グルメ・情報

2008年03月1日 紙面より

筋力アップでメタボ撃退!安静時代謝上昇で太らない体作り

「筋肉を鍛えれば、日常生活の中で消費するエネルギー量がぐんとアップ。太らない体を作ることができる」。こう断言するのは東京大学大学院総合文化研究科の石井直方教授だ。実は同教授は学者でありながら、ボディービルでアジア選手権優勝という経歴の持ち主。教授によると「運動量や食事量はかわらないのに太り始めるのは、安静時代謝の低下が原因」で、それを防ぐには筋力アップを、というわけだ。異色のドクターがすすめるやさしい筋トレでメタボにさよならしよう。

摂取エネルギー量よりも消費エネルギー量が少ないと太る。ここで見逃してはならないポイントがある。

「メタボリックシンドロームの解消には、食事制限やウオーキングも大切ですが、1つ抜けていることがある。糖や脂質を一番使っているのは筋肉。まずは筋肉を鍛えることが重要です」と東京大学大学院総合文化研究科の石井直方教授。

人間が消費するエネルギーには、運動時代謝と安静時代謝(別項)がある。1日のエネルギー代謝の3分の2を占めるのが安静時代謝で、「筋肉量が増えると、安静時代謝が上昇する。特別な運動をしなくても、消費エネルギーが増え、太らない体になります。筋肉が1キロ増えると、安静時代謝が上昇し、特に運動しなくても、1日当たりのエネルギー消費量が50〜60キロカロリー増加する」(同教授)という。

石井教授は、背骨と大腿骨をつなぐ大腰筋など、姿勢を保つためのコアマッスル(体幹の筋肉)を鍛えるとさらに代謝が上がるという。

その筋肉の鍛え方だが、なにも難しいトレーニングをする必要はない。石井教授おすすめの筋力トレーニングは表の通りのやさしいもの。

コツは「8〜15回行うのがやっという負荷を筋肉にかけて運動すること」。筋肉を緩めないでゆっくりと運動するスロートレーニングなら、自宅でも簡単にできる。筋肉を太く、強くするには週に3回程度行うのが基本。時間帯は、「これから1日の活動によってエネルギーを消費する午前中が理想的」だ。

さらに、ウオーキングなどの有酸素運動を行うなら、筋トレの後に行うと効果が高まる。というのも、「筋トレによって、脂肪の分解を促進し、代謝を高めるアドレナリンやノルアドレナリンの分泌量が増える。さらに、脂肪を分解する強い作用がある成長ホルモンの分泌も増加する」からだ。この成長ホルモンの働きは6〜8時間持続。特別な有酸素運動をしなくても、日常生活の中で、「駅や会社で階段を利用するように心がけるだけで、エネルギーの消費を増やし、脂肪の代謝を促すことができる」という。

まずは筋肉を鍛える。直接、脂肪を落とすことのない筋トレが、実は、メタボ撃退の近道なのだ。

安静時代謝とは

生命維持のための最低限の代謝(基礎代謝)と姿勢維持のための若干の筋肉の活動、交感神経の活動による熱産生などが加わったもの。通常、座った状態で測定する。安静時代謝が上昇すると、立つ、歩くなど、日常生活の中で消費されるエネルギー量全体が増える。

3カ月間筋トレを続けた実験では、安静時代謝量が1日当たり、平均で約45分間の早足のウオーキングを行うのと同等の100〜150キロカロリー増加。この安静時代謝が上がった状態で、約45分間のウオーキングを行うと、筋トレをしないでウオーキングだけを続けた場合の倍以上も体脂肪を落とせるという。

安静時代謝を上げるには、「加齢の影響を強く受ける、太ももやお尻の筋肉など、エネルギー消費量が多い、体の中の大きな筋肉の量を増やすのが手っ取り早い」と石井教授。

1日のゴロ寝で、筋肉は半年分老化する

筋力の老化は、30歳ごろから始まる。石井教授によると、「1年に1%ずつ筋力は落ちる。50歳なら、ピーク時よりも2割近く筋力が落ちている計算になります」。ただし、これは、適度な運動を続けていた人の場合。運動をしていないと、筋肉の衰えに拍車がかかる。例えば、「週末の1日、ゴロゴロと横になってテレビばかり見ていると、体幹部や太ももの筋力が落ちる。1日約0・5%。週末をゴロゴロと過ごしていたら、たった2日間で1年分も筋力が衰えてしまうんですよ」。その結果、安静時のエネルギー代謝量が減り、太りやすい体になってしまうのだ。

●◆安静時代謝を増やすためのスロートレーニング◆●
★ウオーミングアップ/リズミカルニーアップ(30〜50回)=背筋をのばし、大きく手を振り、下腹部を使ってその場で足ふみ。1回の足ふみは約1秒
STEP1/ニートゥチェスト(5〜10回×3セット)=できるだけ浅く腰かけ、息を吐きながら3〜5秒かけてひざを胸に引き寄せ、息を吸いながら3〜5秒かけてひざを伸ばす。筋肉を緩めないで繰り返す
  ★ストレッチ(15〜20秒)=腹筋を伸ばす
STEP2/スクワット(5〜10回×3セット)=息を吸いながら3〜5秒かけてひざをゆっくり曲げ、息を吐きながら3〜5秒かけてひざを伸ばす。ひざを伸ばしきらないで繰り返す
 ★ストレッチ(5回)=屈伸運動を行う
STEP3/プッシュアップ(5〜10回×3セット)=20〜30センチの台の上に両手を肩幅の1・5倍程度に開き、胸を軽く浮かせる。息を吐きながら3〜5秒かけてひじをゆっくり伸ばし、息を吸いながら3〜5秒かけてひじを曲げる運動を繰り返す。ひじは伸ばしきらないこと
 ★ストレッチ(5回)=ひじを後ろに引く
STEP4/アームレッグクロスレイズ(5〜10回×3セット)=息を吐きながら、3〜5秒かけて左手と右足をゆっくり上げ、息を吸いながら3〜5秒かけて左手と右足を下げる。手足を床につけないで繰り返し、1セットが終ったら、手と足を替えて行う
 ★ストレッチ(5回)=前屈運動を行う
※1セットごとにストレッチを行う。セット間の間隔は1分以内
※回数やセット数は、多少きついと感じる程度に調節する

■いしい・なおかた

東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系身体運動科学研究室教授。理学博士。昭和52年、東京大学理学部卒業。同57年、同大学院理学系研究科修了。平成11年より現職。専門は、身体運動科学、筋生理学。ボディービルディングで、昭和56年に日本選手権優勝・世界選手権3位、同57年アジア選手権優勝などの実績がある。テレビ、雑誌などで、エクササイズと筋肉の関係から、健康や老化防止について解説。「スロトレ」「一生太らない体のつくり方」など著書多数。