飛散前から薬を服用し症状を抑える…早めの花粉症対策
花粉症シーズンが間近に迫ってきた。東京の予測飛散開始日は2月5〜7日。今年は、昨年夏の猛暑、11〜12月に寒波に襲われたことから、昨年の1.5〜3倍の花粉が飛散するといわれている。しかも、短期間で花粉が急増、症状が重症化する期間が長く続く恐れがあるので、例年以上に注意が必要だ。花粉症対策には、飛散開始の1週間前から薬の服用を始めることが重要。早期治療でうっとおしい時期を乗り切ろう。
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花粉症対策には、花粉飛散の開始1週間前からの薬の服用が有効。2月5〜7日に花粉の飛散開始が予測される東京の場合、「来週前半に薬の服用を始めると、症状がでるのが遅くなる。シーズン中の症状が軽くなってがまんしたりイライラすることも減る。花粉飛散の最盛期も過ごしやすくなりますよ」とアクティ大阪耳鼻咽喉科医院(大阪・梅田)の大橋淑宏医師は断言する。
その理由は、花粉症そのもののメカニズムにある。花粉症は、スギなどの花粉に含まれる成分(抗原)を異物と認識し、排除するために体内でIgE抗体が作られるのが原因。この抗体が鼻や目の粘膜にある肥満細胞と結合し、ヒスタミンなどの化学伝達物質を放出。「これが知覚神経や血管壁にある受容体と結びつき、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状がでます」(同)。
このとき、肥満細胞と結合した抗体の数が多いほど、ヒスタミンの放出に拍車がかかる。ヒスタミンが常に刺激することで受容体が活性化し、症状がどんどん悪化する。
花粉の飛散前に、受容体にフタをしてヒスタミンの結合を阻害する抗ヒスタミン薬の服用を始めれば、この受容体の活性化が抑えられるのだ。
ただし注意点がある。同医師は、「薬局などで市販されている古いタイプの抗ヒスタミン薬では予防効果はありません。医師が処方する第2世代の抗ヒスタミン薬の服用が必要です」という。
一般に眠気が強い薬ほど効果が高いと考えがちだが、「眠気と効果はまったく関係ない。逆に眠気を起こさない薬のほうが効果が高いという研究結果を得ています」(同)。気づかないうちに判断力などが下がるインペアード・パフォーマンス(別項)を避けるためにも、「非鎮静性の抗ヒスタミン薬の服用がおすすめ」(同)だ。
症状が出始めたら、これに加えてステロイド点鼻薬などを症状に合わせて使用する。花粉の飛散前に医療機関を受診できなかった場合でも、「重症化すると薬が効きにくくなるので、なるべく早く受診すること。市販の薬は緊急避難用と考えてください」と同医師は注意を促す。
薬の服用に加えて、生活の中での花粉症対策(別表)も症状軽減には役立つ。中でも効果が高いのがマスクとメガネで、大橋医師によると、「ふつうのメガネでも、目に入る花粉の量を約9割減らすことができる」という。
【インペアード・パフォーマンスとは】
多くの花粉症の治療薬(抗ヒスタミン薬)は、服用すると眠くなるといわれている。
東北大学大学院医学系研究科機能薬理学分野の谷内一彦教授は、「眠くなるのはまだまし。問題は、気がつかないうちに活動や反応が低下することです」と話す。
というのも、抗ヒスタミン薬の中には、鼻など症状がでる場所だけでなく、脳内で作用し、集中力や判断力、作業能率を高める脳の中でのヒスタミンの働きを阻害してしまうものがあるからだ。
これがインペアード・パフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)だ。ウイスキーをシングルで3杯飲んだときと同じ状態になるため、眠たくならないからといって車の運転をするのは厳禁だ。
「薬局などで市販されている鎮静性の抗ヒスタミン薬は、確実にインペアード・パフォーマンスが起こる。これを防ぐには、非鎮静性ヒスタミン薬を医師に処方してもらうとよい」(同教授)という。
【花粉症の免疫療法】
花粉症と決別したいと願うなら、「5月のゴールデンウイーク明けごろから、免疫療法を始めるのがおすすめ」と大橋医師。スギ花粉のエキスを皮下注射し、体の免疫機構にスギ花粉が悪玉物質ではないと認識させる治療法だ。改善率は95%。治療を受けた人の3分の1以上が根治するというが、「治療期間が5年と長く、根気が必要です」(同)という。
治療は最初の半年〜1年は週に1回、その後は1カ月に1回、注射を受ける。花粉症患者であれば健康保険が適用され、実際に支払う治療代は1回200〜300円程度。1〜2年で症状の軽減や薬を使わなくて済むようになるなど、効果が実感できるが、「途中でやめたら、また症状が悪化する。続けることが重要です」(同)。
■おおはし・よしひろ
アクティ大阪耳鼻咽喉科医院医師、医学博士。昭和54年、大阪市立大学医学部卒。58年、同大学院医学研究科博士課程修了。米国オハイオ州立大学留学を経て、平成5年、大阪市立大学医学部耳鼻咽喉科学教室助教授。14年、医療法人藤井会石切生喜病院耳鼻咽喉科部長。15年、同病院副院長。18年から現職。耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会幹事・評議員、日本アレルギー学会代議員。
| ◆各地の予測飛散開始時期と飛散量◆ |
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| ★東北地方=南部は3月上旬、北部は3月中旬〜下旬。飛散量は平年(過去10年間の平均)の1.3倍程度で、昨年の約1.5倍。総飛散量は、全域で罹患者の多くが発症する1平方センチ当たり1000個以上をはるかに超す、1平方センチ当たり2000個以上。福島県いわき市では、昨年の2.5倍以上の1平方センチ当たり1万1000個以上の可能性がある |
| ★関東・甲信越地方=関東北部は2月下旬、関東南部は2月上旬。東京の飛散開始は2月5〜7日の予測。新潟県は3月上旬。長野県北部・中部は2月下旬、山梨県・長野県南部は2月上旬〜中旬。東京では、昨年の2倍以上の花粉が飛散。埼玉県や山梨県では、昨年の3倍を超える飛散量が予測されている。総飛散量は、全域で1平方センチ当たり2000個以上と多く、中でも、埼玉県坂戸市や神奈川県南足柄市では約1万個飛散。都市部は、道路などに落ちた花粉が再飛散し、症状を悪化させる恐れがある |
| ★東海・北陸地方=北陸地方北部は3月上旬、北陸地方南部は2月下旬、東海地方は2月上旬〜中旬。伊豆半島は今月末に飛散。平年や昨年より飛散量は少ない、またはやや多い程度だが、ほぼ全域で1平方センチ当たり2000個以上の総飛散量になると予測されている |
| ★近畿地方=南部は2月上旬〜中旬、北部は2月下旬。大阪の飛散開始は2月14日前後の予測。和歌山市や兵庫県西宮市など一部を除き、平年や昨年より飛散量は少ない |
| ★中国・四国地方=四国南部は2月上旬、瀬戸内海地域は2月中旬、日本海側は2月下旬。昨年より飛散量は少ない地域がほとんど |
| ★九州地方=西部は2月上旬、その他の地域は2月中旬。平年や昨年より飛散量は少ない |
| ◆生活の中での花粉対策◆ |
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| ★コンタクトレンズよりメガネを=コンタクトレンズは目に入った花粉によって眼障害を起こす危険性がある。ふつうのメガネでも高い効果が期待できる |
| ★マスクをする=外出時は必ず着用。マスクの中に湿らせたガーゼを挟むと効果が高い |
| ★布団や洗濯物を外に干さない=布団に付着した花粉で睡眠中に症状が悪化する。外に干した洗濯物は取り込むとき花粉を払い落す |
| ★室内の湿度を50〜55%に保つ=花粉が湿気を含んで舞いあがりにくくなる。湿気には鼻の粘膜を守る効果もある |
| ★都心部ではお昼前後と日没ごろの換気は避ける=スギ林から都心部に花粉が飛んでくるのに数時間かかるため、お昼前後は花粉が飛びやすくなる。気温が下がり始める日没前後も、上空の花粉が地上に舞い降りてくるため、注意が必要 |
| ★花粉が付着しにくい衣類を着用=表面がつるりとした素材を選ぶ。セーターは編み目に花粉が付着するので避けた方が無難。外出から帰ったら、玄関に入る前に花粉を払い落す習慣をつける |
| ★十分な睡眠=よい睡眠はアレルギーを抑制する副腎皮質ホルモンの分泌を高める。寝る直前にパソコンを使用すると入眠直後の睡眠が浅くなり、明け方に深い眠りになるため、副腎皮質ホルモンの分泌が減少する原因になる |
| ★旬の青魚や緑黄色野菜などを積極的にとる=EPAやDHAが豊富な青魚はアレルギーを引き起こす原因物質の産生を低下。ビタミンA・C・Eが豊富な緑黄色野菜やゴマやオリーブ油、緑茶やソバなどポリフェノールを多く含む食材は、IgE抗体の産生を抑制する |

