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2008年05月24日 紙面より

慢性疲労の原因から隠れメタボまで…検診数値は語る

春の健康診断シーズン。メタボ検診の腹囲は気になっても、その他の数値は、正常の範囲内かどうかを見ただけでほったらかし、という人も多いのでは? でも、それではもったいない。数値からは、睡眠や休養をとってもなぜか疲れがとれない、といった慢性疲労の原因となる栄養素不足や、ストレスの状態を読み取れるのだ。さらに、メタボになりかけているかどうかも、数値は教えてくれる。健康診断の結果を上手に利用して、健康づくりに役立てよう。

特に病気でもなく、激しい運動をしたわけでもないのに疲れがとれない。十分に睡眠や休息をとったつもりなのに疲労感が抜けない…。

日本人の5人に1人が感じているという、こうした慢性疲労。実は健康診断の数値が、その解消に威力を発揮する。

予防医学に詳しい、マイシティクリニック(東京・新宿)の平澤精一院長は、「健康診断や人間ドックなどの血液検査データから、倦怠(けんたい)感や脱力感といった慢性的な疲れの原因がわかる。疲労解消に必要な栄養素が足りているか、ストレス過多ではないかを知る指針になるので、ぜひ活用してほしい」と力説する。

慢性疲労には、乳酸などの疲労物質の蓄積で起こる肉体疲労と、脳のエネルギー代謝の低下や精神的ストレスによる脳疲労などがあるが、現代人で特に問題なのは脳疲労。脳はストレスなどによって活性酸素が発生しやすい。活性酸素を除去する抗酸化物質(ビタミンA、C、E、コエンザイムQ10、ポリフェノールなど)の不足、さらに、脳代謝のエネルギー源となるブドウ糖の不足、糖や炭水化物をエネルギーに変換するビタミンB1などビタミンB群が足らなくなると、疲れがとれなくなるという。健康診断の数値を別表を参考に見れば、抗酸化物質や、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル、ビタミンB群などの不足がわかるのだ。

たとえば、肝機能を表すAST(GOT)やALT(GPT)や、酒を飲みすぎると上がるγ−GTP。ASTやALTは、正常の範囲内なら肝臓には問題はないが、「実は、AST、ALTともに20IU/リットル以下で、しかもASTがALTよりも多い場合、免疫機能を正常に保ち、タンパク質の代謝に不可欠なビタミンB6が不足している可能性が高い」と平澤院長。同様にγ−GTPの数値も、「低すぎるとタンパク質不足になっている可能性がある。ビタミンB群も不足しています」(同院長)。さらに、亜鉛含有酵素の一種のALP(アルカリフォスファターゼ)の数値が低いのは、疲労回復に役立つ亜鉛不足が原因だ。

人間ドックなどの血液検査の項目にある好中球(体内の有害物質を除去する働きがある白血球の一種)の項目も要注意。「好中球の増加はストレスなどによる交感神経の緊張を示し、白血球全体に占める割合が60%を超えたら注意が必要。70%以上なら間違いなく交感神経過緊張状態で、抗酸化物質を積極的にとって、脳を活性酸素の攻撃から守る必要がある」(同院長)という。

日常、見過ごしがちな数値。あなたも見直して、慢性疲労解消に役立ててみませんか。

【検査結果から、将来のメタボ度を知る】

4月からはじまったメタボ健診。腹囲も、血圧やコレステロール値も問題ないからといって安心は禁物だ。平澤院長は、「腎臓の機能を調べるクレアチニンの数値に注目してください」とアドバイスする。というのも、この数値は筋肉の総量と比例。「運動量の低下で減少するため、見た目はやせていても、内臓に脂肪がついている隠れ肥満の場合は数値が低くなります。体重は変わっていないのにこの数値が前年よりも減少していたら、注意が必要。メタボリックシンドロームになる可能性があるのです」(同院長)。また、糖がエネルギーに変換されるときに働くLDH(乳酸脱水素酵素)が減少したら、「基礎代謝が落ちている可能性がある」。数値には、さまざまな意味が隠されているのだ。

【検査結果を健康づくりに生かす方法】

体内の栄養素不足を払拭(ふっしょく)するには、適度な運動や睡眠、バランスのとれた食生活が大切。だが、それだけでは慢性疲労がとれない場合も多い。平澤院長は「エネルギー代謝を促進するビタミンB群や脳の疲れを予防する抗酸化ビタミン、脳の興奮を鎮めて疲労回復に役立つ亜鉛などの栄養素は、サプリメントで補うとよい」と話す。特に40歳以上の働き盛り世代では、「ビタミンB群が、動脈硬化を引き起こすホモシステインを無害化するのに有効」と同院長。

最近、注目を集め始めている新しい機能性素材「SOP(サーモンオバリーペプチド)」は、運動では消費されにくく、動脈硬化の原因となる悪玉の「白色脂肪細胞」を、体内の余分なカロリーを熱に変え、消費効率のよい「褐色脂肪細胞」に変換。メタボ予防に役立つと期待されている。

■平澤 精一(ひらさわ・せいいち)

医療法人社団医精会マイシティクリニック(東京・新宿)院長 医学博士。昭和56年日本医科大学卒業。日本医科大学付属病院、三井記念病院、河北病院などを経て、平成4年にマイシティクリニックを開業。日本臨床抗老化医学会認定医、日本泌尿器科学会評議員。予防医学を中心に、サプリメント外来やアンチエイジングに関する診療や更年期障害の治療を行う。血液生化学分析をもとにしたオーダーメードサプリメントの第一人者でもある。

◆健康診断の数値から見る栄養素不足とその改善法◆
★AST(GOT)、ALT(GPT)=主に肝臓の機能を表す。ASTが33IU/リットル、ALTが43IU/リットル以下なら正常とされるが、両方とも低く、かつASTがALTより多い場合、タンパク質やビタミンB6が不足。特にALTが10以下なら、重篤な不足
★LDH(乳酸脱水素酵素)=糖がエネルギーに変換されるときに働く酵素。増加すると肝炎や悪性貧血、心筋梗塞などが疑われる。正常値は200〜400IU/リットルで、200IU/リットル以下でも問題はないが、基礎代謝の減少の可能性大。ビタミンB群の補給で改善
★γ−GTP=アルコール性肝障害の指標。成人男性は50IU/リットル以下、成人女性は32IU/リットル以下が正常値。飲酒量や頻度は変わらないのに、前年に比べて数値がぐんと下がった場合は、タンパク質やビタミンB群の不足、アミノ酸バランスの異常も考えられる。特にひと桁なら要注意
★ALP(アルカリフォスファターゼ)=ほとんどの臓器に含まれる亜鉛系の酵素。正常値は80〜260IU/リットル。これを越すと、脂肪肝や肝炎などの肝臓の病気や、胆石や胆管がんなどが疑われる。逆に100IU/リットル以下なら、亜鉛やマグネシウム、ビタミンA、タンパク質が不足。40IU/リットル以下なら前立腺肥大症の可能性も
★TB(総ビリルビン)=赤血球中のヘモグロビンが分離してできる黄色色素。正常値は1.2ミリグラム/デジリットル以下。増加の原因は、肝臓病や胆石など。ストレスで赤血球の膜が弱くなった場合も増える。前年より増加の場合は、正常の範囲内でも、ストレス解消法をみつけ、抗酸化ビタミン(A、C、E)などを補給する
★TC(総コレステロール)=細胞膜の構成成分で、ステロイドホルモンやビタミンDの材料になる。正常値は130〜220ミリグラム/デジリットル。多すぎると動脈硬化など生活習慣病の原因になるが、少なすぎても不安神経症の原因や更年期障害の誘因に。160ミリグラム/デジリットル以下なら、タンパク質不足による栄養障害、免疫力の低下の可能性
★TG(中性脂肪)=体内で余った糖質(エネルギー源)が脂肪に変化したもの。正常値は50〜150ミリグラム/デジリットルで、数値が高いと肥満や脂肪肝、動脈硬化の進行の原因になるため、ビタミンE、EPAなどを摂取。50ミリグラム/デジリットル以下の場合、タンパク質不足の可能性
★UA(尿酸)=食べ物や飲み物に含まれるプリン体が分解されるときにでるカス(終末代謝産物)で、痛風の目安。正常値は男性が3〜7ミリグラム/デジリットル、女性が2〜7ミリグラム/デジリットル。範囲内でも、変化が大きい場合は要注意。特に2ミリグラム/デジリットル以下なら、がんになる可能性が高くなる。抗酸化物資の摂取や良質なタンパク質の補給を
★Cr(クレアチニン)=腎機能障害の判定に用いられる。正常値は男性で0.65〜1.09ミリグラム/デジリットル、女性で0.46〜0.82ミリグラム/デジリットル。数値が高いと慢性腎炎、腎不全などが疑われる。クレアチニン産生は筋肉総量と比例し、低いとメタボリックシンドローム予備軍の可能性あり。運動に加え、良質のタンパク質を補給すること
※基準値は各検査施設で多少の違いがあります