップスピードに優れた選手を軸とし、スピードを維持する中継ぎ的な選手3人で編成する
◆戦術 先頭の選手を風よけにして他の2人が滑ることで体力の消耗を防ぐ。空気抵抗を受ける先頭を交代させるタイミングや、個々の周回数などがチームの作戦
◆チームワークが命 強化に力を入れた国が、好成績。ロシアは練習に時間を割いていた。男子優勝のイタリア、2位のカナダはナショナルチーム単位での強化が生かされた。実力者をそろえながらも、準決勝で転倒したオランダ男子は、スポンサーが異なる選手の寄せ集めだった
◆注目株 新種目に対する各国の事前の評価はさほど高くなかったが、国別対抗で、レース途中でも優劣が見え、位置取りと駆け引きが観客に息をつかせない。会場も盛り上がり、今後は五輪の呼び物になりそう


◆根本奈美
「3位と4位は大きな違い。でも、練習してきたわけじゃないのに団結できたし、もっと上に行ける自信もついた」