長引くせき、気管支炎や肺炎などの呼吸器疾患疑え

冬は、せきを伴う病気が増える季節。せきがでると、まず、かぜを疑うが、安易な自己判断は禁物だ。せきの原因は、かぜやインフルエンザだけではない。気管支炎や肺炎、たばこが原因のCOPD、結核、肺がんなど、せきの陰には、さまざまな病気が隠れている危険性があるのだ。たかがせきと侮っていると、重大な病気を見落とし、命にかかわることもある。せきの原因を知り、早めの治療につなげることが大切だ。
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せきが出るのはかぜと考えがちだが、実は、せきにはさまざまな原因となる疾患がある(表)。
埼玉医科大学呼吸器内科の金澤實教授は、「思い込みによる自己判断は禁物。とくに、2週間以上せきが続く場合は、医師による診断を受けることが大切」と警告する。
せきは、気道に侵入したほこりや病原体といった異物を排除し、体を守る防御機構の1つ。長引くせきや、たんを伴うせきは、「呼吸器に問題が生じたというメッセージ」(同教授)なのだ。
この季節に増えるかぜやインフルエンザによると思われるせきも、別の病気である可能性もある。かぜが原因のせきの場合、37・5度程度の熱がでて、のどの痛みや鼻づまりなどを伴い、4日から1週間で症状が治まるのが特徴。インフルエンザ(別項)なら、先に38・5度以上の高熱がでて、その後、せきや鼻水といった症状が4日ほど続く。
「もし、かぜやインフルエンザで10日以上せきが止まらないなら、急性気管支炎や肺炎など二次感染を起こしている可能性がある」(同教授)
激しいせきや黄色いたんが多くでるようになったら、急性気管支炎を起こしている恐れがある。
さらに「熱が下がらず、胸痛や息苦しさを伴う場合は、肺炎を併発している危険性がある。早急に医師の診断を受けてください」(同教授)。
こうしたせきの原因をつきとめないで市販のせき止め薬などでせきを止めるのは危険。同教授は「重大な病気が隠れていないか、せきの原因を探ることが重要」と話す。
このほか、2週間以上もせきが続く病気には、結核やせきぜんそく、肺がんなどがある。男性に多く死亡率が高い肺がんは、「初期には症状がないことが多く、唯一のメッセージがせき」(同教授)なので、中高年世代でせきが長く続いているなら、医療機関でレントゲンを撮ることががんの早期発見につながる。
また、喫煙者の長引くせきにも注意が必要だ。かぜやインフルエンザによって慢性の気管支炎になったり、「たばこが原因で肺胞が壊れる病気のCOPD(別項)が悪化することが多い」(同教授)ためだ。
冬は、寒さと乾燥からせきの頻度が高くなる季節。たかがせきと考えていると、命にかかわる病気を見落とすこともある。せきが続いたら、かぜだと安易に考えず、原因疾患をきちんと探ることが大切だ。
【インフルエンザを予防する】
12月下旬から2月末にかけて増えるインフルエンザ。予防には、「12月中旬までにワクチンの注射をするのが一番。健康な人なら1回の接種でいい。1〜2週間後には、効果がでてきます」。
特に、40〜50代の喫煙者は、インフルエンザへの罹患が肺炎などのきっかけとなるため、必ず予防接種を受けること。規則正しい食事や節酒、禁煙、軽い運動など生活習慣の改善は免疫力を高め、インフルエンザの予防に役立つ。流行している期間は、人ごみを避け、加湿器などを利用して室内の極度の乾燥を防ぐなどの工夫も大切だ。
ちなみに、インフルエンザからの合併症として多いのは、肺炎球菌の感染による肺炎。「高齢者の場合、この肺炎への感染が命にかかわることもある。65歳以上なら、肺炎球菌への感染を予防するワクチンを接種してください」(同教授)。
【たんの色で病気の種類を知る】
たんは、気道の壁の中の気管分泌腺や気管支分泌腺で作られる粘液。肺胞や肺病変の内容物、咽頭、鼻腔、口腔からの分泌物など、さまざまなものが溶けこんでいる。「無色や透明のサラサラしたものならさほど問題はありませんが、膿状のたんや血たんが出る場合は注意が必要。かぜ以外の病気の可能性があります」(金澤教授)。
たとえば、黄緑色のたんは、気道への細菌の繁殖が原因。無色や透明でもネバネバしたたんは、気管支炎の可能性がある。また、サビ色をしたたんは肺炎の恐れがあり、血が点や筋のように混じるときは、結核や肺がんなどの場合があるので注意が必要だ。
【冬に増えるCOPDのせき】
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、「肺の生活習慣病」。息の通り道となる気道(気管支)に障害が起こり、ゆっくりと呼吸機能が低下する病気で、これまで、慢性気管支炎や肺気腫などと呼ばれた病変が含まれる。
主な原因はタバコに含まれるニコチンやタールなどの有害物質。これらを吸い込み続けることで、肺に常に炎症状態が続き、加齢によってただでさえ進む呼吸機能が激しく低下。放置すれば肺胞が破壊され、呼吸不全を起こす。
「初期症状はせきやたん。かぜをひくと一気に呼吸機能が低下する危険性があります。50歳以上の喫煙者で、階段の上り下りなどで同世代の人に比べて息切れしやすいなら、たんなるせきや加齢による息切れと考えず、きちんと検査を受けてください」と金澤教授。
壊れた肺組織は元へは戻せないが、早期に治療を開始すると、呼吸機能の低下が食い止められ、健康な人と変わらない生活を送ることが可能だ。
| ◆せきを伴う病気あれこれ◆ |
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| ★かぜ=急性の上気道の感染症の総称。のどの腫れや痛みなどの咽頭症状、鼻閉・鼻痛などの鼻症状、せきなどの気管支症状が特徴で、冬が流行シーズン。37.5度程度の微熱がでるが、4日から1週間で症状は治まる。こじらせると気管支炎、肺炎などの二次感染を起こす。10日〜2週間、せきが続く場合は他の病気を疑ったほうがよい |
| ★気管支炎=せきやたんが主症状。急性気管支炎はかぜなどの上気道炎に引き続いて起こり、軽度の発熱、頭重感、倦怠感などを併発することも多い。慢性気管支炎は気管支に慢性的な炎症があり、せきとたんが2年以上続く。男性に多く冬場に増悪。喫煙者は注意が必要 |
| ★インフルエンザ=例年、12月下旬ごろから2月末ごろまで流行。38.5度以上の突然の高熱が出たあと、せきや咽頭痛、鼻水などの上気道炎の症状と関節痛や筋肉痛などの全身症状がでる。熱は4日ほどで下がり、せきもそれに準じて治まる |
| ★COPD(慢性閉塞性肺疾患)=冬はかぜなどの気道感染症によって悪化しやすい。50代以上の喫煙者で、せきが長く続き、階段の上り下りの途中で休憩が必要になるなど運動後に息苦しさがある場合は要注意。進行すると呼吸困難に陥り、酸素吸入器が手放せなくなる |
| ★胃食道逆流症=食事をしてすぐ横になると、胃の内容物が食道に逆流。これが喉頭・咽頭を刺激してせきこむ。せきに加え、胸やけやげっぷなどがある場合は、この病気の疑いが濃い |
| ★肺炎=細菌やウイルスなどによって肺胞腔内に炎症が起こる。38度以上の高熱がでるとともに、せきと胸痛、鉄サビ色の血たんや黄色の膿性たん、呼吸困難など、強い呼吸器症状を伴う。日に日に症状が悪化、胸痛が強い場合は一刻も早く医療機関を受診すること |
| ★せきぜんそく=夜間に床に入り、体が温まるとしつこいせきの発作が起こる。ぜいぜいと息が苦しくなることは少ない。2カ月以上続く頑固なせきには注意が必要 |
| ★心臓ぜんそく=高血圧や心筋梗塞などから心不全を起こし、ぜいぜいしたり、呼吸困難、せきがでる。特に、高齢者でせきがでて、胸苦しさを感じる場合は要注意 |
| ★アトピーせき=アトピーなどアレルギーが原因で起こるせき。夜間にせきの発作が起こり、息苦しさを感じる。2カ月以上続く |
| ★結核=結核菌による感染症。初期はほとんど自覚症状がないが、少し症状が進行すると全身の倦怠感、せきやたん、37度程度の微熱が長期間続くようになる |
| ★肺がん=40代以上の喫煙者は要注意。男性のがんの中で最も罹患率が高く、死亡率も高い。初期は無症状のことも多いので、2週間以上せきが続いたら、医療機関でレントゲンを。進行すると血たんがでる、背中や胸が痛む、息苦しいなどの症状を併発する |

