大相撲名古屋場所初日(13日・愛知県体育館、観衆=8000)綱とり場所の大関琴欧洲(25)と横綱朝青龍(27)が敗れる波乱の幕開けだ。琴欧洲は先場所まで5連敗中の安美錦(29)に一方的に押し出された。朝青龍は小結豊ノ島(25)の上手投げに屈し、先場所に続く黒星発進。横綱白鵬(23)は小結稀勢の里(22)を豪快に寄り切った。12度目のカド番で進退をかける千代大海(32)は北勝力(30)を押し出した。
綱への重圧が、体をしばる。思いきりぶつかるために、両手をきっちり仕切り線についた琴欧洲だが、頭の中は真っ白になっていた。
琴欧洲の気負いを見透かすように、安美錦はゆっくりした動作を崩さない。自らの呼吸で早めに立つと、大関はつられるように応じて棒立ちに。腰が浮き、はず押しにのけぞり、あっけなく土俵を割った。優勝した先場所でも完敗した相手とはいえ、とても綱とりを目指す姿ではなかった。「一瞬待ったと思った…。向こうは手をついてなかったんじゃない?」と嘆いたが、惨敗の内容からすれば、いいわけにもならない。これで、安美錦には6連敗。苦手意識に押しつぶされた。
初日早々、綱とりに“赤信号”がともる。年6場所制となった昭和33年以降で横綱に昇進した25人中、綱とり場所で初日負けたのは4人だけ。しかも、休場明けで初優勝した夏場所はカド番で、大関15場所で2ケタ勝利はわずかに4場所。横綱昇進へのハードルはおのずと高くなる。
本人もわかっている。 この日の朝げいこでは幕下相手に軽い調整。愛知・一宮市の宿舎に詰めかけたファンと写真撮影に応じていたが、つくり笑いが痛々しい。関取衆で囲む朝のちゃんこにも手をつけず、自室に引きこもってしまった。放駒審判部長(元大関魁傑)は「初日だし、どう評価していいかわからないが、みなさん(報道陣)が意識させ過ぎたんじゃないの」と、チキンハートにあきれ顔だった。
それでも、救いはある。支度部屋では顔をあげた。「きょうは終わった。気持ちを切り替えてまたあした」と先を見据えた。11日には父・ステファンさんが53歳の誕生日を迎えたばかり。「トップを獲る」と約束した父のためにも、昇進のプレゼントを届けたい。一度しぼんだ昇進ムードを、あきらめずに膨らませていく。(渡部陽之助)