レジェンド。米大リーグでは、野球殿堂入りを果たすような伝説的な選手をこう呼ぶ。ところが、カブスには選手をしのぐほどの伝説的な裏方さんがいる。いや、正確にいうと「いた」。
スーパースター顔負けの引退式を見たのは、6月26日(日本時間27日)だった。カ軍本拠地のリグリー・フィールドで行われたオリオールズ戦。始球式を兼ねたセレモニーが行われた。
主役はロサンゼルス生まれで87歳の日系2世、ヨシ・カワノ氏。1943年から約65年間、カ軍一筋で用具係を務めた。第2次世界大戦中は、日系人捕虜収容所にいたという。
福留孝介外野手(31)も使ったロッカールームは、84年に「ザ・ヨシ・カワノ・クラブハウス」と命名。福留もカワノ氏の偉大さを身をもって感じている一人だ。
「春季キャンプ中も裏方として手伝っていただいた。そういう方の名前が残っていくのは、いいことだと思います」
このカワノ氏、ただ者でない。カ軍の先代オーナー、リグリー一族がOB戦を企画した際、気難しい性格といわれた“最後の4割打者”テッド・ウィリアムズに「友だちはヨシだけ。ヨシが頼むなら出場してやる」といわしめた。
周囲からも愛された。功績をたたえた同一族は、球団売却の際に「(ヨシ・カワノ氏が)自ら引退を申し出ないかぎり永久雇用」という条項を契約書に盛り込んだ。
カ軍往年のスーパースターで殿堂入りを果たしたライン・サンドバーグ氏(49)も「球場名を変更するなら『ヨシ・カワノ・フィールド』にすべきだ」と提案した。エピソードは尽きない…。
今年の6月、トレードマークの帽子は、野球殿堂博物館(ニューヨーク州クーパーズタウン)に殿堂入りを果たした。
「自分の帽子が殿堂入りするのは最高の名誉。野球界のためになれることがうれしい」。レジェンドは、選手だけに形容される言葉ではない。伝説の裏方さんがいて、殿堂入りを果たす。これもまた、メジャーリーグのすごさだ。
(広岡浩二)