2017.7.28 10:40

“くにうみの島”淡路島に漫画とアニメのテーマパーク「ニジゲンノモリ」 「火の鳥」「クレヨンしんちゃん」の異次元の世界

“くにうみの島”淡路島に漫画とアニメのテーマパーク「ニジゲンノモリ」 「火の鳥」「クレヨンしんちゃん」の異次元の世界

 “くにうみ”の島といわれる兵庫・淡路島の淡路市に漫画とアニメのテーマパーク「ニジゲンノモリ」が15日、オープンした。持ち味は昼と夜2つの“顔”。夜の「ナイトウォーク火の鳥」は暗闇の山中をさまよいながら岩や木々に浮かび上がる幻想的な映像の世界に浸るアトラクションだ。昼は「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」と題した子供たちの野外体験施設。海外でも人気が高い日本の漫画、アニメのテーマパークは海外向けの新たなビジネスモデルになるという期待も高まる。計画から6年。実現までの道のりをふりかえる。(産経新聞 巽尚之)

■映像を体感する幻想の森

 「ナイトウォーク火の鳥」は日没後の午後7時頃から始まる。テーマは手塚治虫の名作「火の鳥」。暗闇の山道は上り下りがかなりあって運動量は多い。コースの要所要所では小鳥のさえずりや怪しげな鳴き声が聞こえる。すると突然、岩壁や道に「火の鳥」の映像が浮かび上がった。

 生い茂る木々をスクリーンに華やかな打ち上げ花火が映し出されたり、木の幹にコミカルな表情をした顔が映写されたり…。プロジェクション・マッピング(物体に投影する映像)を駆使した幻想的な世界だ。黒装束のスタッフが道案内をしてくれるが、ここは“異次元”の森-。

 「火の鳥」は手塚がライフワークとして取り組んだ代表作の一つで、生命の永続性をテーマに地球から宇宙、過去や未来へと時空を超える壮大なスケールの物語。ナイトウォークは手塚の長男でビジュアリスト(映像作家)の真さんが監修し、1・2キロの道のりに立体的な映像を浮かび上がらせ、原作の世界を体感できる施設にした。

 一方の「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」には人気のキャラクター、クレヨンしんちゃんのモニュメントが配され、ロープで吊されて滑空するジップラインやフィールド・アスレチックで野外体験が楽しめる子供向けの施設。ニジゲンノモリというネーミングは二次元のコンテンツ(漫画やアニメ)を使っていることに由来する。

 これで完成ではない。今秋には宿泊用にキャンピングの豪華版「グランピング」の施設が完成するほか園内は今後も充実させていく計画という。

 場所は淡路島北部のサービスエリア「ハイウェイオアシス」から徒歩圏で入場料はいずれも3300円。無料のシャトルバスも運行している。

■漫画とアニメで淡路島活性化

 ニジゲンノモリは構想から6年。事業を手がけた人材派遣大手、パソナグループの南部靖之代表は開園にあたり「この地を世界のリゾート拠点にしたい」と抱負を語った。

 ふりかえれば「ニジゲンノモリ」誕生のきっかけとなったのは平成23年10月。記者(巽)が南部代表に「手塚治虫作品のテーマパークが関西に実現できれば…」ともちかけた。

 パソナは平成20年から淡路島に土地を取得し、求職中の若者へ農業を紹介する「就農」をはじめとする地域活性化事業に取り組んできた。淡路島に土地勘のあった南部代表らは島内でテーマパークの候補地を模索していたところ複数の候補地が上がった25年秋、兵庫県が県立淡路島公園(134ヘクタール)の活性化策を公募。そこでパソナが提案した漫画やアニメのテーマパーク案が採択され、明石海峡大橋を渡った丘陵地帯(同公園内)に決定した。

 この時点ですでに“手塚パーク”ではなく、広く漫画・アニメのテーマパーク計画となっていた。

■幻の「手塚治虫テーマパーク」

 実は、幻の「手塚治虫テーマパーク」計画が存在した。平成12年ごろ、神奈川県川崎市が浮島地区に「手塚治虫ワールド」を建設する計画を進めたが不況で出資金が集まらないとして断念。結局実現しなかった。手塚作品の版権を管理する手塚プロダクション(東京)はその経験から手塚だけのテーマパークにすることには慎重だった。

 「『進撃の巨人』や『エヴァンゲリオン』が受ける現代の若者に、手塚作品がどれだけ通用するのか」。手塚治虫の名前が若い人たちにどれだけ響くか、ここが焦点だった。

 山本絹子ニジゲンノモリ社長らは「手塚だけに固執しない漫画、アニメのパークが妥当」と判断。幅広い層に人気のある漫画「ワンピース」なども候補に上がったが、版権の問題もあり実現がかなわなかった。

 結果的にアジアの子供たちに人気の「クレヨンしんちゃん」を加え「火の鳥」との二本立てになった。

■手塚漫画への熱い思い

 「鉄腕アトム」に代表される手塚漫画は私たち昭和30年代生まれにとっては“バイブル”だ。手塚作品を紹介した拙著『人生で大切なことは手塚治虫が教えてくれた』 (PHP研究所)の共著者でもあるタレントのラサール石井さんはこの中で「ブラック・ジャック」や「どろろ」などを挙げ、「なぜ生きなければならないのかという永遠のテーマを読者に投げかけている」と語っている。

 おびただしい名作を残した手塚作品の版権の数は約700。医の倫理や子供の貧困、人種差別、安楽死など社会性を帯びた作品は数多く、谷岡一郎・大阪商業大学長は「手塚漫画に込められた社会科学的な観点は十分、研究題材に値する」と話している。それは漫画の枠を越えた深い問いかけをもっていた。

 今のところアトラクションが2つだけではまだまだ物足りないと感じるかもしれない。ただ、子供たちがこの「ナイトウォーク火の鳥」で“手塚再発見”の入り口になれば喜ばしいと関係者は期待している。

 ■日本発のテーマパークを海外で

 「ニジゲンノモリ」には国も注目している。日本の魅力を海外に発信し海外の需要を獲得するとともに雇用を創出する「クールジャパン戦略」のモデルになり得るとの見方だ。

 「火の鳥」も「クレヨンしんちゃん」も、米国発のディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)とは異なる純国産のジャパンアニメ。「日本漫画を題材にした『ニジゲンノモリ』のようなテーマパークを国内にとどめず、シンガポールやドバイなどへも輸出することができれば新たな商機が生まれる」と中村稔・元近畿経済産業局総務企画部長は語っていた。

 政府は25年11月にクールジャパン推進のためのファンド、クールジャパン機構(東京)を設立。約700億円の出資金をもとに有望な案件への投資を現在も進めており、日本産コンテンツのテーマパークを輸出することが新たなビジネスモデルに育つ可能性も秘めている。

  • 開園した、ニジゲンノモリの「クレヨンしんちゃんアドベンチャーパーク」=15日、兵庫県淡路市(門井聡撮影)
  • 内覧会が開かれた「ナイトウォーク火の鳥」=兵庫県淡路市(門井聡撮影)
  • 今月15日にオープンした「ニジゲンノモリ」。奥は明石海峡大橋=兵庫県淡路市(本社ヘリから、永田直也撮影)
  • ニジゲンノモリ地図
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