2006年07月06日 更新

ラスト1分“怒り”のグロッソ弾!伊3大会ぶり決勝進出

グロッソ

グロッソの決勝弾はノートラップで左足を一閃。ストライカーも顔負けの美しいゴールだった=共同

W杯第22日・決勝トーナメント準決勝(4日=日本時間5日、ドイツ・ドルトムント)イタリア代表が準決勝で開催国のドイツ代表を延長戦の末に2−0で撃破。3大会ぶり6度目の決勝進出を決めた。独紙にイタリアを中傷する報道が躍る中、死闘にケリをつけたのは前ドイツ代表監督のフェラー氏に酷評されたDFファビオ・グロッソ(28)=パレルモ=だった。延長後半14分、誰もがPK戦を覚悟した最後の最後で“怒り”の起死回生ゴール。下馬評を覆すアズーリ(空色=イタリア代表の愛称)の24年ぶりの優勝が迫ってきた。

口を閉ざせばハエは入らない−。イタリアにこんな格言がある。死闘を制したのは、まさに「口は災いの元」を地でいくゴールだった。

「何て素晴らしい気分だ。ゴールの瞬間は涙が出た。妻、息子、私を応援してくれるすべての人にささげたい」。DFグロッソの興奮が収まらないのも無理はない。それは開始から119分。MFピルロの右足から放たれたスルーパスに左足を振り抜く。放たれたボールは、どんなストライカーも真っ青のきれいなカーブを描き、ゴール左隅へと吸い込まれた。

怒りの一発−。試合当日の伊紙コリエレ・デロ・スポルトに、元ドイツ代表FWで前ドイツ代表監督のフェラー氏の「イタリアは強いが、グロッソという穴をつけば勝てる」というインタビューが掲載された。これを目にしたグロッソは「寂しかった。栄光を持つ人物が個人攻撃とは…」とカンフル剤に代えた。5年前、セリエC2(4部相当)からセリエAの初舞台を踏んだ苦労人。努力を否定するようなドイツの英雄の言葉が、この男を劇的ドラマの主役にさせてしまったといっていい。

独紙ビルトの1面には「アリベデルチ(伊語でさよなら)・イタリア」という見出しが付けられた。ピザの絵にイタリア代表選手の顔を描き、「相変わらずのカテナチオ」と守備偏重でつまらないサッカーと酷評。ホスト国・メディアによる“挑発的”な報道も目立った。

リッピ監督は「いまだカテナチオというなら、その記者は担当分野を変更した方がいい」とチクリ。6試合でオウンゴールの1失点だけという堅守は健在だが、それはあくまでも結果論。同監督はFWデルピエロ、ヤクインタを投入し、4トップともいえる超攻撃姿勢で勝利を追求した。

しかも殊勲のグロッソはサイドDF。守備偏重なら、この土壇場でDFが上がることなどあり得ない。W杯のPK戦はドイツの4戦4勝に対してイタリアは3戦3敗。120分間で決める気持ちは、間違いなくイタリアの方が強かった。

5日付の独紙ビルトは「グロッソがわれわれの心臓を刺した」と脱帽した。八百長問題、元代表選手の自殺未遂、そして中傷記事…。70年メキシコ大会から12年おきに決勝に駒を進めるアズーリは、逆風を力に代えて偶然を必然にする。

(志田健)

■ファビオ・グロッソ

1977年11月28日、ローマ生まれ、28歳。01年にキエーティ(当時セリエC2)からペルージャ(当時セリエA)に移籍。04年にパレルモに移籍した。来季からインターミラノでプレーすることが決まっている。セリエA今季33試合0得点、同通算136試合8得点。03年4月のスイス戦で代表デビュー。代表通算22試合2得点。1メートル90、79キロ。

■データBOX

イタリアが94年米国大会以来、12年ぶりの決勝進出を決めた。決勝進出回数は6度目。これはドイツの7度(西ドイツ時代を含む)に次ぐ。
  過去5度のうち、優勝は34年イタリア大会、38年フランス大会の2連覇と82年スペイン大会の3度。最後の決勝進出となった94年米国大会は、ブラジル相手に史上初の決勝PK戦決着となり、惜しくも4度目の優勝を逃した。
  なお、イタリアは70年メキシコ大会から「12年サイクル」で決勝に駒を進めていることになる。

過去のW杯決勝成績とイタリアW杯全成績
開催地 優  勝 スコア 準優勝 イタリア
30 ウルグアイ ウルグアイ 4−2 アルゼンチン
34 イタリア イタリア 2−1 チェコスロバキア 優 勝
38 フランス イタリア 4−2 ハンガリー 優 勝
50 ブラジル ウルグアイ 2−1 ブラジル 1次L敗退
54 スイス 西ドイツ 3−2 ハンガリー 1次L敗退
58 スウェーデン ブラジル 5−2 スウェーデン
62 チ  リ ブラジル 3−1 チェコスロバキア 1次L敗退
66 イングランド イングランド 4−2 西ドイツ 1次L敗退
70 メキシコ ブラジル 4−1 イタリア 準優勝
10 74 西ドイツ 西ドイツ 2−1 オランダ 1次L敗退
11 78 アルゼンチン アルゼンチン 3−1 オランダ 4 位
12 82 スペイン イタリア 3−1 西ドイツ 優 勝
13 86 メキシコ アルゼンチン 3−2 西ドイツ 16強
14 90 イタリア 西ドイツ 1−0 アルゼンチン 3 位
15 94 米  国 ブラジル 0−0
PK3−2
イタリア 準優勝
16 98 フランス フランス 3−0 ブラジル 8 強
17 02 日本・韓国 ブラジル 2−0 ドイツ 16強
【注】国名は当時のもの

イタリア・06年W杯成績
月・日 スコア 対戦相手
▼1次L
6・12 ○2−0 ガーナ 
17 △1−1 米 国 
22 ○2−0 チェコ 
▼決勝T1回戦
26 ○1−0 豪 州 
▼準々決勝
30 ○3−0 ウクライナ
▼準決勝
7・ 4 ○2延0 ドイツ

★デルピエロ、ダメ押し!親友・中田への“惜別弾”

イタリア代表は途中出場のFWデルピエロ(ユベントス)が、延長後半ロスタイムに勝利を決定付ける2点目を挙げた。今大会初ゴールは親友である元日本代表MF中田英寿氏への“惜別弾”にもなった。大会前に「出たらゴールを決める」と電話で連絡を取り合ったほどの仲で、同氏の早過ぎる引退には「まだ若い。後悔するよ」と惜しんだ。「まだ決勝がある。僕らの仕事は終わっていない」と頂点だけにベクトルを向けた。

★トッティ伊代表引退…今大会後、リッピ監督明言

イタリア代表MFトッティがドイツ戦後、今大会限りでの代表引退を表明した。「日曜日、優勝できても90%代表から離れる」と衝撃発言を繰り出した。

今大会は直前の左足首骨折もあって当初は本調子になく批判の声も上がった。しかし、6試合中5試合で先発指令塔として出場。翌5日のベースキャンプ地デュイスブルクでの会見では「自分を最後まで信用してくれてありがとうといいたい」とリッピ監督への感謝も口にした。

「残念ながらトッティがこのW杯で代表を終えるのは確かなことだ」とリッピ監督。98年10月10日のスイス戦で代表デビューしてから、アズーリの顔を8年間務めたトッティが、ついに青いユニホームを脱ぐ。決勝前日の8日には昨年結婚した夫人のイラリーさんと息子クリスティアンくんもドイツ入りする予定。9日の決勝では最後の雄姿を見せつける。

■不正問題は10日に結審!?

イタリアにとっては強烈な逆風の中での試合になった。国内を揺るがす不正問題で、検察側がドイツ戦開始数時間前にセリエA・ユベントスを同C1(3部相当)に、ACミラン、フィオレンティーナ、ラツィオを同B(2部相当)に降格させるよう求めた。
  同国代表はW杯メンバーのうち13人が問題の4クラブに所属。FWデルピエロをはじめ5人が所属するユーベは、4日にカペッロ監督が辞任するダブルパンチで、5日にはスペインリーグ・Rマドリードが同監督の就任を発表した。
 「試合に負けても騒動を言い訳にしないよう戒めてきた」と語るリッピ代表監督は、被告の1人であるモッジ前GMが5月に辞任したユーベで03−04年まで3季指揮を執っている。W杯を配慮して、裁判は決勝翌日の10日に結審する予定だが…。