2017.11.21 20:55

【高橋信之コラム】 書評「宇宙戦艦ヤマトの真実」(祥伝社)

【高橋信之コラム】

 書評「宇宙戦艦ヤマトの真実」(祥伝社)

特集:
高橋信之
松本零士氏の帯付き!(幻の)公式感が漂う!

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 SF作家であり日本のテレビアニメ黎明期に活躍されたSF設定考証を担当された豊田有恒氏の現場証言として『宇宙戦艦ヤマト』までの時代を語られています。

 軽いまとめで、あっさりとでしたが、面白かったです。

 同作の原型企画の「アステロイド6」では戦艦型の宇宙船とだけ設定されていて、特に限定されていなかった艦体が旧日本海軍の誇った世界最大の戦艦大和とすることになり、番組タイトルも「宇宙戦艦ヤマト」に変異する過程と、その「戦艦大和」を宇宙に飛ばそうと言ったのは松本零士であったと明言されていたのがよろしいかと。

 この作品では、プロデューサー西崎義展氏と漫画家松本零士氏とが「どちらが原作者であったか」をめぐって法的係争になったりして、その名誉と権利には、なにかと戦雲渦巻き硝煙の匂いが漂うことちなりました。

 実際のところ、『宇宙戦艦ヤマト』には松本零士氏の既存作であった『サブマリンスーパー99』『電光オズマ』『光速エスパー』といった初期SF作品から数多くの参考引用の痕跡が見られます。

 始めて宇宙戦艦として実在した戦艦を宇宙に飛ばしたのは、松本零士氏の影響が色濃いといえます。

 ただし、その前にも旧日本海軍の戦艦大和を飛行戦艦として新造した絵物語と漫画がありました。

 「梶原一騎小説・吉田郁也挿絵」による「小説・新戦艦大和」、「梶原一騎原作・団鉄也作画」による「漫画・新戦艦大和」が、10年以上先行して存在していたのです。

 その、掲載誌(日の丸誌、少年画報誌)には、松本零士氏も寄稿していたのです。もちろん読まれていたと思います。

 さらに同作の物語の構造は、西崎義展が手塚治虫からアニメ化を獲得して作った『海のトリトン』(原作・青いトリトン)と、同じでした。

 ヤマトが呼ばれたイスカンダル(とガミラス)への旅=トリトンのポセイドンの本拠地への旅、究極の破壊兵器波動砲=オリハルコンの剣という構造は、当時の高校生であった私にも分かりました。

 古代進がガミラス本星を滅ぼしたときの後悔、トリトンがポセイドン一族を滅ぼしたときの後悔、当時見ていた僕は、テレビの前で(なんだ、同じじゃん)とつぶやきました。

 西崎義展氏は『海のトリトン』でやった「少年の冒険モノ」を、今度は宇宙でやろうとしたわけですね。

 『海とトリトン』で手塚治虫がヒントにしたSF小説もあります。

 ソ連のSF作家ベリャーエフが書いた「両棲人間第1号」または「イルカに乗った少年」というジュブナイルです。ここでは海洋にも陸上にも住めるようにバイオ改造された少年が登場しますが、手塚治虫の『青いトリトン』でははるかな太古に滅んだアトランティスの末裔(まつえい)として描かれました。

 アニメの総監督は、のちに『機動戦士ガンダム』を生む富野喜幸氏でした。

 西崎義展氏は、この図式を銀河宇宙へと拡大して『アステロイド6』を発案し、それが『宇宙戦艦ヤマト』になったのです。

 このアドベンチャージャーニーの図式はギリシャ神話のジェーソンの活躍を描いた「アルゴ探検隊」が祖型にあるため、海外で『宇宙戦艦ヤマト』はSF版アルゴノートとして紹介され、古代進の英名は、ジェーソンとして輸出されました。

 と、このあたりの説明を詳しく読みたかったですねェ。ここで補足しときます。

 『宇宙戦艦ヤマト』には、ギリシャ神話と手塚治虫と梶原一騎と松本零士そしてソ連SFと虫プロダクションや日本のSF作家たちの考え出したセンスとギミックがミックスされているんですよね。

 『海のトリトン』は富野由悠季(喜幸)の初監督作品でもありますし。

 これは『新世紀エヴァゲリオン』にも共通する、濃縮されたエッセンスの集積かと思います。

高橋 信之

「高橋 信之」イメージ画像スタジオ・ハードデラックス株式会社 代表取締役 東京国際アニメフェア実行委員 日本アニメーター・演出協会 応援団長 アニメ記者クラブ/アニメプレスセンター 起案者・理事「出版や広告、商品開発、映像メディアで活動するプロデューサー/プランナー。アニメ、SF映画、ビデオゲーム、玩具、デジタルデバイスなどを得意分野とし、多くの雑誌編集者やデザイナー、映画監督と交流する。

  • いまでは(C)東北新社となった『宇宙戦艦ヤマト』です。
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