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2008年05月03日 紙面より

コラボ本 好きな作家ばかり集めてみました

新井久幸さん

大型連休は読書の絶好の機会。まとまった時間がとれるこんなときこそ、重厚な小説や大型ノンフィクションを読みたいと思う大人世代も多いだろう。そこで今回は、「『ほんのインタビュー』ゴールデンウイーク特別版」として、中堅作家の力作が並ぶと話題の「ストーリー・セラー」はじめ編集者おすすめの本をご紹介。心を柔軟にしてくれる読書。人生経験豊かな大人だからこそ味わえる本の世界を楽しんでみては?

好きな作家の面白い作品だけを集めて本を作りたい−。こんなぜいたくな企画を実現した編集者がいる。新潮社の新井久幸さん(38)=写真=の手による「ストーリー・セラー」だ。本屋大賞1位を受賞した伊坂幸太郎、同2位の近藤史恵、有川浩さんら中堅作家たちによる書き下ろし小説を一冊に集めている。ペーパーバックスのようなしゃれた装丁の中には、魅力的な物語世界が広がっている。

表紙のコピーは「面白いお話、売ります」。新井さんによると、「小説には、実験的だったり前衛的だったりいろいろありますけど、やっぱり面白いことが基本だと思うんです。ストーリーテラーをもじったタイトルですが、実際に編集者の仕事は面白いお話を売ること。自分が読みたい、面白いお話を集めた本が作れればいいな、というのが動機ですね」。

原稿は、これまで編集者として付き合いのある作家たちに依頼した。

「なにしろ、得体の知れない企画ですから、見ず知らずの作家さんだったら断られちゃいますよ」(新井さん)というもくろみからだった。

これが見事的中。100枚前後の中篇ながら、長編並みの読み応えの作品がずらりと並び、「読んでくれた人に損はさせません」(新井さん)という自信作となった。

もともと本好き。京大卒業後、本人いわく「何をするのかよく分からなかったけど」出版社に入社。雑誌「新潮45」、ノンフィクション、文芸など幅広い分野を手がけてきた。

「この仕事についたおかげでスゴイ才能の人たちとつきあえた。しみじみ、自分は読み手側であって、書き手ではないと感じる」と自己分析する。

本来黒子のはずの編集者の顔がちらりと見え隠れする「ストーリー・セラー」。1年がかりで世に出したこの本を「目利きが選んだセレクトショップみたいな本です。読む側のプロである編集者自信のセレクトですから」。自信もちらり。

新潮社、780円。


★大手出版社現役編集者オススメの一冊

GIの勝ち方

◆ポスト・セブン編集局書籍企画室室長 山田義和氏

■「GIの勝ち方 サラブレッド金言108」(藤沢和雄著、小学館)

GWが明ければ春のGI戦線もさらにヒートアップするが、その強い味方になるのが本書。日本競馬の歴史を塗り替えてきた藤沢和雄調教師が、数々の名馬を育てたなかで確信するにいたった「強い馬」の条件がGIレースごとに挙げられているのだ。  たとえばオークス。藤沢師は、まず大前提として「この時期の3歳牝馬に2400メートルが適しているステイヤーなど1頭もいない」と指摘。桜花賞より距離が長いトライアルで鮮やかな勝ち方をした馬に対しては「強い馬が相手ではない」と釘を刺し、大切なのは「運動神経」で、「『距離適性』より『性格適性』」を見きわめよと説く。  開業20年で通算901勝、GI21勝を含む重賞79勝(07年末現在)の実績から導き出した言葉だけに重みがある。(840円)

食料植民地ニッポン

◆小学館「SAPIO」編集部 酒井裕玄氏

■「食料植民地ニッポン」(青沼陽一郎著、小学館)

毒入りギョーザ事件で輸入食品に不安を覚えた方は多いと思いますが、そもそも日本がどれほど食料を海外に委ねているか、ご存じでしょうか。  本書は、取材力と毒舌調に定評のある著者が、中国や米国の言いなりにならざるをえない「食料植民地」の悲惨な現実を突きつける刺激的なノンフィクションです。食料依存の現場を見るべく、中国の冷凍食品工場や農薬まみれの野菜畑、タイの広島風お好み焼き工場、チリの日本向けサケ養殖場、米国のBSE感染牛養育牧場と世界各国を飛び回り、国内でも、「メタボ」の原因が米国型食文化にあること、輸入食品の検疫体制が抜け穴だらけであることなどを突き止めます。「食の安全」を考える上で必読の一冊です。(1575円)

揺りかごの上で

◆角川書店第一編集部 高根澤元氏

■「揺りかごの上で」(大山尚利著、角川書店)

小学校生活最後の夏休み。辻貴雄は友達の横田と森の中で遊んでいた。そこに建てられた古い小屋で、赤ちゃんを見つける。2人は赤ちゃんをロビンと名付け、母親が戻ってくるまで、面倒をみることに。だが、いっこうに親は現れず、横田までも引っ越してしまう。  誰にも相談できない。信じられる大人もいない。貴雄は孤立無援の状態でロビンと名付けた赤ちゃんを育てようと決意する。これをきっかけに彼の転落人生が始まるが、読み終わったあと、かつてない静かな余韻と抑えきれない衝動があなたの胸にあふれる。今まで日本の小説にはなかったジャンルを超えた名品です。(1680円)

聖なる黒夜(上)

◆角川書店第一編集部 高根澤元氏

■「聖なる黒夜(上・下)」(柴田よしき著、角川文庫)

東日本連合会春日組大幹部の韮崎誠一が殺された。捜査を担当することになった警視庁の麻生龍太郎は、容疑をかけられた美しい男、山内練と10年ぶりに再会する。彼はもはや、麻生が知っていた気弱なインテリ青年ではなかった…。  この事件をきっかけに、幾つもの人々が抱えた慟哭、傲慢、悲痛な魂の叫びがひもとかれる。圧巻なのは麻生と山内のキャラクター造形、そして、禁断の愛憎劇だ。息をもつかせぬストーリー、幾重にも張られたミステリーの伏線、そして、人間の罪と罰を描き切った日本ミステリ小説史に燦然と輝く傑作です。(上860円、下780円)

となりのクレーマー

◆中央公論新社 新書ラクレ編集部部長 横手拓治氏

■「となりのクレーマー」(関根眞一著、中公新書ラクレ)

ささいなことに食ってかかる、どのような解決策を示しても「誠意が足りない!」−。  アメリカ流の自由競争社会が到来した現代、日本人はこれまで以上に「文句を言う」ようになってきました。「となりのクレーマー」がロングセラーを続け、25万部を突破したのも、こうした社会背景と無縁ではありません。強く主張しないと駄目−。そうした気持ちでいるとき、不利益を被ったと感じたり、むっとすることに出会うと、一部が暴走してクレーマーになるのです。  本書はクレーマー対処法を、多くの具体例を示しながら説いています。「ミステリー小説より面白い」と各誌紙で評された第一部「クレーマー物語」から、どうぞひもといてみてください。(756円)