2008年05月07日 更新

【F1】アグリが撤退を発表、資金難…39戦で幕

F1からの撤退を決め時折、涙声になりながら会見するスーパーアグリの鈴木亜久里代表(撮影・千村安雄)

F1からの撤退を決め時折、涙声になりながら会見するスーパーアグリの鈴木亜久里代表(撮影・千村安雄)

 資金難でチーム存続が危ぶまれていたスーパーアグリF1は6日、鈴木亜久里代表(47)が東京都内で会見し、F1世界選手権からの撤退を発表した。05年11月1日に“純日本”として設立されたチームの参戦は、史上16番目の短命記録となる39戦で幕を閉じた。設立のきっかけにもなった佐藤琢磨(31)は、シーズン途中で“浪人”生活を強いられることになった。

 「F1世界選手権から撤退するという苦渋の決断を下しました。世界中のファンの皆様に最大の感謝を表したいと思います」。努めて明るく、時には無念そうに声を詰まらせながら、亜久里代表が誕生後2年半のチームに終止符を打った。

 撤退の理由については「安定的な活動継続のめどが立たない。資金集めがうまくいかなかった」と説明した。琢磨がレースを離れるため、本格参戦する日本人ドライバーは現時点で、ウイリアムズの中嶋一貴(23)のみとなる。

 亜久里代表(90年日本GP3位)と琢磨(04年米国GP3位)という、日本で2人だけの表彰台経験者が手を組んで生まれたスーパーアグリ。初年度の06年こそ入賞を逃したが、07年は琢磨が2度入賞。年間のチーム成績は9位に躍進した。

 しかし、07年後半にはメーンスポンサーの協賛金不払いで失速。新スポンサーも見つからないまま、今年は2月の新型車発表を中止した。3月に発表した英国の自動車コンサルタント企業マグマ・グループ、土壇場の今月2日に発表したドイツの自動車関連企業バイグル・グループとの提携も実現しなかった。

 最大の誤算は、10年から再び、他チームのマシン流用が認められなくなる新協定だ。マグマへの出資を予定していたドバイの投資会社が翻意したのも、2年後にホンダ車体を使えなくなるスーパーアグリの戦闘力を疑問視したからだった。

 「自分の夢だけでなく日本のチームとして、日本人にシートを提供し続けたかった」。亜久里代表は、こころざし半ばで舞台から降りる無念さを隠すことができなかった。

(石原有記)

★亜久里氏に聞く

−−決断はいつ?

 「現実的には(4月に)マグマとの話が終わった時点で『だめだな』と思っていた」

−−バイグルとの提携案をホンダが承認しなかったことが撤退理由か

 「ホンダの承認以前にチームとして資金を回していけないと思った。トルコGPまで限られた時間の中で、資本提携の条件を煮詰めることもできないと判断した」

−−体制を立て直し、継続参戦する選択肢は

 「規定では1年に3戦まで欠場できるはずだが、戻るつもりはない。僕がレースをしていたころは年間25〜30億円でチームを運営できたが、(自動車)メーカー同士が戦っている今は(数百億円規模で)個人経営のチームでは難しい」

−−スポンサーがついたら復帰するか

 「本当にレースができる環境ならいいが、振り返ってみても、お金探しに明け暮れた2年半だった。今は少し休みたい」

−−参戦を振り返って

 「やってよかった。これだけ応援してもらって有意義な2年半だった。30歳でF1ドライバー、35歳でF1引退、45歳でオーナー、50歳でリタイアと思っていたが、ちょっと前倒しになった」

−−後悔は

 「1度後悔したことはあるが(笑)、夢を実現できて神様に感謝している。ただ、これから個人でチームを始めるのはやめた方がいい(笑)」

★琢磨はどうなる?

 佐藤琢磨は自身の公式サイトでチーム存続を求めていたが、願いはかなわなかった。亜久里代表には「残念ですけれど、ありがとうございました」と謝意を述べたという。亜久里氏は琢磨とデービッドソンの将来について、ホンダに相談するとコメント。ホンダは23日に36歳になるバリケロとの契約延長交渉を保留中で、琢磨がいずれホンダに復帰する可能性も否定できない。

★ホンダ「やむを得ない」

 スーパーアグリに技術・資金提供を行ってきたホンダは、広報・モータースポーツ担当執行役員の大島裕志氏が「誠に残念ではありますが、自立し将来的にも安定した運営基盤が確保できない状況では、やむを得ないものと受け止めました」と声明した。100億円相当の支援をしてきたとされるホンダは4月、本紙の取材に「今後は1戦単位での救済はしない」とコメント。2チームの“同時運営”は不可能だと語っていた。

◆日本のF1レギュラードライバーのパイオニア、中嶋悟PIAAナカジマチーム監督

 「事情がわからないが、残念としかいいようがない。ともかく日本のレースで頑張ってくれれば」

◆元祖日本一速い男でフォーミュラ・ニッポン「チームIMPUL」の星野一義監督

 「僕らにもできなかったF1チーム、亜久里君だからできたと思っていただけに残念。これからF1を目指す日本の若者のために、時間がかかるかもしれないが、また亜久里君に続く人を待つよ」

■データBOX

 F1が世界選手権化された1950年からこれまでに参戦した58チームの中で、参戦39戦での撤退は歴代16番目の短命記録となる。1位はランチア(イタリア)で、54〜55年に4戦のみ出場。逆に長寿記録の1位は、50年から出場し続けているフェラーリの762戦(今季第4戦終了時)。

■スーパーアグリのこれまで

 ▼05年10月4日 ホンダが“新チーム”へのエンジン供給を発表
 ▼11月1日 「スーパーアグリF1」設立
 ▼06年1月26日 国際自動車連盟(FIA)が参戦を承認
 ▼2月15日 正ドライバーとして佐藤琢磨と井出有治を発表
 ▼3月12日 開幕戦で琢磨が18位完走
 ▼5月10日 井出がスーパーライセンス剥奪
 ▼07年5月13日 スペインGPで琢磨が8位。チーム初入賞
 ▼8月24日 メーンスポンサー「SSユナイテッド」を協賛金不払いで告訴
 ▼08年2月19日 新型車発表をキャンセル
 ▼3月10日 F1開幕4日前に、英国企業との資本提携と今季参戦を発表
 ▼4月14〜17日 他の10チームが参加したバルセロナ合同テストを欠場
 ▼16日 提携交渉が暗礁に乗り上げたと発表
 ▼25日 継続参戦が危ぶまれる中、スペインGP開幕当日に出場を発表
 ▼5月2日 ドイツの自動車関連企業、バイグル・グループとの資本提携が最終段階と発表
 ▼4日 トルコGP会場から機材搬入を拒否されたことが判明
 ▼6日 F1からの撤退を発表