2006.02.02 更新
“2度目”の悲劇免れた…桧野、吉報に嬉し涙
大ピンチからトリノ五輪出場へ。悲劇を免れた桧野は一報を受け、思わず涙ぐんでしまったという
おまたせしました、吉報です! 日本オリンピック委員会(JOC)は1日、国際オリンピック委員会(IOC)から目前に迫ったトリノ冬季五輪ボブスレー日本代表の男女4選手の出場を認めるという、文書を受け取った。1度は出場資格獲得が発表されながら、一転して撤回された男子2人乗りの清川卓(27)=サニウェイ、小林竜一(29)=鳥取県体協=と、女子2人乗りの桧野真奈美(26)=十勝エコロジーパーク財団、長岡千里(29)=ニッシン=の4選手は、晴れて4日にトリノに向けて出発する。
◇
| ボブスレー・トリノ五輪代表 | ||
|---|---|---|
| 氏名 | 所属 | 齢 |
| 清川卓 | サニウェイ | 27 |
| 小林竜一 | 鳥取県体協 | 29 |
| 桧野真奈 | 美十勝エコロジーパーク財団 | 26 |
| 長岡千里 | ニッシン | 29 |
雪も溶かすような、待っていた熱い知らせが届いた。桧野は1日未明、関係者から当初の予定どおり五輪出場が可能となった一報を受け、思わず涙ぐんでしまったという。トリノへの切符が二転三転し、心が揺れ動いた日々にようやく終止符。この日、地元の北海道・帯広市役所内で会見し、さわやかな笑顔を浮かべた。
「みなさんのおかげでチャンスをいただけた。すごく不安だったので、救われました。一時は悲劇のヒロインみたいになって困惑しましたけど、素直にうれしいです」
今季5戦出場したW杯は22位が最高で五輪出場権を得られなかったが、国際ボブスレー・トボガニング連盟(FIBT)から日本の男女各1組が、アジア大陸枠で出場できるとして連絡があり、16日に日本代表に選ばれた。
ところが、資格獲得の国際システムの難点が露呈。30日に母校の帯広南商高で行われた壮行会の直後に、五輪出場は不可能との悲報を受けていた。
女子ボブスレーが初採用された4年前のソルトレークシティー五輪の際は自力で出場権を得ていたが、日本選手団の人数調整のため開幕直前に派遣取りやめを宣告された。その五輪のレース当日に右ひざじん帯断裂の手術を受け、トリノ五輪出場にかけてきた。自作のTシャツを販売し、自ら企業回りをして16社のスポンサーを集め、年間約1000万円の活動資金を得てきた苦労人。2度目の“悲劇”を免れ、ようやく五輪切符を手に入れた。
「本当につらい数日間だったけど、トリノではこのチャンスを生かせるよう思い切ったプレーをしたい」。IOCがFIBTの選考基準のずさんを認め、選手枠を超越して出場を認めるという異例の展開を経て、つかんだチャンス。もう、涙はいらない。笑顔で夢舞台を滑走する。
長野県庁を訪れ、トリノ五輪出場決定を報告する清川(右)と長岡
★長岡に笑顔戻った
桧野とペアを組む長岡千里は1日未明に出場決定の知らせを受け、目が真っ赤。「興奮して朝まで一睡もできなかった。やっとスタートラインに立てます」と喜び、男子の清川とともに長野県庁を訪問した。前日には長野市にある日本連盟へ、事実確認に足を運ぶなど不安な日々だったが、ようやく晴れやかな表情を取り戻した。
★男子2人も喜び爆発!
男子2人乗りの両選手も喜びを爆発させた。長野県庁を訪問した清川卓は「もう駄目かなとあきらめていたのでホッとした」と笑顔をみせ、田中康夫知事の激励を受けた。ペアを組む小林竜一=写真左=は鳥取市で「今回のことでボブスレーはより注目されるので、いい成績を出せるよう調整したい」と気分一新。騒動をバネに五輪での健闘を誓った。今季W杯では28位が最高だが、ひとつでも上位を狙う。
★日本選手団の遅塚団長、喜びと反省が交錯
日本選手団の遅塚研一団長は「想像を超える早さでいい結論が出た」と喜びつつ、反省点を口にした。今回の騒動は、トリノ五輪組織委員会(TOROC)への最終エントリー(30日)よりもかなり早い19日のJOC理事会までに代表選手を決めるよう各競技団体に促したことも遠因。そのため、日本連盟は未確定だったアジア枠を信じて見切り発車的に五輪代表選手を発表せざるをえなかった。「今後は各競技団体の選考基準も正確に把握しておきたい」と課題を挙げた。
■経過
◆アジア枠獲得 1月15日終幕のW杯第5戦を終え、日本女子は国別総合成績で23位。五輪出場資格の15位以内には入れなかったが、アジア最上位国に与えられる出場枠を得られるとの見通しで、日本ボブスレー・リュージュ連盟は16日に男女2人乗り各1組計4人を日本代表に選出
◆天国から地獄 25日に、FIBTから日本連盟に「W杯上位国のある国が男子4人乗りの出場を辞退したため、日本にアジア枠を認める」とのメールが届くが、わずか2時間後に「出場を辞退した国が一転して出場すると決めた。撤回させてほしい」と通知
◆出場は白紙に 日本連盟は電話や文書で抗議したが、27日、国際連盟のエルマノ・ガルデッラ事務局長は「日本の出場資格は確定していない」と断定。「どこかの国が出場辞退すれば、日本が参加できる」と“キャンセル待ち”を通知
◆吉報 JOC関係者がトリノなどでIOC、FIBTと交渉した結果、日本時間1日未明にIOCのジルベール・フェリ五輪統括部長が「(出場枠決定の)システムにも難点があると判断し、出場選手数は総枠を上回るが、選手の利益を優先させる」と五輪出場を認める決定
■ボブスレー
流線型をした鋼鉄製シャシーのそりに乗り、全長約1500メートルの氷の壁でできたコースを疾走する競技。「氷上のF1」とも呼ばれる。2人乗りと4人乗りの2種目がある。男子のみの競技だったが、ソルトレークシティー五輪から女子2人乗りが採用された。2日間で計4度滑走し、合計タイムで順位を決める。

