グルメ・情報

2007年10月13日 紙面より

ストレスが大敵!過敏性腸症候群 生活習慣変えて快腸

安倍晋三前首相の辞任の大きな要因となった疾患「機能性胃腸障害」。その「機能性胃腸障害」のひとつで、ストレス社会を背景に増え続ける「過敏性腸症候群」は、実は、下痢が続くなどの症状が日常生活に支障をきたす度合いから、「糖尿病より生活の質が低下する」といわれている。単なる下痢と軽視して、市販の止瀉薬などで自己治療をする人が多いが、安易な自己判断は、症状を悪化させる大きな要因。きちんとした治療を行って、腸の健康を守ろう。

電車の中でおなかが痛くなり、慌てて途中下車してトイレに駆け込んだ経験は誰しもあるはず。それが度々続いたら…。

消化器疾患に詳しい元東京慈恵会医科大学医学部内科学講座助教授の、鳥居内科クリニック(東京・成城)鳥居明院長は、「『過敏性腸症候群』は、大腸や小腸に、がんや潰瘍(かいよう)といった疾患がないにもかかわらず、腹痛や腹部の不快感があり、下痢や便秘を慢性的に繰り返す病気」と説明する。女性には便秘型が、男性には下痢型が多い。「下痢を起こすのが怖くて各駅停車にしか乗れないという人も少なくない」という。

放置していても、命にかかわることはないが、「通勤電車や会議中などに症状がでたらどうしようと強い不安が仕事に悪影響を及ぼす」(同院長)。なんと、受診中の患者の約43%が、下痢症状が原因で欠勤したことがあるという。さらに、「症状への不安感や不快感がストレスになり、抑うつ症状になる。その結果、症状が悪化するという悪循環が起こる」。パニック症候群などを併発することもあるから、たかが下痢と侮れない。

「過敏性腸症候群」の一番の原因はストレス。「脳と腸は非常に密接な関係がある。脳がストレスを感じると、自律神経のバランスが崩れ、腸の運動機能に異常をきたす」と鳥居院長。腸の動きが過剰になってけいれんしたり、腸の感覚が過敏になってわずかな刺激に反応し、腹痛や便通異常が起こるのだ。

この病気にかかりやすいのは、「ストレスを受けやすく、完璧を目指す人。きちんとしないと気がすまない人」と同院長。過労や睡眠不足、不規則な食生活、運動不足なども影響する。

治療には、「ロペミン」などの強力な下痢止めの処方薬を使うのが基本。精神的な影響が強いため、薬を持ち歩いているだけで安心して、下痢をしなくなった人も少なくない。また、ポリカルボフィルカルシウムという薬で、4〜8週間かけて、便の水分量を調節。さらに、「ストレスに対応できるよう、認知行動療法や自律神経訓練法なども行います」(同院長)。

自分でできる対策は、別表の通り。鳥居院長のおすすめは、「ゆっくり鼻で息を吸い、ゆっくり口から吐く、腹式呼吸による自律神経の訓練」だ。へそを膨らませて息をするのがコツで、「トイレが近くにない時に、腹式呼吸をしてみてください。痛みもとれ、症状が緩和されます」。

市販の下痢止めは、「他の重大な病気が隠れていることがあるので、あくまで緊急避難用」(同院長)。気になる症状があったら、がまんせず、専門医の治療を受けることが大切だ。

【ストレスがもたらすもうひとつの「機能性胃腸障害」】

「機能性胃腸障害」には、「過敏性腸症候群」のほかに、安倍前首相が罹患したといわれる「機能性胃腸症」がある。鳥居院長によると、「下腹部に症状がでるのが『過敏性腸症候群』で、上腹部に症状がでるのが、『機能性胃腸症』」。もたれ感やぼうまん感を伴い、食欲不振、むかつき、胸やけが起こる。胃のあたりがキリキリと痛むことも少なくない。ただし、胃には器質的な障害はなく、「症状は違うが、ストレスが原因であること、そのストレスによって胃腸の働きが障害されるといった病態も『過敏性腸症候群』と同じ」(同院長)という。治療には、胃酸を抑える薬などを使用。同時に、ストレスに対応できるよう、認知行動療法や自律神経の訓練なども行う。

【過敏性腸症候群と間違えられやすい病気】

腹痛や腹部不快感、下痢、便秘などが、「過敏性腸症候群」の特徴的な症状だが、ほかの病気が原因で起こっている可能性もある。鳥居院長によると、「症状が似ているのは、大腸ポリープや大腸がん、食中毒などの病原菌性大腸炎、かいよう性大腸炎など」。発熱や血便、体重の減少などを伴っている場合は特に注意が必要だ。「こうした病気を早期治療するためにも、専門医を受診して、きちんと確定診断してもらうことが大切」と同院長。特に、突然、激痛を伴う水っぽい下痢を起こした場合は、「病原性大腸菌やブドウ球菌、ノロウイルスなどに感染している場合がある。市販の止瀉薬を使って下痢を止めると、病原菌が体内から排出されないので危険です」(同院長)。

◆「過敏性腸症候群」を予防する生活習慣◆
★完璧を目指さず、75点でよしとする余裕をもつ
★日頃から腹式呼吸を練習し、自律神経の働きをアップ
★1日30分のウオーキングで腸管運動をよくする
★栄養バランスのよい食事を腹8分目にとる
★朝・昼・晩、規則正しく食事をする
★下痢タイプの人は、冷たいもの、脂っこいものは避ける
★なるべく午前0時までに寝るようにする
★休みの日もふだんより1時間遅く起きる程度にとどめる
★気分転換ができるような趣味を持つ
★オン・オフの切り替えをきちんとし、休日は、なるべく仕事を持ち帰らない