主将のGKカシリャスが、そして、決勝点を挙げたフェルナンドトレスが、アンリ・ドロネー杯(優勝杯)を何度も天に突き上げた。音楽の都ウィーンで、華麗なパスのメロディーを奏でたスペイン。44年越しの夢が、ついに結実した。
歴史を変えるV弾は前半33分。シャビのスルーパスに反応したフェルナンドトレスが、相手DFラーム(バイエルン)をかわし、GKレーマン(アーセナルからシュツットガルトに移籍)と交錯しながら、ファーサイドにチップ弾を決めた。昨夏に60億円ともいわれたリバプール史上最高額で移籍し、リーグ得点王争いで2位になった新星が、スピードと技で最高の仕事を成し遂げた。
メジャー大会(W杯と欧州選手権)での優勝は64年の欧州選手権のみで、W杯は4強が最高だったスペイン。“永遠の優勝候補”と呼ばれて久しく、同年の東京五輪を知らない若者が増えた日本と同様、唯一の栄誉も風化しつつあった。まだ24歳のフェルナンドトレスは「重要なのは過去の栄光ではない。きょう、自分たちの手でつかみ取った栄冠にこそ意味がある」と重みのある言葉を口にした。
表彰式で優勝杯とメダルを授与し、「私自身がスペインの英雄たちを祝福することができてうれしい」と語ったのは、欧州サッカー連盟(UEFA)のプラティニ会長だ。64年を除けばスペインが唯一、決勝に進んだ84年大会。スペインを2−0で破って優勝したフランスの決勝点を挙げたのは誰あろう、“将軍”プラティニだった。
その84年に生まれたフェルナンドトレスが「夢がかなって最高だ。W杯でも栄冠をつかみたい」と語れば、69歳のアラゴネス監督も「十八番の速いパス回しと攻撃サッカーを見せることができた。世界の誰もがわれわれの実力を認めるはず」と破顔一笑。45歳の年の差を超えた師弟は“新生スペイン”の誕生に酔いしれていた。