2006.02.14 更新
条治も負けた! お家芸守れず…日本いまだメダルなし
あの条治が、メダルを逃した…。スピードスケート男子500メートルで、世界記録保持者の加藤条治(21)=日本電産サンキョー=は6位に終わった。昨年11月に34秒30の世界記録を樹立したが、初の五輪の舞台で実力を発揮できなかった。及川佑(25)=びっくりドンキー=が日本勢トップの4位。清水宏保(31)=NEC=も3大会連続メダル獲得はならず。日本勢はこの種目で7大会連続のメダル獲得を逸した。
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トリノ五輪(スピードスケート男子500メートル) 初の五輪には魔物がいた。世界記録保持者の加藤に厳しい試練が突きつけられた。ハプニングは1回目に起きた。前の組で権純天(韓国)が転倒したためフェンスの補修作業などが入り、約8分間も待たされた。それまでは観客席に手を振る余裕さえ見せていた21歳の表情が、みるみる硬くなる。氷に傷がついた場所まで行って、じっと見つめた。集中力がそがれる、ジレる不吉な空気が流れていた。
100メートル通過は9秒82。いつもより0秒20ほど遅い。世界最高と評されるコーナーワークにも焦りが生じ、最初のカーブで上体が揺れた。最後までスピードに乗れないまま、自己の持つ世界記録より1秒29も遅い35秒59で11位に沈んだ。もはや、2回目でばん回することはできなかった。
昨年11月に世界記録を樹立し、金メダル候補の最有力として臨んだトリノの舞台だった。五輪会場で行われた昨年12月のワールドカップ(W杯)で2、1位。メダル獲りへの自信を手にした直後、年末に風邪をひいてダウンしたのも響いた。五輪前哨戦の世界スプリント選手権(1月21、22日、オランダ)では7、8位に低迷。その後、国内合宿で調整したが、万全の状態にまで仕上げることはできなかった。
ノルディック複合の高橋大斗が途中棄権、モーグル女子の上村愛子、里谷多英がメダルを逸し、スキー・ジャンプでは原田雅彦の予選失格、スノーボードは男女とも全滅…。今大会の日本勢は次々と有力選手が敗れ去り、日本選手団の旗手を務めた加藤をもってしても、負の連鎖を止めることはできなかった。
男ばかりの4人兄弟の末っ子。小1のとき、3人の兄を追い、お下がりのスケート靴とスーツで滑り始めた。とくに長兄・清昌さん(25)の影響でショートトラックにも取り組み、体を内側に大きく倒して回るコーナリング技術を体得した。山形中央高1年時のインターハイで、2つ上の二男・竜也さん(23)を2位にしたがえて優勝。高3で初出場したW杯で3位デビュー。昨年3月の世界距離別選手権で優勝。そして34秒30の世界新記録をマーク。駆け足で世界の頂点を目指していた男の挫折…。
「条治の『条』には、将来伸びるという意味がある」。命名した両親の願いはこれで、終わらない。トリノでは五輪の洗礼を浴びたが、まだ21歳。前人未到の33秒台へ、そして次こそ五輪の表彰台へ。10年バンクーバー大会でメダルを手にするために、世界最速男の再挑戦が始まる。
■加藤 条治(かとう・じょうじ)
1985(昭和60)年2月6日、山形市生まれ、21歳。小1からスケートを始め、山形中央高時にインターハイ500メートルを史上初の3連覇。高3の02−03シーズンに日本男子初の高校生W杯代表に選出された。03年に三協精機(現日本電産サンキョー)入社。昨年3月の世界距離別選手権500メートルで優勝し、トリノ五輪代表内定第1号。同年11月のW杯ソルトレークシティー大会で34秒30の世界新記録をマークしW杯初優勝。W杯通算3勝。1メートル65、61キロ。
| 加藤条治の今季500メートル成績 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 年・月・日 | タイム | 順位 | 大会 | 開催地 |
| 05・10・29 | 35秒29 | 1位 | 全日本距離別 | 長野 |
| 35秒45 | 1位 | 〃 | 〃 | |
| 11・19 | ◎34秒30 | 1位 | W杯 | ソルトレークシティー |
| ・20 | 34秒45 | 1位 | 〃 | 〃 |
| ・26 | 36秒47 | 19位 | 〃 | ミルウォーキー |
| ・27 | 35秒32 | 7位 | 〃 | 〃 |
| 12・9 | 35秒23 | 2位 | 〃 | トリノ |
| ・11 | 35秒29 | 1位 | 〃 | 〃 |
| ・27 | 35秒26 | 1位 | 全日本スプリント | 長野 |
| ・28 | 35秒56 | 4位 | 〃 | 〃 |
| 06・1・21 | 35秒40 | 7位 | 世界スプリント | へーレンフェイン |
| ・22 | 35秒52 | 8位 | 〃 | 〃 |
| 2・13 | 1分10秒78 | 6位 | 五輪 | トリノ |
| 【注】◎は世界記録、五輪は2回のタイムの合計 | ||||
■スピードスケート
氷上の移動手段として紀元前1000年ごろに生まれ、スカンディナビア地方から広まったとされる。1924年の第1回シャモニー大会から五輪に登場。リンクは1周400メートル。インとアウトのレーンに分かれてスタートする。高速で突入する第2カーブは遠心力で体が外側に振られる。このため、レーンによる有利、不利をなくすため、五輪の500メートルは2レースの合計タイムで争う。前回ソルトレークシティー五輪までは2日間で実施され1日1レースだったが、トリノ五輪では1日2レースを行うことになった。肉体的にはハードだが、丸1日待たずに済み、精神的には楽との見方もある。

