だが、体に異変が起きた。20キロ過ぎ。16日に行われた20キロ競歩の後、鈴木従道コーチ(62)の忠告を“無視”してうな丼を3杯も平らげたのがいけなかった。「途中で下痢になって…。内臓にまで疲労がきていた。でも、言い訳にはなりません」。タイムロスを考え、コース脇のトイレを使わずにペットボトルの水で下半身を洗い流しながら激歩。引き揚げてきた第一声は、「トイレに行って、いいですか」。色を失った唇が震えていた。歩くとはいえ、5キロ22分平均はジョギング以上のハイペース。生理現象の“出物腫れ物”との闘いは、想像に難くない。
昨夏の大阪世界選手権では競技役員の誘導ミスのため、ゴールしながらも途中棄権扱い。日本中から同情と応援のメールが届いた。「人気が出てうれしかったけど、責任感がプレッシャーになった」。記憶にこびりつく悪夢だが、「今回は(正確に)誘導してくれるかなって、最後は楽しみながら歩きました」とゆとりを感じたほど。1年で大きく成長した。
腐ったり、投げ出したりしない精神力の強さを磨き、「(12年)ロンドン五輪ではメダルを獲りたい」。追いかける夢は、まだ先にある。(山田貴史)