2007年07月12日 更新
イチローが球宴史上初ランニング本塁打&日本人初MVP獲得!

正真正銘のスーパースターだ! ランニング本塁打を放ち、笑顔でホームインするイチロー。出迎えるのはロドリゲス(タイガース)(ロイター)

ランニング本塁打を放ったイチロー(中央)を、ロドリゲス(タイガース、左)らが出迎える。スタンドのファンも興奮(共同)

MVPに選ばれ、大勢のカメラマンにレンズを向けられるイチロー。今やメジャーの“顔”だ(共同)

シボレー社のエド・ペッパーGM(右)からMVPの賞品「08年型シェビー・タホ・ハイブリッド」のキーを受け取るイチロー。「(トロフィーは)小さいけど、車は大きい…」(ロイター)

試合前のパレードで、夫人の弓子さん(左)とトラックの荷台に乗って手を振るイチロー(撮影・米沢秀明)
【サンフランシスコ10日(日本時間11日)】7年連続7度目の出場となったマリナーズのイチロー外野手(33)が大リーグ球宴史上初のランニング本塁打を放つなど、3打数3安打2打点の大活躍。ア・リーグを10連勝(1分け挟む)に導き、日本選手で初めてMVPに選出された。マリナーズと5年1億ドル(約121億円)での契約延長が合意に迫っていることも明らかになったスーパースターが、夢舞台で光り輝いた。
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地響きのような大歓声の中、イチローがダイヤモンドを飛ぶように疾走する。ボールが右翼のフィールドを転々とする間に、二塁、三塁を華麗に蹴り、最後は流すように楽々ホームイン。78度目となる伝統の球宴で、史上初のランニング本塁打。日本が生んだ天才がまた、メジャーの歴史を塗り替えた。
「行った(サク越えした)と思った。疲れちゃって大変でしたよ。イヤな球場ですね。史上初? そうなんですか。ボクにとっても初。それがオールスターとは」
普段クールな男が、野球少年のように、満面笑みで声を弾ませる。1点を追う五回一死一塁で、クリス・ヤング投手(28)=パドレス=の真ん中低めの直球を強振。打球は128メートル、高さ7.6メートルの右中間フェンス上部を直撃し、右翼定位置方向へ不規則にはねた。クッションボールを中堅寄りで待っていた右翼のケン・グリフィー外野手(37)=レッズ=が、ボールに追いついた時には、快足を生かし、三塁を回っていた。
3打数3安打。五回の守備でベンチへ下がった。ジャイアンツの本拠地開催。バリー・ボンズ外野手(42)がサンフランシスコ湾へ打ち込む豪快な一発に関心が集まる中、歴史的なランニング本塁打で、文句なしのMVP選出だ。
「これまでの6年間とは違う自分がいることを感じることができた」
“スーパースター”への仲間入りを実感した。01年の新人王&リーグMVP、01、04年首位打者、04年年間最多安打(262安打)、6年連続ゴールドグラブ賞…。数々の偉業を打ち立てた日本の天才は、メジャーの豪華布陣の中でも特別な存在となった。
試合前のロッカールーム、デレク・ジーター内野手(33)=ヤンキース=が「来年はヤンキースへ来るんだろ」と親しげに話しかけてきた。ランニング本塁打の後、マニー・ラミレス外野手(35)=レッドソックス=がタオルで仰いでくれた。この日、「5年1億ドルでマリナーズと契約延長」という報道が駆け巡るなど、力も評価も超一流。イチローは尊敬する側から、尊敬される側へとなっていた。
試合途中に球場を離れ、夫人の弓子さん(41)らと予約していたイタリアンレストランに行く予定だったというイチロー。「帰ろうとしたら止められた。出て行ったら捕まるぞ、とね」。スーツ姿でグラウンドに戻り、セリグ・コミッショナーから「MVPはイチロー」とのアナウンスを受けると、誇らしげに軽くうなずいた。
「(MVPを)獲得したことは生涯、忘れない。“ナントカ”(ワールド)シリーズに行ってみたいもんですね」
マ軍はア西地区2位で折り返した。まだ手にしていない世界一の栄光へ。天才は、打って、守って、走り続ける。
★イチローに聞く
−−ヒットが3本でました
「“出ました”ではない。“出した”んです」
−−ランニング本塁打も
「(打球は)いいイメージでしたよ。(サク越えと思い)走るのを途中で止めようと思ったくらい。疲れちゃって大変ですよ。昨日も今日も走っていないから」
−−7度目の球宴は
「これは楽しかった。もちろん出ることも(意味は)あるけど、やっぱり選手は結果を残さないと。これまでの6年と明らかに違う。初めて楽しい球宴になった」
−−7度出場できたことについて
「こういう舞台を用意してくれたのは、投票してくれたみなさんのおかげ。感謝したい」
−−3本のヒットを振り返って
「作品という感じ。いっぱい、いっぱいのヒットではない、過去6年と違う自分がいる」
−−MVP受賞は後半戦へ向けての刺激になるか
「そうなればいいけど、ボク個人の力ではどうにもならない部分がある。自分の仕事をキッチリやりたい」
−−ホームランを狙ったら何本打てるか
「難しいですね。打率が2割2分でいいなら、40本と言っておきましょうか。でも、だれも求めていないでしょ、そんなこと」
◆クリス・ヤング投手(28)=パドレス
「打たれた直後、あのバウンドを見たらそう(ランニング本塁打に)なると思った」
◆自らが率いるタイガースが、後半戦最初に戦うのがマリナーズだけにア・リーグのジム・リーランド監督(62)
「(イチローのMVPは)本当はいい知らせじゃないんだ。木曜日に対戦する相手だからね」
◆ナ・リーグのトニー・ラルーサ監督(62)=カージナルス
「(イチローは)バットを持った芸術家だ。走りも守備もいいし、完成されたプレーヤー。アウトにできるボールがないよ」
★イチロー、メイズ氏に感激
試合前には1951年から72年途中までジャイアンツでプレーしたウィリー・メイズ氏(76)をたたえるセレモニーが行われた。通算660本塁打、球宴にも最多タイの24試合に出場し、最多の通算23安打、6盗塁、20得点の記録を持つ。全選手が出迎え、「バリー」の名を同氏につけられたというボンズがサポートして外野で始球式を行った。同氏と同じ中堅のイチローも「あの瞬間、同じフィールドにいたことは生涯忘れられないでしょう。プレーしてするところを見てみたかったですね」と話した。もちろん同氏の背番号「24」はジ軍の永久欠番となっている。
★全米のメディアが絶賛!
【ニューヨーク11日=共同】オールスター戦でMVPとなったイチローを、全米のメディアもこぞって取り上げた。大リーグ公式ホームページは「何もスズキを倒せない」。ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「イチローが歴史をつくった」と見出しを付けてトップニュースで伝えた。マリナーズの地元シアトル・タイムズ(電子版)は「イチローがオールスター戦のMVP」との見出しで、イチローがランニング本塁打の打球を放った写真を掲載した。
■メジャー球宴「史上初」本塁打
★球宴第1号…1933年7月6日、コミスキー・パークで行われた第1回オールスター。記念すべき第1号は38歳のベーブ・ルース(ヤンキース)が三回無死一塁で右翼席に放った
★サヨナラ…41年7月8日(デトロイト・ブリッグスタジアム)。1点リードされた九回二死一、三塁で、テッド・ウィリアムス(レッドソックス)が逆転サヨナラ3ランを放った
★満塁弾…83年7月6日(シカゴ・コミスキーパーク)。三回にフレッド・リン(エンゼルス)が満塁弾を放った
★親子本塁打…92年7月14日(サンディエゴのジャックマーフィー・スタジアム)。三回にケン・グリフィーJr.が左翼席へ本塁打を放ちMVP。80年に父シニアも本塁打を打ってMVPを獲得しており、初の親子本塁打&MVPとなった
■データBOX
マリナーズ・イチローがランニング本塁打。
〔1〕メジャーリーグの球宴では史上初の快挙。イチローもオリックス時代を含めて初めて。米球宴で日本人選手が本塁打を記録するのも初めて。
〔2〕日本の球宴では半田春夫(南海、60年第2戦)、遠井吾郎(阪神、70年第3戦)、藤原満(南海、78年第3戦)、大友進(西武、99年第1戦)の4人がランニング本塁打を放った。
〔3〕メジャー日本人選手ではレギュラーシーズンで過去1本、06年4月20日に松井稼頭央(当時メッツ、現ロッキーズ)がパドレス戦で記録。
〔4〕今季はP・フィルダー(ブルワーズ、6月17日のツインズ戦)などが放っている。日本では今季まだない(昨年はセで2本、パ2で本)。
■記念の打球は殿堂へ
米球宴での日本人による本塁打は初めて。しかもそれが78度目のオールスター戦で初めてのランニング本塁打になった。試合後、米野球殿堂のアイドルソン副館長は「イチロー選手から記念すべきホームランの打球と今日のゲームで着用した帽子の提供を受けた」と明らかにした。
■ランニングホームラン
打球がフェンス越さず、フェアボールを守備側が失策することなく、打者走者が本塁まで進塁した場合を指す。「ランニングホームラン」は和製英語で、英語ではインサイド・ザ・パーク・ホームラン(inside−the−park home run)という。
■オールスター
米大リーグのア・リーグとナ・リーグの選抜チームによる対抗試合。第1回オールスターは1933年7月6日、シカゴのコミスキー・パークで開催された。きっかけは「ヤンキースの主砲ベーブ・ルースとジャイアンツのエース左腕カール・ハッベルの対決が見たい」との、一通の少年からの手紙だったといわれている。毎年7月に開催されることから“真夏の祭典”とも呼ばれ、85年からは前日にホームラン競争も行われている。2003年からは、引き分けがなくなり、勝った方のリーグがワールドシリーズの本拠地開催権を獲得できることになり、お祭りムードに真剣味も加わった。対戦成績はナ・リーグ40勝、ア・リーグ36勝、2引き分け。








◆ケン・グリフィー外野手(37)=レッズ
「おれの知る限り、あんな打球の跳ね方は見たことがない。どこかの角に当たって、逆方向に跳ねたね。でも、(イチローが)改めて素晴らしい選手だということがよく分かった」