ジダン、病気の母への愛が怒りの引き金…「売春婦の息子」発言に暴挙
【ハンブルク11日(日本時間12日)=円賀貴子通信員】ドイツW杯決勝戦で頭突きを見舞って退場処分になったフランス代表MFジネディーヌ・ジダン(34)=Rマドリード=の暴挙の理由は、病気の母への愛にあった。イタリア代表DFマルコ・マテラッツィ(32)=インターミラノ=から「テロ売春婦の息子」と呼ばれたといい、決勝戦当日にジダンの母が体調を崩して病院へ行っていたとも報じられた。これが本当なら、突然キレた説明がつくが…。
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現役最終試合として迎えたW杯決勝の大舞台で、なぜあのような暴挙に出たのか。当事者のジダンが沈黙を守る一方で世界中でさまざまな憶測が流れている。
ジダンがマテラッツィに頭突きした直前に、ジダンを怒らせる“何か”があったはずだ。11日付の英紙タイムズは読唇術の専門家の話として、マテラッツィがジダンのことをイタリア語で「テロ売春婦の息子」と呼んだ上で「くたばれ」と言ったと伝えた。ジダンはセリエA・ユベントスに所属したことがあり、イタリア語が分かる。
また、11日付のドイツ紙ビルトは、イタリア戦が行われた9日の朝、息子の応援のためにドイツを訪れていたジダンの母マリカさんが、体調を崩してベルリン市内の病院に行っていたと報じた。
アルジェリア系移民のジダンは、マルセイユの貧民街で父エスマイルさんと母マリカさんの苦労する姿を見て育った。14歳で親元を離れ、フランスリーグ・カンヌで17歳でプロデビューしたときの初給料約8万円をすべて両親に贈ったほど家族を大事にしている。イスラム教のジダンに対し、信仰と母親を冒涜するセリフが浴びせられたとすれば、体調不良を訴えた母への思いとあいまって怒りが爆発したとしても不思議ではない。
ジダンと10日朝に話したという代理人のミリアッチョ氏は「極めて深刻な言葉を投げられたと話していた」と証言したが、「それが何なのかは話してくれなかった」という。だが周囲の状況を総合すると、マテラッツィの暴言と母の病気がジダンの理性を失わせた可能性は高い。フランスのサッカー協会関係者は「母親を侮辱することは、トラブルを呼ぶようなものだ」と話した。
ミリアッチョ氏は「数日中に彼の口から真実が明かされるだろう」としている。近く本人の口から明らかにされるであろう暴行の真相に、世界中の耳目が集まる。
■大荒れVTR
9日のイタリア−フランス戦。開始早々の前半7分、MFジダンのPKでフランスが先制。同19分、CKからDFマテラッツィのヘディング弾でイタリアが1−1に追いつく。その後は一進一退の攻防が続き、90分間で決着がつかず延長戦に突入。延長後半5分、ジダンが執拗なマークをくり返すマテラッツィと口論となり、相手の胸元へ頭突きを一発=2枚目の写真=、ロイター。マテラッツィはもんどり打って倒れ、主審はジダンに退場を宣告した。
試合はPK戦にもつれ込み、イタリアが5−3で24年ぶりの優勝。現役最後の一戦で退場したジダンだが、翌10日に大会MVPに選出された。
★マテラッツィ「母親のことは言っていない」
ジダンの退場を誘った形となったマテラッツィ=写真右、ロイター=は11日付の伊紙ガゼッタ・デロ・スポルトで、「ジダンのシャツを掴んだら『そんなにシャツが欲しいのなら後でやるよ』と言ったので、侮辱の言葉で答えた」と弁明した。侮辱がジダンの家族に関するものかについては「よく聞くたぐいの言葉だ。母親のことは言っていない。テロリストとも呼んでいない」とだけ答えた。
マテラッツィは14歳のときに母親を亡くし、イタリアでは母思いで有名。「僕にとって母は神聖なものと知っているでしょ」とも話している。
★ジダンとマテラッツィにFIFA処分も
国際サッカー連盟(FIFA)理事を務める日本サッカー協会の小倉純二副会長は11日、ジダンとマテラッツィがFIFA規律委員会から処分を受ける可能性があることを明らかにした。ジダンの暴行はマテラッツィの発言に原因があると推測されており「この後事実が明らかになれば、調査する可能性がある。今まで報道された発言は差別に該当する」との見解を示した。現役引退するジダンについては「(処分は)罰金になるのでは」と話した。