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2006.02.25 更新

 

荒川12億円の金メダル!今季限りで引退、プロになっても輝く

荒川静香

金メダルにも負けない。輝く笑顔。荒川が五輪の頂点に。今度はプロとして夢舞台に舞う(撮影・岡田亮二)

トリノ五輪第14日(トリノ23日) 金だ、快挙だ、夢に跳んだ! フィギュアスケート女子で、荒川静香(24)=プリンスホテル=が合計191.34点で金メダルを獲得した。ショートプログラム(SP)3位につけた荒川が、ミスが続いたサーシャ・コーエン(21)=米国、イリーナ・スルツカヤ(27)=ロシア=を逆転して、五輪フィギュアで日本人初の金メダルを獲得。低迷していた日本勢にとっても今大会初のメダルとなった。荒川は今季限りの引退を改めて示唆。今後はプロとして「1000万ドル」(約11億8000万円)スケーターの道を歩む。

魂の舞い。オーラが世界を揺さぶった。静香ワールドの余韻が、いつまでも会場を包み込む。最終滑走者の世界女王スルツカヤの得点がモニターに映し出された瞬間、控室でそのときを待っていた荒川が喜びを爆発させた。順位表の1番上に刻み込まれたその名前は「ARAKAWA SHIZUKA」。輝きすぎて、まぶしかった。

20回目の冬季五輪史上初めて、アジア人選手が五輪フィギュアで表彰台の一番上に立った。これまでメダル獲得がなく、不振にあえいでいた日本勢も救う値千金の金メダルだ。「ビックリして言葉が出ない。まさか自分が金を獲るなんて!」。表彰式。荒川はメダルを胸に、今大会初めて流れる「君が代」を口ずさみ、万感の思いに浸った。

20年間の競技人生のすべてを、04年世界選手権を制覇したときと同じ楽曲「トゥーランドット」の4分間に注ぎ込んだ。ライバル2人が重圧に押し潰されて自滅するなか、強さだけでなく、華麗さを追い求めた荒川は、自らの演技を貫いて世界の頂点に立った。24歳は女子フィギュア最年長の金メダリストだ。「スケート人生の集大成。4分間、過去の試合を思いだしながら滑ってました」。

昨年6月、コーチの指導を受けるため米国に渡った。アパートでの1人暮らし。翌月、娘を訪ねた母・佐知さん(51)は、思いがけない言葉に驚いた。「あのとき誰も引退を勧めてくれなかった。1人でも『やめていいよ』と言ってほしかった。せめてお父さんとお母さんには…」。

荒川静香

荒川に後光がさした。笑顔で魅せたイナバウアー。メダルなしだった日本勢に、救いの光だ!

ソルトレークシティー五輪を逃した後、04年3月の世界選手権で優勝したときの回想だった。「そう言われると『もっと静香のスケートを見たい』と言ったかもしれません」(佐知さん)。世界選手権優勝で、「卒業」したかったスケートだが、何気ない母の一言で踏みとどまった。それがいま、感謝になった。

今季限りで競技者人生に終止符を打つ。試合後、「アイスショーなどで1日でも長く、見たいと思ってもらえるスケートを滑っていけたらいい」と、改めて引退を示唆した。幼いころからの夢だったプロスケーターとして、第2の人生をスタートさせるのだ。

『五輪金メダリスト』という看板を背負った今、荒川には輝ける未来がみえる。ショービジネスの本場、北米ではアイスショーは絶大な人気を誇り、報酬は人気スケーターなら1カ月公演で約100万ドル(約1億1800万円)を手にする。近年は欧州、日本でもビジネスとして確立され始め、フィールドは拡大している。

金メダル効果でスポンサー契約にも弾みがつく。00年シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子はその後、約3億円のスポンサー収入を得たという。米国、欧州、日本を舞台に1000万ドルスケーターになれる可能性を秘めているのだ。一夜にしてシンデレラ。華麗なイナバウアーが世界中を駆けめぐる。

(片倉尚文)

■プロスケーター

フィギュアの五輪、世界選手権のメダリストの多くはプロスケーターに転身する。アイスショーは北米と欧州で人気のエンターテインメント。代表的なものに「チャンピオンズ・オン・アイス」と「スターズ・オン・アイス」などがある。とくに五輪金メダリストは集客力のある目玉選手として、報酬も破格。人気選手なら年間100公演ほどこなし、トップクラスなら1カ月の公演で1億円以上も稼ぐ。アマチュアながらアイスショーや映画に出演しているミシェル・クワン(米国)は年間5億円以上の収入があるという。日本も含め、市場は世界的に拡大している。

★暁の列島感動!待ちに待ってた日本初メダル

SP3位の荒川は21番滑走。その直前にSP首位のコーエンが演技した。冒頭の3連続ジャンプの最初の3回転ルッツで転倒、続く2連続ジャンプの最初の3回転フリップでのステップミスが響いて得点は伸びず、合計183・36点に終わった。

続く荒川は落ち着いていた。冒頭で2種類の2連続ジャンプ(3−3回転)を跳ぶ予定だったが、これを回避していずれも3−2回転で無難にまとめた。ミスらしいミスは3回転ループが2回転になったくらい。6種類のスピン、ステップ中、5種類で最高難度のレベル4を得る圧巻の演技で自己ベストの合計191・34点をマークして首位に立った。最終滑走となったSP2位スルツカヤは演技中盤の3回転ループで痛恨の転倒。荒川の逆転優勝が決まった。

五輪データBOX
★…五輪フィギュアでは荒川がアジア人選手として初めて頂点に。欧米勢優位の競技で、世界選手権では89年伊藤みどり、94年佐藤有香、95年陳露(中国)、04年の荒川と4人が優勝
★…日本人でも初。36年大会に稲田悦子が出場して以来、70年目の歴史で初めての五輪フィギュア金メダリスト
★…この五輪から「絶対評価」の新採点システムが導入。荒川は6点満点の相対評価だった旧採点システム時代の04年世界選手権での優勝に加え、新旧採点法を制した。02年と05年の世界選手権を制したスルツカヤ(ロシア)に次ぐ両システムでの世界一
★…冬季五輪の日本勢の金メダルは98年長野五輪フリースタイルスキー・モーグル女子の里谷多英以来2大会ぶり9個目。女子では里谷に次いで2人目
★…24歳は女子フィギュア最年長金メダリスト。36年大会のソニア・ヘニー(ノルウェー)の23歳を更新した