2008年03月27日 更新

「誰でもよかった」18歳少年、線路に男性突き落とし死なす

線路に突き落とされた仮谷国明さんをはねた瀬戸発岡山行き普通列車=26日午前0時30分、JR岡山駅

線路に突き落とされた仮谷国明さんをはねた瀬戸発岡山行き普通列車=26日午前0時30分、JR岡山駅

 またも“殺人願望”の若者による不可解な殺人事件が起きた。25日深夜、岡山市のJR岡山駅構内で電車を待っていた男性(38)が突然線路に突き落とされ、電車にはねられて死亡した。突き落としたのは大阪府内の少年(18)。高校を卒業したばかりで「人を殺せば刑務所に行ける。誰でもよかった」。おとなしい性格で成績もよかったという少年がなぜ…。

 茨城県土浦市の8人殺傷通り魔事件に続き“無差別”の凶行が起きた。

 25日午後11時5分ごろ、JR岡山駅ホームで電車を待っていた岡山県倉敷市の岡山県道路建設課主任、仮谷国明さん(38)が男に左背後から押され線路に突き落とされた。直後に普通電車にはねられ、約5時間後の26日早朝に死亡した。

 殺人未遂の現行犯で現場で逮捕されたのは大阪府大東市の少年(18)だった。当時は終電間際でホームに200人以上がおり、突然の事件に騒然となった。

 「人を殺せば刑務所に行ける。誰でもよかった。一番前の人の背中を両手で押した」と供述。自宅から持ち出したという果物ナイフ(刃渡り約12センチ)も持ち、「人を刺してやろうと思った」。岡山西署が殺人容疑に切り替えて調べている。

 両親と兄の4人家族。25日朝に家出し、両親が同夜に大阪府警に家出人捜索願を出していた。家出については「経済的事情で進学をあきらめたことも理由の1つ。大阪を離れたくて行く当ても確認せず電車に乗った」。私鉄などを乗り継ぎ自宅から160キロ離れた岡山駅に25日午後7時ごろ到着。「人を殺すかどうか迷って」事件まで駅構内などを歩き回っていた。

 大阪府立園芸高校を今月卒業。3年間で欠席は2日のみで卒業式では精勤賞を受けた。成績は優秀で東大や京都大医学部を目指すと話したことも。担任からは「現実離れしている」と諭されたが、しばらくは希望を変更しなかった。しかし家庭の経済的事情で進学を断念。成績が落ちたが、「自分でお金をためて進学する」と将来の希望も語っていた。

 中学時代にはアメリカンフットボールをやっており体格はよかったが非常におとなしい性格。中学で一時、いじめを受けていたこともあった。

 岡山市に駆け付けた少年の父親(56)は会見を開き「遺族に申し訳ない気持ちでたまりません。息子が許せない」と涙ながらに謝罪。「いじめが心に残っていたのか」と話し、24日夜に土浦市の事件を報じる番組を見ながら「こんなことするな」と言うと「うん」と答えていたことを明かした。約1時間20分続いた会見の最後に数十秒間、頭を下げ続けた。

★2女の父・仮谷さん、引き継ぎで残業していた

 被害者の仮谷国明さんは広島大工学部を卒業し土木技術者として平成5年に県に採用。道路建設課主任として道路拡幅などを担当していたが、25日に異動が内示され、引き継ぎで午後10時すぎまで残業。帰宅途中に事件に巻き込まれた。

 職場の上司は「まじめで仕事にも積極的。明るい性格で一緒に楽しく仕事ができた」。家族は妻と小2の長女、幼稚園児の次女の4人暮らし。仮谷さんの自宅に駆け付けた父の要さん(70)は「子煩悩な息子だった。はらわたが煮えくりかえる思いだ」と涙を浮かべていた。

★8人殺傷事件に触発された?

 中央大学法学部の藤本哲也教授(犯罪学)は「社会が閉塞(へいそく)状態だと、不満を爆発させるような事件が起きる。少年など社会の弱者がストレスに一番反応しやすく、茨城県土浦市の8人殺傷事件に触発された可能性もある」と指摘する。少年が無差別に他人を狙う事件では動機に不可解なケースも多く、平成12年5月に愛知県豊川市で主婦を刺殺した17歳少年は「人を殺す経験をしようと思った」と供述。医療少年院送致の保護処分を受けた。