史上最多の3校が棄権…箱根路襲った“負の連鎖”(1/3)
第84回東京箱根間往復大学駅伝復路(3日、神奈川・箱根町芦ノ湖駐車場入口−東京・大手町、5区間109.9キロ)箱根路を“負の連鎖”が襲った。前回大会3位で優勝候補とされた東海大は、10区・荒川丈弘(4年)が鉄道の踏み切りでねんざするアクシデントで涙の棄権となった。さらに、過去4度の総合優勝を誇る大東大も9区・住田直紀(3年)が体調不良により途中棄権。前日の順大を含め参加20チーム中、3校が棄権する大会史上初の異常事態となった。一方、関東学連選抜が4位と大健闘。明暗が分かれた。
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選手がもうろう状態となってへたり込む。苦痛に顔をゆがめて、はいつくばる…。
84回の歴史を誇る大会で史上最多の3校が途中棄権した。94年の70回大会までわずか3件だったが、71回大会から急増。今回を入れて計8件となった。
この日も悲劇が繰り返された。9区では10位でタスキを受けた大東大・住田が体調を急変させた。18キロ付近からフラフラになり、何度も立ち止まる。最後は鶴見中継所手前1.5キロ付近で只隈伸也監督が真正面に立ち、タスキから手をはなそうとしない住田を介抱した。前日の往路5区では前回王者の順大がまさかの棄権。その後の監督会議では、給水を真水ではなく浸透圧の高いスポーツドリンクなどにすべきとの改善案もされたが、大東大・只隈監督は「箱根はイベントではなく、競技なんです」。箱根駅伝の過熱ぶりで発熱や故障を押して強行出場する選手も少なくないことに、警鐘を鳴らす。順大・仲村明監督は「大会の規模が大きくなりすぎて、選手に過度のストレスがかかるのでは」と精神的な問題と分析した。
不運もあった。右足の激痛に耐え、東京・銀座付近までたどり着いた東海大のアンカー、荒川がアスファルトに崩れ落ちた。ゴールまであと約2キロ。虚脱感に包まれた両足には、もはや踏ん張る力は残されていなかった。大崎栄コーチに抱き起こされた瞬間、シード落ちが決まった。
同コーチは「最後は体重をかけても力が入らない状態。3度目に転んで、もうやめようと…」。荒川は都内の病院へ搬送された。
想定外の出来事は6キロ付近、京浜急行蒲田踏み切りで起こった。レース前からシューズが足に合わずに悩んでいた荒川が、わずか十数センチの線路に右足を取られた。強度のねんざ。7位でタスキを受けた荒川は、シード権獲得のため靴をはき直し、懸命に歩みを進めたが、その思いは無残にも砕け散った。
大手町のゴールでは、7区で史上3人目となる1年生からの3年連続区間新記録を打ち立てた学生長距離界の第一人者・佐藤悠基(3年)が号泣した。「区間新のうれしさはない。ゴールできなかったのが悔しくて…」と声を絞り出した。
選手層の厚い有力3校が途中棄権によって予選会へ回る初めてのケース。3人とも大事に至らなかったのは幸いだが、不完全燃焼の結末を繰り返してはならない。
(山田貴史)
■順大、5区途中棄権VTR
2日の往路5区「山上り」で、18位でタスキを受けた順大・小野裕幸(3年)は11位まで順位を上げたが、前半のオーバーペースが響き、残り1.5キロで立ち止まった。給水を受け、さらに屈伸運動をして走り出したが、両足にけいれんを起こし、ゴールまで残り500メートルの22.9キロ地点で倒れ、そのまま無念の途中棄権。救急車で病院に運ばれた小野は、脱水症状の低血糖状態と診断された。
■データBOX
●…途中棄権は、今大会3件を含めると史上11度(第25、34、52、71、72、77、78、84回大会)。順大と東海大は2度経験している●…途中棄権は70回大会までは3度しかなかったが、87年にテレビ放映が始まり、71回大会から急増した●…これまでは72回大会の2校(神大、山梨学院大)の棄権が最多だった
◆元順大監督で現日本陸連専務理事の沢木啓祐氏
「例年以上に給水を多くし、伴走車からの声かけもした。危機への対応を選手や関係者がどう認識するか。将来、日本を背負う人材の宝庫だけに今後は医師や専門家を含めた原因究明をやるべきだと思います」
◆大会会長でもある関東学連・青葉昌幸会長(元大東大監督)
「情けない。すべての駅伝の教科書のようになっている大会。大学で指導、勉強してほしい。(指導者は)選手を見詰め鍛えてほしい。速い選手はいるが強い選手はいなくなった」
◆大会運営委員を務める神大の大後栄治監督
「箱根駅伝は(注目の大会として)象徴化され選手の心的状態は尋常ではない。過保護にし過ぎてもいけないと思うが、そういう精神面も指導していかなければ」
| 箱根駅伝 総合優勝校 | |
|---|---|
| 大学名 | 優勝 |
| 中大 | (14) |
| 早大 | (12) |
| 日大 | (12) |
| 順大 | (11) |
| 日体大 | (9) |
| 明大 | (7) |
| 駒大 | (6) |
| 大東大 | (4) |
| 山梨学院大 | (3) |
| 神奈川大 | (2) |
| 東京高師 | (1) |
| 慶大 | (1) |
| 専大 | (1) |
| 亜大 | (1) |
| 【注】カッコ内数字 は優勝回数。 東京高師は 現筑波大 | |


◆日本陸連・河野匡ロード・長距離対策副委員長は、今回棄権した3校がいずれも箱根の常連校であることを指摘
「各校のレベルが高くなり、有力校に求められることも上がったようだ」