グルメ・情報

2008年02月15日 紙面より

倉敷で雛めぐり 素敵な町並みで桃の節句を祝う

江戸時代の豪商の邸宅・大橋家の「享保びな」は精緻な細工や美しい衣裳も一見の価値がある

児島地区の旧家・野崎家の別邸「たい暇堂(たいかどう)」の100畳敷き大広間には、地元の家庭で愛されたひな人形がずらりと並ぶ

雅びなひな人形がよく似合う白壁の蔵屋敷が続く倉敷美観地区

ひな祭りも近い。3月3日の本番を前に、ひな祭りにちなんだ催しが各地で開かれている。中でも注目は、白壁の土蔵が立ち並ぶ町並みで知られる岡山県倉敷市の「倉敷雛めぐり」。旧家、老舗商店から商店街まで、町のあちこちに、江戸時代の「享保びな」をはじめ備前焼や陶器、現代作家の手による木彫りのひな人形までさまざまなひな人形が飾られ、観光客でにぎわっている。華やかなひな人形を見ながら歩く早春の旅は、ひな祭りの新しい楽しみ方でもある。

江戸時代に幕府の天領として栄えた岡山県倉敷市。23日から3月9日まで同市で行われる「倉敷雛めぐり」は、旧家、商店街やギャラリー、旅館など、市内約600カ所に約1300体(セット)のひな人形が飾られるイベントだ。昨年は、全国から訪れた約12万4000人の観光客でにぎわったという。

その中でひときわ目をひくのは瀬戸大橋の本州側の起点でもある児島地区の「野崎家旧宅」(入場料500円)のひな人形だ。同旧宅は、江戸時代後期に広大な塩田の開発で「塩田王」と呼ばれた野崎武左衛門が約180年前に建てた屋敷。長屋門を入ると本瓦葺の母屋群があり、その脇に7棟のなまこ壁の土蔵が並ぶ国の重要文化財だ。

この中で、約200点のひな人形が飾られるのは「岡蔵」。明治23年ごろの建築で、焼き杉の腰板となまこ壁が時代を感じさせる。同旧宅の辻則之さんは、「中でも、江戸時代末期、岡山藩主から拝領した『享保びな』は、高さ約80センチと大きく保存状態もいい。全国でも珍しいすばらしいものです。ちょっとしゃがんで下の方から見ると、おひなさまが微笑んで見えるんですよ」と話す。

また、明治時代の「古今びな」は、そでが床まで広がるめずらしいひな人形。高さ約5センチの明治時代の小さな「芥子びな」は、享保年間以降、たびたび出された華美なおひなさまの禁止令から生まれた人形だ。このほか、通常は公開していない、明治29年建築の100畳敷きの宴会場「たい暇堂(たいかどう)」には、昭和30年ごろの、豪華な御殿の中にひな人形を飾る「御殿びな」をはじめ、地元の人たちのひな人形約25体(セット)が並ぶ。

一方、倉敷駅前の全長約500メートルの商店街にも約150体(セット)のひな人形が飾られる。

倉敷おかみさん会の料治元子会長は、「(ひな人形を飾っている)目印はピンク色の大きな提灯。江戸時代から今まで地元の人たちが大切にしてきたおひなさまばかり。おひなさまを見ていると、なごむような気持ちになる。幼いころの思い出も蘇ります。地元の人との会話を楽しみながらお人形の顔をゆっくり見てください」と話す。

戦災を免れた倉敷の町。ひな人形はそんな町の各家で大切に守られてきた。優しい表情の人形たちが飾られれば、春はすぐそこ。ひな人形を訪ねる旅は、やさしさと一足早い春が感じられる。

【現代作家のひな人形を手に入れる】

「倉敷はギャラリーが多い町。備前焼や陶器、ガラスなど、様々なひな人形を見て購入する楽しみもあります」と倉敷観光コンベンションビューローの平田春美さん。

そのひとつが、倉敷美観地区にある、全国の郷土玩具約1万点が並ぶ「日本郷土玩具館」だ。約200年前に建てられた蔵を改装した同館では「倉敷雛めぐり」の期間中、「ひいなまつり・陶雛五人展」を開催する。

大賀紀美子館長は、「岡山県赤磐市の山里で陶器作りをする、さかいゆきみさんら5人の作家の作品を展示・販売。“土”でできた素朴で個性的なおひなさまが勢ぞろいします」という。

猫をかたどった「ねこびな」や4センチほどの小さなひな人形、華やかな七段飾りまで約120点が並び、価格は1890円〜10万円程度だ。

【ひな祭り料理でおいしい寄り道】

イベント期間中は、市内の旅館、ホテル、飲食店で、オリジナルの「ひな膳」や「ひな祭りずし」が楽しめる。例えば、倉敷美観地区の料理旅館「鶴形」では、16日から3月30日(除外日あり)までの昼食に「お雛御膳」(5000円、要予約)を用意。約260年前、8代将軍吉宗の時代に建てられた旧家の座敷で食べる「ひな膳」は、風情もたっぷりだ。

また、美観地区から徒歩5分ほどの「蔵ぷぅ〜ら 和膳『風(ふう)』」では「雛御膳」(2300円)が味わえる。小さな箱入りのちらしずし、薄焼き卵で巻いた錦糸まきずし、タケノコの木の芽あえ、はまぐりのお吸い物と春を呼ぶひな尽くし。同店の森成司料理長は、「岡山県の郷土料理『祭りずし』をアレンジ。アナゴやままかりなどの地元の魚をのせています。お膳には桃の花をあしらうなど、目でもひな祭りの雰囲気が楽しめますよ」と話す。


【関東周辺でひな祭りを楽しむ】

23日から3月3日まで、千葉県勝浦市で開かれる「2008 かつうらビッグひな祭り」では、市内各所に2万5000体以上のひな人形が飾られる。同祭実行委員会によると「圧巻は、勝浦漁港の近くにある『遠見岬神社』の約60段の石段一面に、約1200体のひな人形が並ぶ姿」。夕暮れからはライトアップもある。

一方、静岡県東伊豆町の稲取温泉では、3月31日まで、「雛のつるし飾りまつり」を開催中。同町観光商工課によると、「女の子が誕生したときに、おばあさんやお母さんが、健康や幸せを願って、古い布でつるし飾りを作ったのが始まり」。

「雛の館『むかい庵』」など5カ所の会場のほか、町中が雛のつるし飾りで埋め尽くされ、「河津町の桜の開花とも重なり、毎年約20万人が訪れる」(同)人気だ。


【備前焼ひな人形をプレゼント】

約1000年の歴史を持つ岡山県の陶器、備前焼。釉薬を使わず土と炎から生み出されるその肌合いは、素朴で温かい。

備前焼のひな人形は、彩色などは一切されていない土の色が特徴。火の力によって描き出された朱の線が衣裳の“柄”となり、その模様は1体ずつ異なる。世界に同じ柄が2つとない“マイ・ひな人形”というわけだ。

この備前焼ひな人形を読者3人にプレゼントします。あて先は【応募要項】の「備前焼ひな人形」係。


◆「倉敷雛めぐり」の実施地域と見どころ◆
★倉敷地区=倉敷駅前や倉敷川畔の美観地区など。旧大原家別邸「新渓園」に、地元の人たちのひな人形約30体(セット)が集合。市中心部の商店街には約150体(セット)が飾られる。約10カ所のギャラリーでは陶器やガラスなどの手作りびなを展示・販売
★児島地区=市内南東部の瀬戸大橋の起点。「野崎家旧宅」所有の倉敷で最も古い「享保びな」は必見。同旧宅の「たい暇堂(たいかどう)」に約25体(セット)のひな人形が並ぶほか、商店街に、約300体(セット)のひな人形が飾られる
★真備・船穂地区=市内北部の山間の地域。「マービーふれあいセンター」には、竹の産地・真備ならではの竹製のひな人形などが登場。スイートピーの名産地・船穂の「船穂公民館」では、ひな人形の周囲をスイートピーで飾る。ひなあられやスイートピーの無料配布なども
★玉島地区=市内南西部の良寛和尚ゆかりの港町。玉島港周辺の商店街や玉島町並み保存地区などに、約200体(セット)を展示。3月1日には、「備中玉島港 築港350年 玉島港宵灯り」を開催。港の周辺に1000個の行灯が灯される
★水島地区=市内南部の産業観光が盛んな地域。商店街に約200体(セット)のひな人形が飾られるほか、交流施設「水島サロン」には、幼稚園児たちの手作りびなが登場する