2006.02.13 更新
原田失格、体重足りずヘッドコーチ激怒「もう帰れ!」
呆然、そして反省。まさかの規則違反を犯して失格した原田。その目には悔やみきれない涙も浮かんだ(撮影・岡田亮二)
【トリノ(イタリア)12日】 あまりに切ない、大失態だ…。ノーマルヒル(HS106メートル、K点95メートル)予選で、冬季五輪最多となる5大会連続出場の37歳、原田雅彦(雪印)が規則違反でよもやの失格だ。95メートルを飛んだが、自らの落ち度で体重に比べて長すぎるスキー板を使用した。葛西紀明(33)=土屋ホーム=が103メートルの132・5点で1位で12日の決勝に進み、伊東大貴(20)=土屋ホーム=も99メートルで予選を通過した。
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深い、絶望の落とし穴に、大ベテランが落ちていく。薄暮が迫るシャンツェ。「オリンピックチャンピオン、ハラダ」のコールが流れる中、原田が、全体の2人目で登場した。飛んだ。95メートル(K点)に着地。予選突破を有力とし、「あした(の本戦)に備えます」と笑顔を見せていたが、直後に向かった用具検査室で運命が暗転した。
15分後、得点板から原田の名前が突然消えた。続いて「失格」のアナウンス。会場からどよめきが起きる。検査室では衝撃の通告がなされていたのだ。
原田の使用したスキー板が、国際スキー連盟(FIS)が定める規定より、体重に比べて長いものを使用したことが判明。その体重の不足分は、わずか200グラム! 戦わずして一発退場。しかも、原因は本人の勘違い!! 「何とも初歩的なミス、想定外ですね」。救いようのない、無常感が漂った。
FIS規則では、身長1メートル74と登録された原田が使用できるスキー板の長さは身長の146%の2メートル54まで。2メートル53の板を使う原田は体重61キロ以上が必要条件だったが、60・8キロだった。「自分で調べて、体重60キロまでいいと思っていた」。わずか200グラム、牛乳びん1本分ほどの差で“自爆”した。
1センチでも遠くへ飛ぶため、ギリギリまで減量する背景があるとはいえ、5大会連続出場の大ベテランが大舞台で引き起こすミスではない。身長と体重、使えるスキー板の長さの対照表を見れば、自分が何キロなければならないか、一目でわかるからだ。FIS・ヘナウアー広報担当は「試技の後に体重を量るチャンスはあった。基準ぎりぎりなら、飲み物をとるなどの手段もあったはず」と自己責任と切り捨てた。
しかも、昨年10月の国内選考会で惨敗。五輪選考対象の今季ワールドカップ(W杯)の参戦もならず、一時は五輪出場が絶望となったが、W杯格下の大会で上位に入り、逆転の代表入り。テクニック勝負となる個人ノーマルヒル限定で選ばれた専門家だったのに…。
「代表として恥ずかしい。(選んでもらったのに)申し訳ない…」。精いっぱいの作り笑いを浮かべた目に、うっすら光るものがあった。チームを率いるユリアンティラ・ヘッドコーチ(52)は、3回とも100メートルを越えた前日の公式練習の好調さを買い、原田を起用しただけに、「もう(日本へ)帰っていいよ」と突き放した。ラージヒル予選(日本時間18日)、団体戦(同21日)への出場の可能性は残るが、精神的な立ち直りまで時間は少ない。
94年リレハンメル五輪の失速ジャンプ。98年長野五輪の団体金メダルで日本中を感動させた男泣きとは対照的な悔し涙。また1つ、冬季五輪の顔が、悲運な“ドラマ”を演じてしまった。
■200グラムの商品
カラの牛乳びん約1本分。また、VHSのビデオテープ1本分、通常サイズのコミック誌単行本1冊、コンビニなどで販売されているレトルトご飯1つの重さ
■国際スキー連盟(FIS)規則
98−99年シーズンから、規則で板の長さを身長の146%までと決めたが、揚力を最大にしようと過度の減量に走る選手が増え、拒食症になる選手も出た。FISは選手の健康と競技の公平性を守るために、一定の指数を基に、体重の軽すぎる選手の板を短くするルールを昨季導入。身長1メートル74と登録された原田が使用できるスキー板は2メートル54まで。2メートル53の板を使う原田は体重が61キロ以上なければならなかったが、60.8キロだった。
■原田の五輪泣き笑い
★泣いた(94年リレハンメル五輪、2月22日) 12カ国が参加したジャンプ団体。日本は3人目終了時点で2位のドイツに55.2点差をつける1位。アンカー勝負でドイツのバイスフロクが135.5メートルの最長不倒をマーク。この時点でアンカーの原田が105メートル飛べば、史上初の団体金獲得だったが、97.5メートルとまさかの大失速で銀に終わる。ランディングバーンにうずくまり、立ち上がることができなかった
★笑った(98年長野五輪、2月17日) ジャンプ団体の日本は、1回目で3番手の原田が79.5メートルと失速ジャンプ、それが影響して1回目終了時点で4位。だが、2回目で岡部が137メートルのバッケンレコード、原田も137メートルの大ジャンプ。アンカーの船木が125メートルを飛び、2位ドイツに35.6点の大差をつけ悲願の団体金を獲得。声をふるわせた原田の「フ、ナ、キ〜!」のセリフは有名
| 原田雅彦・五輪全成績 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 年 | 開催地 | NH | LH | 団体 |
| 92 | アルベールビル | 14位 | 4位 | 4位 |
| 94 | リレハンメル | 55位 | 13位 | 銀 |
| 98 | 長 野 | 5位 | 銅 | 金 |
| 02 | ソルトレークシティー | 20位 | 20位 | 5位 |
| 06 | ト リ ノ | 失格 | 18日 | 20日 |
| 【注】NHはノーマルヒル、LHはラージヒル。 92年の競技名称はNHが70メートル級、 LHが90メートル級。トリノのLH、団体は 出場選手未定。日付は現地時間の決勝日 | ||||
★岡部ら「残念…」
ノーマルヒルに出場する他のメンバーも驚いた。雪印で原田と同僚のエース、岡部孝信(予選免除)は「本当? どうしちゃったんだろう。残念」と、信じられない様子。失格にならないよう、岡部は1日に何度も体重計に乗り、体重が足りないときには水を飲んで飛ぶという。予選をトップで突破した葛西は「あれだけ自己管理できる人なのに…。一緒に出場したかった」と残念がり、伊東も「自己管理の世界だから何とも言えないけど、選手も大変なんです」と複雑な表情。

