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2006.02.12 更新

 

うなだれる原田−大ベテラン「初歩的ミス」

原田

ノーマルヒルの予選で失格となり、記者会見中にぼうぜんとジャンプ台の方向を見上げる原田雅彦選手(共同)

【プラジェラート(イタリア)11日共同】五輪出場5回目の大ベテランらしからぬミスだった。「代表として恥ずかしい」。スキー・ジャンプのノーマルヒル予選で11日、失格した原田雅彦選手(37)は力なくうなだれた。地元・北海道上川町からの応援団はスタンドで「まさか、信じられない」。予想外の結末に言葉を失った。

「初歩的なミスです」。報道陣の前で原田選手はうつむき加減に話した。いつもの明るさはない。「ルールだから厳粛に受け止める」と慎重に言葉を選んだ。

体重が200グラム足りなかった。原田選手が使ったスキー板では体重が61キロ以上必要だが、60・8キロだった。規定より長い板を使ったことになり、失格したという。

薄暮が迫るシャンツェ。「オリンピックチャンピオン ハラダ」のコールが流れる中、原田選手はK点に着地。スタンドは大歓声に包まれ「原田スマイルをもう一度」と記された日の丸が揺れた。開始前「見るまで何も言えない」と話していた父将且さん(72)も何度もうなずいていた。

ところがその15分後、得点板から原田選手の名前が突然消えた。続いて「失格」のアナウンス。将且さんは座ったままじっと動かず「抗議することはできない。打つ手なし」。絞り出すような声だった。

原田選手と同じジャンプ少年団の後輩という笠間法孝さん(31)は「試技のときは問題はなかったのに。トイレに行った後に体重が数グラム減ることはあるが…」。原田選手を子どものころから知るという木村昭夫さん(68)は「せっかく頑張ってきた五輪がこんな形になるなんて悲しいですね」と話した。

★驚きの岡部、葛西ら

原田の失格に、ノーマルヒルに出場する日本3選手は驚きを隠せなかった。

エースの岡部は「本当? どうしちゃったんだろう。残念」と、信じられない様子。失格にならないよう、岡部は1日に何度も体重計に乗り、体重が足りないときには水を飲んで飛ぶこともあるという。

トップで予選を突破した葛西は「あれだけ自己管理できる人なのに…。一緒に出場したかった」と残念がり、伊東も「自己管理の世界だから何とも言えないけど、選手も大変なんです」と話した。(共同)

★「えー、うそだろう」−失格の原田選手の地元

スキー・ジャンプノーマルヒルの原田雅彦選手(37)の出身地、北海道上川町の多目的ホール。12日未明、テレビ中継を見ていた町民約120人は「予選失格」が信じられない様子で「えー、うそだろう」「何があったんだ」とざわめきが広がった。

兄の和彦さん(43)はしばらく無言でホールに用意された大型スクリーンを見つめ、「何とも言えない結果。体重で失格なんて今まで聞いたことがない。ラージヒルでの出場に望みをかけたい」とふり絞るように話した。

ホールでは、ジャンプ前の原田選手が映し出されると、太鼓の音とともに「原田、原田」と応援コール。「失格」が決まった後も「今後とも原田をよろしくお願いします」とのアナウンスが流れた。

同町の鈴木文雄町長(69)は「調子は上向きだったようだが…。町を挙げての応援で期待していたが残念だ」と無念そうに話した。

★200グラム差の失格ー大ベテランが勘違い

大ベテランが思わぬ落とし穴にはまった。使用したスキー板が長すぎるという理由で原田が失格、戦わずに敗れた。原因は本人の勘違いだった。

国際スキー連盟(FIS)の規則では、身長174センチと登録された原田が使用できるスキー板は身長の146%の254センチまで。253センチの板を使う原田は体重が61キロ以上なければならなかったが、60・8キロだった。「60キロでいいと勘違いしていた」という。わずか200グラム、牛乳びん1本分ほどの差だった。

FISは1998―99年シーズンから、スキー板の長さを身長の146%までと決めた。しかし、揚力を最大にしようと過度の減量に走る選手が増え、拒食症になる選手も出た。危機を感じたFISは選手の健康と競技の公平性を守る目的から、体格指数(BMI)を基に、体重の軽すぎる選手のスキー板を短くして不利にするルールを昨季導入した。

体調管理は選手の責任といえる。身長と体重、使えるスキー板の長さの対照表を見れば、自分が何キロなければならないか、一目で分かる。FISのヘナウアー広報担当は「試技の後に体重を量るチャンスはあった。基準ぎりぎりなら、飲み物をとるなどの手段もあったはず」と話した。

多くの経験を積んだ選手らしくない失態だった。大舞台で何をするか分からない、この選手らしい失敗ともいえた。(共同)