昨季はチーム最多の18勝(3敗)を挙げ、勝率は.857。レッドソックスの松坂大輔投手(28)を安心してみていられた、というファンは多かった。
実は私もそう。それだけに「ヒヤヒヤしながら見ていた」という関係者がいたのは意外だった。
「この先、どうなるか分からない。良くなっていくのか。悪くなることも十分に考えられる」。西武時代から松坂を見てきたレ軍の前田高典トレーナー(48)はシーズン中、松坂への不安を口にしていた。
昨年5月27日のマリナーズ戦(シアトル)。先発した松坂は五回の投球練習中に右肩の異変を訴えて緊急降板した。西武時代に経験した程度の変調で、大事をとってマウンドを降りた格好だった。松坂は1度の先発回避で復帰を考えていたが、球団は「回旋筋の張り」で15日間の故障者リスト(DL)入りに加えて「10日間のノースロー」を命じた。
前田トレーナーはこの決定にため息をついた。10日間は痛い。松坂は投げていくことで右肩の筋肉を強化し、適度な張りを維持する。それが投球の爆発力につながっていくのだが、ノースローで張りは“消滅”。同トレーナーは「キャンプ時のような状態に戻ってしまった」と嘆いた。シーズン中に肩を緩めたのは初めてだった。
キャッチボール解禁後、ブルペン投球以外の日に遠投や強めのキャッチボールで“張り作り”に努めたが、理想にはほど遠い状態での登板が続いた。「一度、緩めた肩は簡単に戻るものではない。状態はいい、悪いで言ったら悪い」。毎試合、心配していた。
それでも松坂は順調に勝ち続けた。「悪いなりに何とかしようという工夫と、マウンドで打者との間で感じる“ここに、この球を投げれば大丈夫”という投手の本能。普通の投手なら投げられない。だから大輔はすごい」
DLから復帰後、故障もなく松坂の08年は終わった。「肩が本来の状態だったら…」。前田トレーナーが期待する今季。今からワクワクしないか。(湯浅大)