柔道男子・北京五輪代表強化合宿(3日、熊本・八代市)シドニー五輪柔道100キロ級金メダリストで、現役引退した井上康生氏(30)=綜合警備保障=が特別コーチとして合流した。さっそく道着姿になり、実技指導を精力的に行った。5月の引退発表後、全日本クラスでの指導者デビュー。金メダルラッシュの使命を担う日の丸軍団を、力強く後押しする。
「コーセイ」が、畳に帰ってきた。午後の練習前、着替えが始まった体育館に、井上氏が姿をみせた。メダルを狙う代表選手ではなく、肩書は「特別コーチ」。新米コーチは打ち込みや寝技に、自らが相手を務めた。「(監視役として)立っていると、落ちつかない。(体が)うずきますよ」。
声をかけてきた100キロ級の穴井隆将(天理大)と打ち込みを重ね、巨漢選手と次々に寝技。選手と同じ目線に立ち、汗を流した。
きっかけは引退直後にテレビで語った「柔道に恩返ししたい」という言葉だった。それを見ていた斉藤仁・男子監督から、ショートメールが届いた。「合宿でコーチを頼む」。短い文面に込められた願いを、快諾した。
シドニー五輪ではオール一本勝ちの金メダル。アテネ五輪では生涯初の1日2度の一本負けで、メダルを逃した。五輪の喜びと怖さを知る男は、年齢の離れたコーチ陣との間にも立てる、心強いアニキだ。「パイプ役? そういうのができればいいでしょうね」。一本で勝つ柔道を貫いてきた「康生イズム」を、後輩へ伝承する。(周伝進之亮)