【No Ball,No Life】
サッカー元日本代表FW鈴木隆行氏(39)が今年限りで現役を引退した。1995年シーズンに茨城・日立工高から鹿島へ入団。21年の現役生活で延べ11度の移籍を経験した孤高のFWだった。
「そんなにしていたんだね。数えたこともなかった。それだけ引っ越しが大変だった、ってことだよ」
7日の引退会見を終えた鈴木氏は笑った。現役時代は、いつでもどこでも前を向いていたという。過去を振り返ったことはない。自分の選択に後悔したこともないという。だからこそ、「やり残しはまったくない。走りきった気持ちが強い」と、すがすがしい表情で語った。
鈴木氏とは鹿島時代から付き合いがあるが、引退会見で忘れられない言葉を口にした。現役時代について、「21年間は苦しかった」と振り返ったのだ。2002年日韓W杯のベルギー戦でゴールを決めるなど、輝く時期があっただけに意外だった。だが、常に何かを追い求める鈴木氏にとっては活躍した喜びよりも、所属クラブで出場機会に恵まれない苦しさ、試合に出ても結果を求められる重圧など、乗り越えるべき壁と向き合っていた経験の方が濃密だった。
「プロに入る前から苦しい環境にいることを望む性格だったと思う。これでいいや、と満足することは絶対にだめだと考えていたから」
常に飢えていた。W杯ベルギー戦のゴールですら、「うれしかったのは一瞬。まだ同点だったし。むしろ、大会期間中も(重圧で)苦しくて、早く終わってほしいと思っていたくらい」。W杯での得点という偉業もかすんでいた。