グルメ・情報

2007年10月05日 紙面より

世界文化賞受賞者の建築美を都心で満喫しよう!

プラダ・ブティック青山店

ヘルツォーク氏&ド・ムーロン氏の代表作「プラダ・ブティック青山店」は、夜になるとさらに輝きを増す

16日に東京・元赤坂の明治記念館で表彰式が行われる「高松宮殿下記念世界文化賞」。世界的に優れた芸術家に贈られる同賞は、“芸術のノーベル賞”といわれ、第19回の今回は、北京五輪メーンスタジアムを設計したジャック・ヘルツォーク氏(57)とピエール・ド・ムーロン氏(57)=スイス=が建築部門を受賞した。実は両氏は、東京・青山の「プラダ・ブティック青山店」の設計も担当。日本国内には、彼らをはじめ、歴代の受賞者たちによる素晴らしい建築物や作品が多い。芸術の秋。都心で建築散歩としゃれこんでみてはいかが。

世界的な建築家の作品が並ぶ東京の表参道・青山エリア。その中で、ひときわ目を引くのが、全面ガラス張りの彫刻のような「プラダ・ブティック青山店」だ。光線の具合、平面、凸面、凹面のガラスを通して見る風景や内部にいる人の動きによって、表情が瞬時に変わり、夜になると、神秘的な美しさをたたえる。

同店は、今年の世界文化賞建築部門受賞者、ヘルツォーク氏とド・ムーロン氏の作品。「鳥の巣」の異名を持ち、来年の北京五輪開幕に向け急ピッチで建築が進む同五輪メーンスタジアムのほか、ドイツのW杯競技場「アリアンツ・アレーナ」など、世界各地で巨大プロジェクトを成功させてきた両氏が、素材と壁面の質感の表現にこだわって2003年に完成した。

21−21 DESIGN SIGHT

人気の東京ミッドタウン内にあるアートスペース「21−21 DESIGN SIGHT」も安藤忠雄氏の設計

建築を中心に新しいライフスタイルを提案する月刊誌「カーサ ブルータス」(マガジンハウス)の吉家千絵子編集長は、「圧倒的な存在感があり、特に夜の美しさは格別。外観だけでなく、試着室など、内部にも見るべきポイントは多い」と絶賛する。

同編集長は、「東京は、欧州などに比べ、建築に関する法規制が緩いため、自由度が高く、新しく大型の建物を作りやすい。特に、表参道・青山エリアは、街全体が建築作品のミュージアムのようになっている」という。

昨年オープンした「表参道ヒルズ」も、1996年に世界文化賞を受賞した安藤忠雄氏の作品。「ハナエ・モリビル」は、93年受賞の丹下健三氏設計だ。「表参道は、けやき並木を意識した建物が多い。各建築家が個性を競いながら、一定の調和を見せているのが魅力です」(同編集長)。

ファナティックス

25のポルティコ−色彩と反映

お台場のダニエル・ビュレン氏作「25のポルティコ−色彩と反映」

東京には、ほかにも95年受賞者のレンゾ・ピアノ氏が設計した「メゾンエルメス銀座店」や、今春、六本木にオープンした東京ミッドタウン内のアートスペース「2121デザインサイト」(安藤忠雄氏設計)などもある。また、東京ミッドタウンのガーデンコートにあるステンレスの彫刻「ファナティックス」は、今年の彫刻部門受賞者、トニー・クラッグ氏の作品=写真右(撮影・Hirofumi Tani)。楕円形とその断面からなる幾何学模様をベースにしており、よく見ると人間の横顔が隠れている。

“芸術のノーベル賞”といわれ、海外でも評価の高い世界文化賞。同賞を主催する日本美術協会の野津修敏事務局長は、「都心の建物や街中のパブリックアートの中には、こうした世界が認めた人たちの作品もたくさんあります。芸術を身近に感じ、楽しんでいただきたいですね」と話す。

風がさわやかな季節。都心の世界的な作品を訪ねて、芸術の秋を満喫してみませんか。

■世界文化賞

58年間にわたって財団法人日本美術協会の総裁を務められてきた故高松宮殿下のご遺志を継ぎ、また協会創立100周年の記念事業として昭和63年に創設。国際顧問が主宰する各専門家委員会から推薦された絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門の候補者を日本の選考委員会で検討し、理事会で決定する。同協会総裁は常陸宮殿下。第19回の今年の受賞者は、建築部門がジャック・ヘルツォーク氏&ピエール・ド・ムーロン氏(スイス)、彫刻部門はトニー・クラッグ氏(英国)、音楽部門はダニエル・バレンボイム氏(イスラエル)、絵画部門はダニエル・ビュレン氏(フランス)、演劇・映像部門はエレン・スチュワート氏(米国)の各氏。

【東京湾ウオーターフロントでアートを楽しむ】

お台場をはじめとする臨海副都心や葛西地区でも、世界文化賞受賞者の作品を目にすることができる。例えば、宙に浮いたような球体が目印のフジテレビ本社ビルは、1993年に建築部門を受賞した丹下健三氏の作品。また、ゆりかもめのお台場海浜公園駅北口からデックス東京ビーチ方面に歩くと、すぐ右手に見える連続するシマシマの門は、今年、絵画部門を受賞したダニエル・ビュレン氏の「25のポルティコ−色彩と反映」だ。

一方、葛西臨海公園にある葛西臨海水族園は、2005年建築部門受賞の谷口吉生氏設計。東京湾に浮かぶように建てられた巨大なガラス張りのドームは、周囲の海景色に調和して美しい。

【CDで味わうバレンボイム】

今年の音楽部門受賞者、ダニエル・バレンボイム氏はイスラエルが生んだ世界的なピアニスト兼指揮者で来日中。新星堂(東京都杉並区)商品部MD統括グループ・クラシックバイヤーの千葉広克さんは、「個性的でロマンティックかつ情熱的な演奏が特長。今、これだけのオーケストラの大曲を振れる指揮者はほかにいない」と話す。公演チケットは残りわずかだが、CDでも演奏のすばらしさは味わえる。千葉さんのおすすめは、「ワーグナー:管弦楽曲集」(ワーナーミュージック・ジャパン、1050円)。「ワーグナー解釈の第一人者の魅力がつまった有名な楽曲を網羅。オペラの全曲集よりも聴きやすく、はじめてバレンボイムを聴くという人にもおすすめ」。

◆身近で楽しめる主な世界文化賞受賞者の作品◆
★東京国立博物館 法隆寺宝物館(東京・上野)/谷口吉生氏(2005年、建築部門)=「ニューヨーク近代美術館」(MoMA)を手かげ、美術館建築でも高い評価を受ける谷口氏の作品。軽快なコンクリートの箱にタテ格子のガラスの箱を収めたようなデザイン
★センチュリータワー(東京・本郷)/ノーマン・フォスター氏(2002年、同)=ふたつのタワーが19階吹き抜けのアトリウムで連結した、日本の寺院の屋根をモチーフにした建物。オフィスビルのため内部の見学は不可。JR中央線の車内からも見える
★電通本社ビル(東京・汐留)/ジャン・ヌーヴェル氏(2001年・同)=「カレッタ汐留」の中核をしめる高さ210メートル48階建ての超高層ビル。ガラスにセラミックプリントという特殊な処理を施した外観に周囲のビルがうつりこむ様子が美しい
★イタリア文化会館(東京・九段南)/ガエ・アウレンティ氏(1991年、同)=一昨年から昨春にかけて物議をかもした、壁面の赤の格子パターンが印象的な建物。朱漆をイメージしたという赤い格子模様の周りを白い外壁が囲むデザイン
★静岡県立美術館(静岡市)「草間彌生の世界」展/草間彌生氏(2006年・絵画部門)=17日〜11月18日開催。世界を舞台に活躍する同氏の初期から現在までの「水玉」や「網」をモチーフにした作品を楽しむことができる。28日まで開催中の原美術館(東京・品川)のコレクション展「亜細亜的現代」では「自己消滅」などを展示
★ファーレ立川(東京・立川)/ロバート・ラウシェンバーグ氏(1998年・同)=立川TMビル北側(自転車置場)に自転車のオブジェ「自転車もどきVI」がある。骨組みには本物の自転車を使用。その形状にあわせてネオン管が配置され、夜には美しく輝く