2017.2.13 13:36

【杉本真之(ちへ)コラム】「クラブだけどアニクラは怖くない」理由とアニメファンきっと楽しめるアニクラの「クラブっぽい」魅力

【杉本真之(ちへ)コラム】

「クラブだけどアニクラは怖くない」理由とアニメファンきっと楽しめるアニクラの「クラブっぽい」魅力

特集:
杉本真之(ちへ)
東京芸術大学で開催された「カルチュラルタイフーン2016」でDJプレイするasanoappy

東京芸術大学で開催された「カルチュラルタイフーン2016」でDJプレイするasanoappy【拡大】

 アニメ×ダンスミュージックの超都市型野外DJフェス『リアニメーション』のオーガナイザー、ちへこと杉本です。先日、面白いテキストがWEB上にUPされたので、今回はそれを紹介したいと思います。

 『リアニメーション』のレジデントDJ(イベントに毎回出演するレギュラーDJのことを、クラブっぽい言い方で「レジデント」と呼びます)でもある浅野裕貴(DJ名asanoappy)が東京芸術大学大学院の修士論文として昨年に発表した「クラブという空間を巡って -アニソンクラブイベントの現在-」(以下『あさの論文』)を公開しました。

 【Free DL】昨年執筆したアニクラについての修士論文をネットの海に放流します【 #あさの論文 】 シーンの歴史を知るキーマンへのインタビューやフィールドワーク、過去のクラブ研究との比較など、アニクラについて多面的に捉えた内容になっています。

 ■普通のアニメファンが抱く「クラブ」のイメージは?

 「クラブ」というのは非常に射程距離の長い言葉です。そこには場所としてのクラブ(クラブハウス)に行くという意味だけでなく、クラブで開催されるイベントというニュアンスや、それらのイベントが集まって形成されたコミュニティーのようなもの、さらにそれら全体をくくるカルチャーとしての意味合いまで含まれることもあります。

 そんな「クラブ」についての一般的なイメージを集約したとき、「怖い場所」というステレオタイプな印象があることは、否定できません。

 暗い場所、妖艶(ようえん)な照明、トランシーな映像、耳を聾する爆音、強めのお酒、セックス、ドラッグ、などなど、数多のエンターテインメント作品の中で描かれ、一部の芸能人が羽目を外したというニュースに影響され、「クラブ」になじみのない人にとって、「全てがそうではない」と理解しつつも、やはり頭の片隅にそんなイメージがこびり付いて離れないのではないでしょうか。

 そういったステレオタイプな「クラブ」像は、片方で大人の遊び場としての憧れや格好良さも想起させます。最先端の音楽がかかる場所であり、流行に敏感な人たちが集まる場所であり、VIPも含めて色んな立場の人たちが闊達(かったつ)に交わる場所でもあります。老成した子供が憧れを抱く「リア充の巣窟」は、アニメファンにとっては「近寄りがたい場所」です。私も経験がありますが、「何か悪いことをしてそう」とかそういうことではなく、自信ありげでおしゃれなリア充の人というのは、ただそれだけで怖いと感じてしまうのもオタクの性です。

 ■アニクラはクラブで開催しているだけで「クラブ」じゃない?

 さて、一度でもアニクラに足を踏み入れた方はご存じの通り、アニクラはそうした「クラブ」らしさとは無縁の世界です。そこに漂う空気は「オタクパラダイス」。なぜそうなるのか、『あさの論文』が鮮やかに答えを導き出しています。

(アニソンクラブイベントは)「クラブという場をある種イベントスペースとして利用していることがわかる。クラブの持っているバックグラウンドやクラブカルチャーとはまったく無関係にクラブを利用しているのだ。アニソンクラブイベントはその名の通り、クラブイベントとして開催されている。しかし、必ずしもクラブでなければならない理由はまったくないのがアニソンクラブイベントの大きな特徴であるのだ。こうした事態は、クラブの非クラブ的な流用とでも言えよう。」

 大きな音が出せて、大きなスクリーンがあって、そこそこたくさんの人が集まって騒いでも大丈夫なクラブという場所をレンタルして使っているだけで、「クラブ」カルチャーそのものと繋がりがない場合がほとんどです。最初の頃こそ、クラバーの中でもアニメが好きな人たちが「クラブ」で悪ふざけしてアニソンをプレイするというきっかけもあったものの、ここ最近は専らその機能にしか興味がありませんとばかりの独自空間になっています。

 あくまで「アニメファンがアニソンを大きな音で聴いて、大勢で盛り上がる」ことに適した場所がクラブであっただけで、アニメファンが楽しむことに特化したイベントがアニクラです。文化としての「クラブ」とは無縁だし、むしろアニソンを楽しむために不要なハードルになりかねない、かっこいいけれどちょっぴり怖い「クラブ」文化を駆逐してしまったのがアニクラだというのが、『あさの論文』の中で語られるアニクラ像であるし、私もそれは実態に近いと思います。

 ■「オフ会×カラオケ×ライブ」がアニクラの楽しさ?

 アニクラはクラブで開催されているだけで、一般的にイメージされる「クラブ」ではないただのアニメファン向けイベントです。では、どんなアニメファン向けイベントで、何がそんなに楽しいのでしょう?

 それは、イベントの趣旨や規模によっても違ってきますが、最もたくさん開催されている100人未満の小規模イベントのそれは「オフ会(サロンやプライベートパーティー)」や「カラオケ」のそれに近い楽しみ方です。友達をつくりに行く、または少数の友達同士で参加していった先で輪が広がる、あの感覚です。アニソンがバンバン流れるという意味では「カラオケ」がより近い気がしますが、別に歌が下手でも気にする必要はないので、歌が苦手な人はアニクラの方が居心地良いかもしれません。

 少し規模が大きくなると「ライブ」とも接近します。DJが爆音でプレイするアニソンは疑似ライブともいえる迫力で鼓膜に伝わります。もちろん、そこにはその歌を歌っている本人はいませんが、家ではありえない音量で(しかも誰かが歌うカラオケでもなく)好きなアニソンを堪能できます。個人的には、初めてアニクラに行ってみたい人で一緒に行く友達がいない人は、比較的規模の大きなイベントに足を運ぶ方が、楽しみ方が分からなくてソワソワすることがなくて良いかなと思います。

 どちらの場合も、イベントの中心には「アニメが好き」という参加者全員の共通事項があります。同じ趣味の人たちが集まれば楽しくない訳がありません。

 (アニクラでは)「アニメ本編をどれだけ想起できるかという「想起性」や、アニメの「話題性」「流行性」、振りつけがあるかどうかなどの曲の「共有性」に価値が置かれるのだ。また、DJと聴衆がレコードを通じて一回限りの体験を作り出すというよりも、アニメを視聴した体験の再確認や共有が行われる。音楽が単独で自律したものとして聴取されているというわけではなく、アニメ作品の副次的な産物の一つとして受け入れられているのである。」

 もともとアニメファンは二次創作的な遊び方にたけており、「クラブ」を形作ってきた「ちょっと怖くて格好良さそう」な文化を、自分たちの都合の良い機能だけ残してそっくりオタク仕様に載せ換えてしまったのがアニクラといえそうです。

 アニメファンの遊びの1つとしてはまだ小さなジャンルですが、「クラブだからって怖くないよ!」がもっと伝わって、アニソンDJを楽しむ仲間がもっと増えたらうれしいなと思います。もし、ちょっと気になったら、面白そうと思うイベントがあったら、好きなアーティストが出ていたら、オタク友達に声をかけてぜひ足を運んでみてください。

杉本 真之(ちへ)

「杉本 真之(ちへ)」イメージ画像都内を中心に活動するアニソン系DJイベントのプロデューサー兼オーガナイザー。2005年頃、アニソン系DJイベント(通称"アニクラ")の黎明期における"伝説的"イベントとなった「GEKKO NIGHT」を開催。2010年には、新宿歌舞伎町で超都市型野外DJイベント「Re:animation」を旗揚げ。繁華街の中心やターミナル駅の至近距離での野外レイヴ、クラウドファンディングによるイベント入場料無料化など、思いもよらないコンセプトがヒットした。7月10日には第4回開催以来となる歌舞伎町での帰還公演「Re:animation 9」を計画している。

  • クラブの機材や環境を利用してアニメソングを爆音で楽しめる「アニソンクラブイベント」
  • 大きなスピーカーや美麗なモニターなどクラブをそのまま使いつつ、一般にイメージされる「クラブ」の雰囲気とは縁遠い
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