慢性腎臓病、放置すると危険 心筋梗塞、脳梗塞の原因にも

健康診断で尿にタンパクが出てもほったらかしし、というアナタ。もしかしたら、メタボリックシンドロームと並び、新たな「国民病」として注目される「慢性腎臓病」の患者かも。腎臓は、機能が低下しても、重症になるまでほとんど自覚症状のない“沈黙の臓器”。「慢性腎臓病」は、腎機能が慢性的に低下した状態を示す新しい概念として米国で提唱され、日本人の5人に1人が罹患しているといわれる。悪化すると透析療法が必要になるだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の発生率も高める。あなたの腎臓は大丈夫ですか?
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今年5月、日本の専門医らが、初の診療ガイドを発表し、早期発見・治療を呼びかけた「慢性腎臓病」。日本慢性腎臓病対策協議会が実施した腎臓病に関する意識調査によると、健康診断や人間ドックで尿タンパク異常(タンパク尿)があった人は全体の28・8%にのぼりながら、そのうち、約半数が再検査を受けていないという。
腎臓病治療の第一人者、順天堂大学医学部腎臓内科の富野康日己教授は、「腎臓が、体全体の健康を左右する重要な臓器だということが、十分理解されていないのが一番の問題」と指摘する。
腎臓は、「血液中の老廃物を尿として排出」しているだけでなく、それにともなって、体内の水分量や電解質を一定にし、血圧を正常に保つ。つまり、「体の中のバランスを保つ重要な働き」(別項)を持つ重要な器官。ところが、機能が低下しても、痛みがないなど自覚症状は乏しいため、健康診断で「再検査」の診断が下っても、甘く見られがちなのだ。
「慢性腎臓病」は、こうした事態を防ぐために生まれた新しい概念。「慢性糸球体腎炎」や「糖尿病腎症」など、個別の病名で呼んでいる慢性の腎臓病の総称で、「腎臓の機能が3カ月以上60%未満に低下していれば、尿タンパクなどに異常がなくても『慢性腎臓病』と診断します」と富野教授。また、腎機能がほとんど正常でも、尿タンパク異常や血尿(目で見えないものも含む)などが3カ月以上続く場合も含まれる。
というのも、腎臓疾患は、早期発見なら腎機能の回復もありうるが、機能低下が続くと「病気の進行を遅らせることはできても、元の健康な腎臓には戻せなくなる。最終的には透析療法が必要になる」(同教授)ため。しかも、近年、「『慢性腎臓病』は、心筋梗塞や脳梗塞など、脳・心血管系の疾患を引き起こす危険性が高くなる」ことがわかってきたという。
早期発見には、定期的な尿検査が不可欠だが、休息をとっても疲れがとれない、尿の泡が異常に多くなかなか消えない、脚や顔がむくみやすいといった場合も専門医の受診が望ましい。働き盛り世代の男性は特に注意が必要で、中でも、「高血圧や糖尿病の持病がある人は、半年に1度は尿検査を受けてください」と富野教授。
同教授がすすめる「慢性腎臓病」の予防対策は、別表の通り。メタボ対策に躍起なあなた。腎臓は、元気に働いていますか?
【生活習慣病と「慢性腎臓病」】
「高血圧は、『慢性腎臓病』の危険因子のひとつ。高い血圧は腎臓に負担をかけ、また、『慢性腎臓病』は、血圧を上昇させる」と富野教授。高血圧になると、腎臓の血管に強い圧力がかかり、また、血液中の塩分を盛んに排出して血圧を下げようと働くことで、腎臓の負担が大きくなるためだ。これを防ぐには、「血圧を130/80mmHg未満に保つこと」と同教授。食事療法で血圧を下げられない場合は、降圧剤も有効だ。
糖尿病では血糖値のコントロールが重要。「高血糖状態が、『糸球体』の血管壁を厚く、硬くしてしまう」(同教授)ためで、そうなると、腎臓が正常に血液をろ過できなくなり、全身の臓器に悪影響を及ぼす。早期発見には、「『糸球体』に異常があると出てくるアルブミンの量をはかる『微量アルブミン尿検査』を3カ月に1度行うのが理想」(富野教授)。
【腎臓の働き】
腎臓は、腰の高さの背中に近い側に、背骨を挟んで両側に1つずつある臓器で、こぶし大のソラマメのような形。中には、「糸球体」という毛細血管の固まりが、それぞれ約100万個ずつあり、血液が回収した老廃物をろ過し、尿として排出する。このとき、ブドウ糖やアミノ酸など必要な栄養分は血液に戻され、さらに、ナトリウムやカリウムなどの電解質を必要量だけ血液に戻すことで、「体液に含まれる電解質のバランスを保ち、酸とアルカリのpH(ペーハー)調節をして体の中を中性、または弱アルカリ性にしている」(富野教授)。実は、これが最も重要な点で、「電解質や体のpHのバランスが脳や心臓など体全体の健康を保っている」(同教授)ためだ。ほかにも、赤血球を作るホルモンや血圧を維持するホルモンなどを作り、骨を作るときに必要なビタミンDを活性化する働きもある。心臓や脳と並び、臓器の中でもっとも重要な働きをしている。
| 腎臓を守る生活習慣9カ条 |
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| その1 1年に1回は尿検査=高血圧や糖尿病がある場合は半年に1回。タンパク尿が指摘されたら、必ず再検査を受けること |
| その2 タンパク質のとりすぎに注意し、塩分は控えめに=肥満は「慢性腎臓病」のリスクを高くする。バランスよく食べ、太りすぎない。標準体重〈身長(m)×身長(m)×22〉を目指そう |
| その3 血圧は「130/80mmHg未満」に管理=血圧が高いと「糸球体」が障害されやすくなる。高血圧の人は降圧薬も使用 |
| その4 適度な運動を継続して行う=急性期や重症の場合は除く。おすすめは、20〜30分のウオーキング。運動中は必ず水分補給 |
| その5 お酒は少量(ビール1缶、日本酒1合など)にとどめる=お酒の飲みすぎは血圧を高くするので注意 |
| その6 禁煙する=タバコには血管を収縮させる作用があり、腎臓の血流を悪くする恐れがある。節煙では意味がない |
| その7 糖尿病をきちんと治療し、血糖値をコントロール=高血糖状態は「糸球体」の血管壁を厚く硬くし、血液のろ過を障害する。新たに透析を始める患者の4割は「糖尿病腎症」が原因 |
| その8 睡眠を十分にとる=睡眠不足は血液量を減らし、十分な血液が腎臓に送られなくなるため、全身の健康に影響を与える |
| その9 かぜをひかないよう注意=特にへんとう炎やいん頭炎は、ウイルスや細菌が体内に入る原因に |

