初日早々、綱とりに“赤信号”がともる。年6場所制となった昭和33年以降で横綱に昇進した25人中、綱とり場所で初日負けたのは4人だけ。しかも、休場明けで初優勝した夏場所はカド番で、大関15場所で2ケタ勝利はわずかに4場所。横綱昇進へのハードルはおのずと高くなる。
本人もわかっている。 この日の朝げいこでは幕下相手に軽い調整。愛知・一宮市の宿舎に詰めかけたファンと写真撮影に応じていたが、つくり笑いが痛々しい。関取衆で囲む朝のちゃんこにも手をつけず、自室に引きこもってしまった。放駒審判部長(元大関魁傑)は「初日だし、どう評価していいかわからないが、みなさん(報道陣)が意識させ過ぎたんじゃないの」と、チキンハートにあきれ顔だった。
それでも、救いはある。支度部屋では顔をあげた。「きょうは終わった。気持ちを切り替えてまたあした」と先を見据えた。11日には父・ステファンさんが53歳の誕生日を迎えたばかり。「トップを獲る」と約束した父のためにも、昇進のプレゼントを届けたい。一度しぼんだ昇進ムードを、あきらめずに膨らませていく。(渡部陽之助)