2008年03月10日 更新
【マラソン】尚子、北京遠く…Q極ランナー目指しやめません!

27位に沈んだQちゃんがレース後、衝撃の告白
名古屋国際女子マラソン(9日、名古屋市瑞穂陸上競技場発着)やめません! 北京五輪代表最終選考会で、2大会ぶりの五輪を目指した00年シドニー五輪金メダルの高橋尚子(35)=ファイテン=は自身マラソンのワーストとなる27位に沈んだ。だが、競技生活を続行することを明言、引退を否定した。レース後には昨年8月に右ひざ半月板の手術を受けていた衝撃の事実を告白した。初マラソンの21歳、中村友梨香(天満屋)が2時間25分51秒で優勝し、代表の有力候補となった。男女マラソン代表は10日に正式発表される。
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五輪女王が、一般参加のランナーにも抜かれていく。高橋の足が前に出ない。進まない。9キロ手前で脱落して、北京への道が早々に閉ざされた。
競技場に戻ってきたQちゃんに、大きな拍手と声援が飛ぶ。2時間44分18秒、27位。手首の時計には目をやらなかった。06年11月の東京国際以来、1年4カ月ぶりのレースは惨敗。黒いサングラスを外し、スタンドに深々と一礼、ようやく“悪夢”から解放された。

スタートは元気に飛び出し、先頭集団を形成したQちゃんだったが…

ひざを故障し、スピード練習ができなかった。9キロ手前でQちゃん(後方)が急失速(代表撮影)
「やっちゃいました。でも、これが今の自分の実力。体が動かなくて、おかしいなと思って走っていた。実は昨年8月にひざを手術したんです」
レース後の会見で明かされた衝撃の事実。Qちゃんは努めて明るく振る舞ったものの、爆弾を抱えての選考会出場はかつてない不安と重圧との闘いでもあった。
右ひざに異常を感じたのは5年前。練習は継続してきたが、米コロラド州ボルダーでの高地合宿中の昨年7月に、患部が悲鳴を上げた。日本の主治医と相談し、米国でメスを入れる決断をした。「プロ野球の金本さん(阪神)や松井秀さん(ヤンキース)と同じ手術。手術して本当に7カ月で戻るのか。人に相談できないので、インターネットやチームQのメンバーと相談しました」。ひざの3カ所に穴を開ける内視鏡手術で、めくれた半月板を半分ほど切除。その日から、松葉づえの生活とリハビリの日々が続いた。
本格的な練習を再開したのは昨年末に初めて敢行した中国・昆明合宿から。「30、40キロの距離走はできた。でも、スピード練習は400、1000メートルを1回ずつしかできなかった」。過去22年間の練習日誌を読み返し、不足があれば、メモに残して心の安定をはかった。日本でも流行した軍隊式トレーニングも取り入れた。米人気女性歌手マドンナらの曲を編集し、自らが“隊長”となる「Qズ・ブートキャンプ」を考案し、名古屋のスタートラインに立つ強い意思を持ち続けた。
最初の5キロを18分近いスローペースで通過する序盤にも対応できなかったが、沿道から「がんばれ、Qちゃん」と大声援を受け、30キロ付近では下痢で指定トイレの新聞販売店に立ち寄りながら、「必ず最後まで走りきる」と言い聞かせた。あきらめなければ夢はかなう−。見る人を勇気づけようと何度も繰り返し口にした言葉を、最後はファンからもらった。
「後悔はしていない。引退かといわれるかもしれないけれど、この結果を受け止めて次の目標に向かってやっていきたい。北京五輪は日本国民の一人として応援する側に回ります」。契約企業の社長や、チームQの専属スタッフにはレース直後に現役続行の意思を伝え、快諾を得た。「次の五輪? もしかしたら…」。北京への道は断たれたが、“Q極”のランナーとして、金メダリスト高橋尚子を最後まで演じきる。
(山田貴史)

記者会見でレースを振り返る高橋尚子
★QちゃんTALK
−−レースを終えて
「やっちゃいました。でも、これが今の実力。後悔は見あたらない」
−−9キロ付近で失速した
「スタートラインに立つまでは優勝も頭に入れていましたから。キツイことはなかったけれど、なかなか体が動かなくて、おかしいなと思って走っていました。自分でもすごく不思議でした。スピード練習をしていないぶん、速さへの対応ができなかった」
−−序盤はスローペースだった
「昨年8月に足を故障して。実は右ひざの半月板を手術したんです。(プロ野球の)金本さん(阪神)や松井秀さん(ヤンキース)と同じ手術。メスを入れるのは躊躇(ちゅうちょ)した。この時期にやって100%の力を出せるのか不安があった」
−−それでも、踏み切った
「名古屋に挑戦するのに必要でした」
−−結果は覚悟していた
「今まではこれをやったら最後。レース後は休もうと思っていたけど、今回はもう少し時間があればと思った。練習不足だったのかなと…」
−−今後は
「(五輪出場を)夢にしていたので、残念です。この結果を受け止めないと。引退かといわれるかもしれないけれど、もう少し走らせてくださいと(契約する)ファイテンの社長さんとチームQのみんなに伝えました。首を縦に振ってくれたので、もう少しやれるんだなって」
■ひざ半月板損傷
半月板が痛むと、ひざの内部の表面がスムーズでなくなり、このため痛みや引っかかりが生じたり、関節液がたまる。放置しておくと半月板以外の部位(軟骨など)を痛め、さらに深刻な状態になることも。治療法としては断裂部を縫い合わせる「縫合」と、痛んだ部分を切り取り形を整える「切除」の方法があり、損傷の状態を確認して治療法を選ぶ。「切除」ならば関節鏡を使って1センチほどの小さな切開で手術が可能
★小出氏「ペース遅過ぎたのかも」
Qちゃんの育ての親、小出義雄氏(佐倉アスリート倶楽部代表、写真右)は序盤から失速した姿に「血糖値がガクっと落ちたのかな。ペースが遅過ぎたのかもしれない」と体調面に原因を求めた。同氏は中国・昆明で練習するQちゃんを目にすることがあり、「レース12日前の40キロは抜群の走りをしていたのに…」と残念そうだった。
★父「顔色悪く見えました」
10キロ地点の沿道ではQちゃんの父・良明さん(66)、母・滋子さん(66)が娘の失速を心配そうに見守った。父は「いつもより顔色が悪く見えました。まだ長い人生がある。いい勉強になったのでは」と心配顔。レース前は娘と会わず、シドニー五輪を決めた00年名古屋国際と同じように早朝に岐阜県の実家を出発し、ゲンをかついだ。レース後にチームQのマネジャーから手術のことを初めて知らされた。県立岐阜商高時代の恩師、中沢正仁教諭(40)も「人を気遣う子。ボクらに言うと心配を掛けると思ったんだろう。つらかったはず」とねぎらった。







