白井、進化の銅!内村からつないだ日本勢11大会連続表彰台/体操

 
白井がオールラウンダーとして成長した姿を世界に見せた(共同)

 体操・世界選手権第4日(5日、カナダ・モントリオール)男子個人総合決勝が行われ、白井健三(21)=日体大=が、6種目合計86・431点で銅メダルに輝いた。7連覇を狙った内村航平(28)=リンガーハット=が予選で負傷棄権した大会で、2003年大会から続く日本勢の表彰台を死守した。2020年東京五輪で金メダル獲得を目標に掲げる21歳が、世界一2度の床運動、リオデジャネイロ五輪銅メダルの跳馬以外の種目も力をつけ、オールラウンダーへの進化を世界に印象付けた。

 「世界一」と自任する練習量が結実し、スペシャリストだった白井が総合力で勝負する個人総合の表彰台に立った。種目別で数々の栄光をつかんできたが、これまでとはひと味違う感慨を口にした。

 「一番、自分がやってきたことが詰まっているメダルです。日本の個人総合の面目は保てたかなという感じ」

 日本勢の11大会連続表彰台を決めた。得意の床運動、跳馬で高難度の技を決め、ただ一人の15点台。難度を示すDスコアの底上げや出来栄えの向上に努めた他の4種目も力を出し切った。鉄棒で今大会構成に入れた離れ技「屈身コバチ」に成功して全体6位の13・966点。ダビド・ベリャフスキー(25)=ロシア=がトップで迎えた最後の鉄棒で落下する幸運もあったが、緊迫した舞台で全6種目を大きなミスなしにそろえたことが大きかった。

 イメージを変えるなら今年だった。初出場となった昨夏のリオデジャネイロ五輪では、種目別の跳馬で銅メダルを獲得した。オールラウンダーへの転身を図る白井にとって、今季は2020年東京五輪への第一歩。特に、世界選手権での演技の自己表現にかけてきた。「海外の選手や審判に『白井は個人総合もできる』と印象を与えたい」。負担の大きい6種目の通し練習を毎日最低1回行うことが日課になった。

 誰よりも器具に向き合ってきた時間が、試合中の自信になる。「あれだけ練習してきたから大丈夫」。筋肉痛と戦いながら、黙々とレベルアップに励む姿を見てきた畠田好章コーチ(45)の「世界トップクラスの練習をしている」との評価を、結果で証明した。「6種目ができてこそ体操」という体操ニッポンの伝統を、白井が受け継いだ。

 第一人者の内村が予選で途中棄権した波乱があった。白井は宿舎で同部屋の絶対王者から渡されたゼッケンをお守りに、2時間超の消耗戦を演じきった。「(内村)航平さんが出ていれば4番だった」と全てに満足しているわけではないが、東京五輪で目指す個人総合のメダルを周囲も驚くスピードで手に入れた。

 「来年から勝てて本物」。もう、「ひねり王子」の呼び名ではとどまらない。風格十分に将来を見据える姿は、紛れもないオールラウンダーのものだった。

水鳥寿思(ひさし)・日本体操協会男子強化本部長「日本にとって欠かせないオールラウンダーが誕生した瞬間だった。内村選手の後を継ぐような力を持っていると感じた」

渡辺守成・国際体操連盟(FIG)会長「(2020年)東京五輪に向けた最初の世界選手権で、新しいスターが誕生してうれしい。内村というレジェンドと白井というニュースターの戦いが今後楽しみになる」

二木英徳・日本体操協会会長「初の個人総合でメダルは快挙。内村選手がいなくて精神的な負担もあったと思うが、よく乗り越えた」

塚原光男・日本体操協会副会長「トップを狙える可能性を十分に示した。塚原直也や冨田洋之、内村航平に続く選手がついに出てきた」

★男子個人総合決勝経過

 ▼1種目目 床運動で白井は最後に「シライ/ニュエン(後方伸身宙返り4回ひねり)」を決めるなど圧巻の内容で、全種目最高の15.733点でトップ。

 ▼2種目目 あん馬で白井は降り技をこらえて13.433点。14.800点の肖若騰が首位に立ち、ベルニャエフが得意種目で落下。

 ▼3種目目 つり輪で白井は着地を止めて13.666点。前半種目を終えて6位に後退し、ロシア勢が1、2位を占める。

 ▼4種目目 跳馬で白井は「シライ/キム・ヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)」を決めて唯一の15点台でメダル圏内の3位浮上。肖若騰が再び首位。

 ▼5種目目 平行棒で白井は安定感のある内容を見せ、14.633点で3位をキープ。15.266点のベリャフスキー(ロシア)がトップ、肖若騰が2位。

 ▼6種目目 鉄棒で林超攀が14.300点。白井は予選で失敗した離れ技を決めて13.966点を出すが、合計得点で林超攀を下回る。ベリャフスキーが落下して4位。14.400点の肖若騰が逆転して初優勝し、白井は3位となった。

白井 健三(しらい・けんぞう)

 1996(平成8)年8月24日生まれ、21歳。横浜市出身。両親が指導者で、3歳で競技を始める。世界選手権は17歳だった2013年に初出場。床運動で日本体操史上最年少優勝、跳馬4位。15年の世界選手権は床運動で金メダル獲得のほか、37年ぶりの団体優勝に貢献した。16年リオデジャネイロ五輪は団体総合で金、跳馬で銅メダルを獲得。神奈川・岸根高-日体大。1メートル63、54キロ。

データBOX

 ◎…男子個人総合で日本勢の表彰台は11大会連続。2002年大会は種目別のみを実施し、01年大会は日本体操協会が米英軍によるアフガニスタン軍事攻撃の影響を考慮して選手派遣を見送ったため、個人総合で出場した大会では1997年大会から表彰台を守り続けたことになる。
 ◎…男子個人総合で塚原直也が97年大会で銅メダル、99年大会で銀メダル。03年大会からは05年大会王者の冨田洋之が3大会連続で表彰台に立ち、07年大会で水鳥寿思が銅メダルを獲得した。09年大会からは内村航平が6連覇した。
 ◎…白井は世界選手権で種目別床運動の2個、団体総合の1個の金メダルを含め、通算6個目のメダル獲得。

男子個人総合

 床運動、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の6種目の合計点で争われ、腕力、脚力などの総合力が問われる。2006年に10点満点の採点方式が廃止され、難度に応じて得点が決まるDスコア(演技価値点)を上げる技の高度化が加速。種目別のメダルを狙う傾向が強まったが、日本は伝統的に個人総合の強化に力を入れ、五輪と世界選手権で計7人の王者を輩出している。

体操・世界選手権

 国際体操連盟が主催する五輪と並ぶ体操競技の世界一決定戦。1903年に第1回大会が行われ、現在は夏季五輪開催年を除き、毎年開催されている。47度目の今年は2日から8日までカナダのモントリオールで開催。男女ともに予選、個人総合決勝、種目別決勝を実施する。

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