2006.02.25 更新
逞しくなったしずかちゃん!“天才少女”の栄光と挫折
ライバルに勝った! 全米女王コーエン(左)、世界女王スルツカヤ(右)をしたがえて表彰台の真ん中へ。静香スマイルが輝いた(撮影・岡田亮二)
金メダルを獲得した荒川静香は、栄光と挫折を繰り返しながら世界の頂点に立った。高1で98年長野大会に出場、その後のスケート人生はまさに山あり谷あり。数々の修羅場を経験し、辛酸をなめてきたからこそ、表彰台の1番上に立つことができた…。
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ついに“天才少女”が世界の頂点にたった。感情をおもてに出さないことから、外国メディアがつけた荒川の異名は「クールビューティー」。その名を世界に知らしめた。
5歳のときに、宮城・仙台市でスケートを始めた荒川は、日本スケート連盟が91年にスタートさせた長野・野辺山での新人発掘合宿の「1期生」だ。毎年夏に全国から8〜12歳の有望な子供を集め、将来のホープをピックアップする合宿に参加するなど、当時から才能を光らせていた荒川は、小6年で3−3回転を跳び、「天才」といわれていた。
日本スケート連盟・城田憲子強化部長(59)は「これは、と思った。『3−3回転をやってみて』と言ったらすぐにやってしまう。ものが違った」。しらかし中1年で、すでに5種類の3回転を跳んでいた。
“天才少女”は16歳で長野五輪に出場。いまや世界の「クールビューティー」となった
全日本ジュニアを3連覇。98年長野大会に女子ただ1人の代表として出場して13位。02年ソルトレークシティー大会のエースとして期待されたが、代表を村主章枝と恩田美栄に譲ってしまう。長野大会出場による燃え尽き症候群、00年に早大に進学後はアルバイトをするなどフィギュア以外の世界に興味を向けたこともあった。佐藤久美子コーチ(59)は「当時はあきらめやすく、フィギュアに対してどん欲ではなかった」。だが、連続五輪出場を絶たれたことが、荒川の闘志に火をつけた。
タラソワ・コーチに師事して臨んだ04年世界選手権を制覇。「ついに天才が目覚めた」といわれたが、再び迷路に迷い込む。世界選手権制覇を花に、「辞めるつもりだったけど、流されるまま臨んでしまい、気持ちの整理がつかなかった」。昨シーズン、絶対評価の新採点システムへの対応ができず、世界選手権で9位に惨敗した。
「トリノ五輪で完全燃焼する」と誓った今季序盤は不運に泣いた。高得点を挙げながら、グランプリ(GP)シリーズで15歳の浅田真央(東海ク)に中国杯、フランス杯で2戦2敗。GPファイナル進出を逃してしまう。
ここで大決断。タラソワ・コーチと決別し、世界選手権優勝時の振付師ニコライ・モロゾフ氏に指導を仰ぐことを決めた。城田強化部長は「スピン、ステップで(最高難度の)レベル4を得るにはそれしかなかった」。五輪まで2カ月を切っていた。
フリーの楽曲も世界選手権優勝時の「トゥーランドット」に戻した。開会式で世界3大テノールのルチアーノ・パバロッティ氏が熱唱したのが「トゥーランドット」。「何か運命を感じた。この曲で最高のものに手が届いたことが何よりもうれしい」。
高難度の技だけに、こだわらない姿勢を貫いた。自分の好きな演技、美しさを追求した。得点に反映されない、上半身を後ろに大きく反らせて銀盤を横断する「イナバウアー」がその象徴。勝利の女神はそんな姿を見続け、荒川の背後に立った。
■荒川の今後
28日に日本選手団一行として帰国し、都内のホテルで会見を行う予定。3月4、5日は「シアターオンアイス」(東京・有明コロシアム、産経新聞社など主催)、同6日には長野でアイスショーに出場する。
4月1日には名古屋、2日には大阪で開催されるアイスショーに出場する。代表に選出されている世界選手権(3月20〜26日、カナダ・カルガリー)については、「エントリーしているので出場するつもりですが、まだわかりません」と、欠場する可能性もある。
★母校も歓喜「驚きです」
荒川の母校、東北高では寮生と教職員約100人が、泉キャンパス3階の音楽室で応援した。金メダル獲得決定に万歳三唱を行い、ペットボトルに入ったコーヒーで乾杯。荒川が2、3年生時の担任だった中津川澄男教諭は「驚きですね。部活動をのぞいては1日も学校を休まなかった。表情は厳しいけれど、優しい子なんです」と教え子を回想。偉業達成の喜びに浸った。
★世界を駆けめぐる報道
荒川の金メダル獲得に、ロイター通信は「荒川はほぼ完ぺきな演技で、五輪史に名を刻んだ」と書き出し、冬季五輪最大の注目イベントでの偉業をたたえた。AP通信は「彼女は氷上のエレガンス(気品)。スパイラルは極上で、スケーティングは荘厳だった」とこれ以上ない称賛の言葉を連ねた。中国の新華社通信は「番狂わせが起こるという五輪の伝統を荒川が継承。五輪フィギュアでアジア初の金メダルを獲得した」と伝えた。
また、トリノが地元の全国紙スタンパは一面に「氷上のプリンセス」の見出しでビールマンスパイラルを行う荒川の写真とともに記事を掲載。全国スポーツ紙のガゼッタ・デロ・スポルトも一面で荒川の写真を掲載し、「日本語を話す東洋の女神がパラベラ(競技場)に新しいいぶきを吹き込んだ」と報じた。
★荒川にティアラ贈呈
金メダルを獲得した荒川に日本時間25日未明、パラベラ競技場でイタリア・ピエモンテ州などから、金とダイヤモンドでつくられたティアラ(王冠型の髪飾り)が贈られる。ティアラは、同州などがフィギュアスケート女子の金メダリストに授与するために準備。複数の細い輪を重ねたデザインで、直径が13・5〜15・5センチ、金の重さは計85グラムで計4・32カラットのダイヤモンドがちりばめられている。
| 荒川静香.フリープログラム得点内訳 | ||
|---|---|---|
| 【要素点】 | (57.3) | 62.32 |
| 3回転ルッツ+2回転ループ | (7.5) | 7.93 |
| 3回転サルコー+2回転トーループ | (5.8) | 6.09 |
| 3回転フリップ | (5.5) | 5.50 |
| フライングキャメルスピン[4] | (3.0) | 3.36 |
| スパイラルステップシークエンス[4] | (3.4) | 4.69 |
| 2回転アクセル(2回転半) | (3.3) | 3.59 |
| 3回転ルッツ | (6.6) | 7.03 |
| 2回転ループ | (1.7) | 1.70 |
| キャメルスピン[4] | (2.4) | 2.61 |
| 3回転サルコー+2回転トーループ+2回転ループ | (8.0) | 8.57 |
| コンビネーションスピン[4] | (3.5) | 3.79 |
| ストレートラインステップシークエンス[3] | (3.1) | 3.46 |
| コンビネーションスピン[4] | (3.5) | 4.00 |
| 【演技構成点】 | 63.00 | |
| スケート技術 | 8.04 | |
| 要素間のつなぎ | 7.61 | |
| 演技力 | 7.93 | |
| 振り付け | 7.86 | |
| 音楽の解釈 | 7.93 | |
| 【合 計】 | 125.32 | |
| 【注】( )内は基礎点。[ ]内数字はスピン、ステップのレベル数(4が最高)。演技構成点は5項目の合計に係数0.8をかける | ||
■新採点方式
フィギュアスケートでは、トリノ五輪で初めて「絶対評価」が採用された。02年ソルトレークシティー五輪ペアの不正採点疑惑を契機に昨季から採用され、従来の6点満点制は廃止された。新システムではジャンプ、ステップ、スピンなど各要素について得点を加算していく技術点と、表現力を示す演技点の合計が総得点になる。かつて総合順位はSPとフリーの順位点で決定。相対評価の6点方式ではSPで4位以下になると、自力優勝は難しくなったが、新方式ではSPとフリーの総得点で決まるため大逆転も可能となった。
| 荒川静香・主な大会成績 | ||
|---|---|---|
| シーズン | 大会名 | 順位 |
| 94−95 | 全日本ジュニア選手権 | 優勝 |
| 95−96 | 全日本ジュニア選手権 | 優勝 |
| 96−97 | 全日本ジュニア選手権 | 優勝 |
| 97−98 | 全日本選手権 | 優勝 |
| 長野五輪 | 13位 | |
| 世界選手権 | 22位 | |
| 98−99 | 全日本選手権 | 優勝 |
| 01−02 | 四大陸選手権 | 2位 |
| 02−03 | 全日本選手権 | 3位 |
| 四大陸選手権 | 2位 | |
| 世界選手権 | 8位 | |
| 03−04 | GPファイナル | 3位 |
| 世界選手権 | 優勝 | |
| 04−05 | NHK杯 | 優勝 |
| GPファイナル | 2位 | |
| 世界選手権 | 9位 | |
| 05−06 | 中国杯 | 3位 |
| フランス杯 | 3位 | |
| 全日本選手権 | 3位 | |
| トリノ五輪 | 金 | |

