春の到来を告げる春祭り 歴史と文化の「粋」を楽しむ

写真提供:高山市観光課
春祭りの季節が近づいてきた。例えば、4月14・15日の岐阜県高山市の「高山祭」は、飛騨の匠が競って造った豪華絢爛な屋台が静かに進み、その美しさは「日本三大美祭」の1つとされるほどだ。そのほか、1000年以上の歴史のある東京都府中市の「くらやみ祭」、奈良時代から続く日光二荒山神社の例祭を中心とした「日光弥生祭」なども見どころが多い。本格的な春の到来を告げる春祭りは、歴史と文化に彩られ、日本文化の粋が楽しめる。
◇
約400年の歴史を誇る「高山祭」は、京都市の「祇園祭」、埼玉県の「秩父夜祭」とともに、「日本三大美祭」に数えられるきらびやかな祭りだ。
「高山祭」には春の「山王祭」と秋の「八幡祭」があり、4月14、15日に行われる「山王祭」は日枝神社の例祭だ。

写真提供:高山市観光課
高山市観光課の直井哲治さんは「『高山祭』の魅力は屋台の装飾の美しさ。日中は、屋台は動かず、市内中心部の高山陣屋の向かいにある御旅所前広場や、神明町通り、本町通りなどに置かれます。間近で、豪華で非常に手がこんだ装飾をじっくりと見てください」。
12台ある屋台は、江戸時代などに造られたもので、国の重要有形文化財に指定されている。普段は屋台蔵に保存されており、祭りの期間だけ、外に引き出される。
祭りの当日、最大の見せ場は、御旅所前広場で行われる「三番叟」「石橋台」「龍神台」の3台のからくり屋台上=のからくり奉納。謡曲「浦島」に合わせて仕舞を演じたり、「英執着獅子(はなぶさしゅうちゃくしし)」の長唄に合わせて踊る美女人形が、突然、獅子頭に変わり獅子舞を披露、再び美女に戻ったり…。熟練の綱方が何本もの綱を操る見事な技に、観客がわく。生きているかのような人形の繊細で大胆な動きは圧巻だ。
また、14日の夜には、12台の屋台が連なって移動する「夜祭」が行われる。それぞれ約100個の提灯を灯した屋台は、昼とはまた違う幻想的な雰囲気が漂う。
「囃子歌を歌いながらゆっくり町を一巡、祭の終わりには、『たーかいやーまーかーらのたにそーこみーれーばーよー』という歌詞の曳き別れ歌『高い山』を歌って、それぞれの屋台蔵に帰る。『高山祭』は静かな祭り。しっとりした風情が味わえます」(同)。
この祭りの雰囲気がいつでも味わえるのが「高山祭屋台会館」だ。秋の「高山祭」の屋台が展示され、「11台ある屋台を年に3回入れ替えて、4台ずつ展示。贅を尽くし、職人たちが腕を競い合って造った屋台は、現代ではまず造れない飛騨の匠の技が生きた素晴らしいもの。間近で見てください」と同会館。
歴史と文化に彩られた春祭りは、各地にさまざまある(表)。春の到来を告げる祭りで、日本の四季の美しさを楽しむ旅もいい。
■ガイド
高山へは、JR東海ツアーズの「フリープラン高山『ホテルアソシア高山リゾート』」などが便利。新幹線とワイドビューひだ号でのJRの往復と「ホテルアソシア高山リゾート」(朝食付き)の宿泊付きの1泊2日の旅。料金は1人2万8400円〜。

【高山名物の朝市と「古い町並み」】
「採れたてやよ〜、味見してみんけナ」。
高山陣屋前広場と宮川沿い=写真右=の2カ所で毎日行われている朝市の光景だ。
江戸時代から続くこの市は米市や花市が始まりで、明治時代の中ごろから、近隣の農家の女性たちが野菜や漬物などを売るようになった。

野菜の横には地元独特のおもちゃ「さるぼぼ」=同左=も並ぶ。「さるぼぼ」とは、「サルの赤ん坊」の意味で、端切れで作った昔ながらのぬいぐるみ。町のあちこちにお守りがわりに飾られている。
一方、地元で「古い町並み」と呼ばれる上三之町などの商人町。出格子の連なる軒下に流れる用水、杉の葉を玉にした「酒ばやし」が下がる造り酒屋など、現在は国の伝統的建造物保存地区に指定されている。高山市観光課の直井哲治さんは、「町家の大戸や、老舗ののれんが連なる町並みは、江戸時代にタイムスリップしたような気分が味わえます」という。

【1000年以上の歴史がある府中の「くらやみ祭」】
4月30日〜5月6日に行われる「くらやみ祭」(東京都府中市)。1000年以上の歴史を誇る大國魂神社の例大祭で、深夜の暗闇の中で行われたことから、こう呼ばれるようになった。
府中市経済観光課観光係の佐伯富丈係長によると、「見ものは、5日の6張りの大太鼓による『太鼓の送り込み』と、8基のみこしが練り歩く『神輿渡御』です」。
日本最大級の大きさの「御先払太鼓」は、高さ3メートル14センチ、皮の直径が2メートル。その大太鼓と提灯の明かりに導かれて「オイサ、オイサ」の掛け声とともに練り歩くみこしは、「全国でもここのみこしより立派なものは見たことがない」(佐伯さん)という豪華さだ。ほかにも、けやき並木を6頭の馬が駆け抜ける「駒競式(こまくらべしき)」や、21台の山車が出る「山車の巡行」も実施。「期間中は境内などに約500もの露店が軒を連ねる。昔ながらの祭りの風情を味わってほしい」と佐伯係長は話す。
| ◆各地の主な春祭り◆ |
|---|
| ★日光弥生祭(栃木県日光市)/4月13〜17日/日光観光協会TEL0288・54・2496=1200年以上の歴史を持つ日光二荒山神社の例祭が中心。16・17日には、華やかな花家体(はなやたい)が、お囃子とともに日光地域の市街を練り歩く |
| ★鎌倉まつり(神奈川県鎌倉市)/4月13〜20日/鎌倉市観光協会TEL0467・23・3050=鶴岡八幡宮とその周辺で開催。静御前の舞を再現した「静(しずか)の舞」(13日)や「流鏑馬(やぶさめ)」(20日)などが行われ、毎年約30万人の観光客でにぎわう |
| ★人間将棋(山形県天童市)/4月19・20日/天童桜まつり実行委員会事務局TEL023・653・1680=約2000本の桜の花が咲く舞鶴山で開催。豊臣秀吉が桜が満開の伏見城で、小姓と腰元を将棋駒に見立てて、将棋野試合を楽しんだという故事にならったもの。華麗な戦国絵巻とプロ棋士による対局が一度に楽しめる |
| ★高岡御車山祭(富山県高岡市)/5月1日/高岡市商業観光課TEL0766・20・1301=豪華な7基の御車山(みくるまやま)が巡行する重要有形・無形民俗文化財。30日の宵祭では御車山をライトアップ |
| ★春の藤原まつり(岩手県平泉町)/5月1〜5日/平泉観光協会TEL0191・46・2110=奥州藤原氏四代の供養や重要無形民俗文化財の「延年の舞」など、源義経主従にまつわる行事を行う。義経が平泉にたどりついたとき、藤原秀衡が自ら馬に乗って出迎えたという情景を再現した総勢約100人の「源義経公東下り行列」が見もの |
| ★越中八尾曳山祭(富山県富山市)/5月3日/越中八尾観光協会TEL076・454・5138=江戸時代に始まった神事。富山藩の御納戸所として栄華を極めた町人文化の象徴。人形、彫刻、彫金、漆工、金箔など、美術工芸の粋を集めた6台の二層人形屋台は必見 |
| ★浅間大社流鏑馬祭(静岡県富士宮市)/5月4〜6日/富士宮市観光協会TEL0544・27・5240=約800年の歴史がある富士山本宮浅間大社の神事。5日には、鎌倉時代の武者姿に扮した約100人の行列が市内を練り歩く「流鏑馬練行」、勇壮かつ華麗な「流鏑馬」を奉納 |
| ★檜枝岐歌舞伎(福島県檜枝岐村)/5月12日/尾瀬檜枝岐温泉観光案内所TEL0241・75・2432=愛宕神祭礼奉納歌舞伎。260年以上の歴史があるといわれる、江戸時代から受け継がれてきた伝統芸能。鎮守神社の境内にある舞台は、国の重要文化財にも指定されている |

