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2008年03月08日 紙面より

見た目以外にも問題様々 40代以降でも遅くない歯列矯正

子どもが歯並びの悪さを直すためにやるもの、と思いがちな歯列矯正。ところが最近は、40歳前後の働き盛り世代で、歯列矯正を行う人が増えているという。実は、歯並びや咬み合わせの悪さは、見た目の問題だけではなく、歯周病や大人の虫歯の原因のひとつ。しっかりとものを噛むことができるバランスのとれた歯並びが、全身の健康状態にも関係するともいわれるのだ。最近は、矯正器具に透明で目立たないものも登場。歯並びが気になるあなた、歯列矯正を考えてみては?

食事のとき、左右いずれかの奥歯でものを噛むくせがある。唇を閉じるとあごに梅干しのようなシワがよる。そんなあなたは、歯周病や虫歯に悩まされていませんか?

日本臨床矯正歯科医会の副会長で、福増矯正歯科の福増一浩院長によると、前者は奥歯の咬み合わせが左右非対称。後者は、歯があごのアーチの中に収まらず唇に当たるのが原因だ。同院長は、「咬み合わせや歯並びの悪さは、虫歯や歯周病を招く。歯磨きによる歯垢(プラーク)の除去が難しいのが理由のひとつ。後ろの方の歯の周囲にプラークがたまり、これが原因で虫歯や歯周病になってしまう」という。

さらに、全部の歯を使ってきちんと噛めないと、「口の中の環境バランスを保ち、虫歯や歯周病の原因菌の繁殖を抑制する唾液の自浄作用の働きが悪くなる」(同院長)。また、片噛みが続くと、「歯がグラグラし、プラークがたまる歯周ポケットも大きくなる」(同院長)。その結果、さらに歯周病や虫歯になりやすくなるのだ。

歯周病は、糖尿病をはじめとする全身疾患を悪化させ、動脈硬化など心臓血管系疾患を助長するなど、全身の健康にもかかわる重大な病気。また、現代人の食事ごとの咀嚼回数は約600回あり、長年、同じ位置で噛んでいると、歯だけでなく、あごの関節や咀嚼のための筋肉にも負担がかかってくる。

「虫歯はまったくなくても、40代以降、歯周病が原因で歯がボロボロ抜けはじめたという人も少なくない。40〜50代がターニングポイント」と福増院長。同院長によると、「最近は、働き盛り世代の男性で、健康のためにと歯列矯正をする人も増えている」という。

歯列矯正の治療には、歯の表面に歯科用接着剤でブラケットという器具を貼りつけ、その溝にアーチワイヤーを通して歯を移動させる「マルチブラケット」を使用。ブラケットには、プラスチックやセラミックの、透明で目立たないものも登場している。治療期間は約2年で、「マルチブラケット」をつけたあとは、月に1度、調整のために歯科医院を訪れるのが基本。費用は、同院の場合は、初診料が3000円、診断料5万円。治療費が総額で60〜80万円、調整費が1回1000〜5000円だが、確定申告をすれば、医療費控除も受けられる。

「歯列矯正は何歳で始めても遅すぎるということはない。ただし、きちんと、日本臨床矯正歯科医会に所属する矯正歯科専門開業医に相談すること」と福増院長。

まずは歯並びと咬み合わせのチェック。あなたの歯は、大丈夫ですか?

【歯列矯正で歯が動く仕組み】

歯列矯正は、歯が歯槽骨(歯を支えている骨)の中で動く自然のメカニズムを利用した治療。歯と歯槽骨との間には、歯根膜というクッションのような組織がある。動かしたい歯に矯正装置をつけ、弱い力でこの歯根膜を圧迫すると、力が加わる方向に破骨細胞(骨を吸収する細胞)ができ、反対側の歯根膜に造骨細胞(骨を作る細胞)が生まれる。つまり、移動しようとする部分では骨が溶け、引っ張られた部分に骨ができて、少しずつ、歯が動くのだ。治療中の痛みは、炎症時に放出される物質のプロスタグランディンなどが原因だが、「最近は、形状記憶合金など弱い力を持続的にかけるアーチワイヤーが主流なので、痛みを感じないという人も多い」(福増院長)。

【理想的な歯並びとは?】

咬み合わせのよい、理想的な歯並びは、上下の前歯の間を結ぶ正中線が顔の中央に一直線になっているかどうかが基準。上の前歯が下の前歯を2ミリほど覆っていることも重要で、「歯は押されたり引っ張られたりという上下の力には強いが、横からの力に弱い。上の前歯を下の前歯が斜め下から常に押し上げているような歯並びの場合は、長年の影響で、歯並びがガタガタになってしまうこともある」(福増院長)。さらに、犬歯から奥の歯が上あごの歯1本に対して、下あごの歯2本の割合で咬み合った状態になっていれば理想的。逆に、顔を正面から見たとき、あごが左右のいずれかにずれていたり、横から見たときにあごが付き出ているなら、咬み合わせに問題があると考えられる。

■ふくまし・かずひろ

福増矯正歯科院長、日本臨床矯正歯科医会副会長、歯学博士。昭和60年、神奈川歯科大学卒業。東京歯科大学千葉病院矯正科を経て、平成2年、横浜・東白楽に福増矯正歯科を開業。日本矯正歯科学会認定医。アングル矯正学会(米国・南カリフォルニア支部)、アメリカ矯正歯科学会、顎変形症学会、日本歯科医師会などに所属。

◆咬み合わせと歯並びのチェックシート◆
★顔が左右非対称だ
★上下の歯の正中線(上下の前歯の間を結ぶ線)がずれている
★奥歯で噛んでイーッと口を開けたときに、上下の歯の間にすき間がある
★唇が閉じにくく、しっかりと閉じようとするとあごに梅干しのようなシワがよる
★下の歯が上の歯より前に出ている
★めん類が前歯で噛み切れない
★食事のときなどに関節がカクカク鳴る
★八重歯がある
★歯並びが全体にガタガタしている
★サ行やタ行がはっきりと発音できない
★歯と歯の間にすき間がある
★歯を自然に咬み合わせたとき、下の前歯がほとんど見えない
★唇が歯にひっかかることがある
※いずれかひとつでも該当する項目があれば、歯並びや咬み合わせに問題がある可能性が。矯正歯科専門開業医に相談しよう