下げよう悪玉血圧 動脈硬化を防ぐ新常識

血圧といえば誰もが気にするのが「上の血圧(収縮期血圧)」と「下の血圧(拡張期血圧)」。ところが最近の研究で、「上の血圧」には、家庭用の血圧計などでわかる「善玉血圧」のほかに、「悪玉血圧」があることがわかった。心筋梗塞や脳卒中など、命にかかわる病気を招く動脈硬化を防ぐには、この「悪玉血圧」を下げることが重要だという。このほか、上下の血圧の差である「脈圧」や、末梢血管に流れる血の圧力である「平均血圧」という新概念も登場。健康を守るための血圧の新常識とは?
◇
心臓は、拡張と収縮を繰り返して血液を全身に送り出している“ポンプ”。収縮して血液を送り出すときの血圧が「上の血圧」。拡張して血液を取り込むときの血圧が「下の血圧」だ。
東京医科大学八王子医療センター循環器内科の高沢謙二教授によると、「心臓の拍動による血管内の周期的な圧力の変動の波形である『脈波』を測定することで、『上の血圧』に、通常の血圧測定では隠れていた2つ目のピークがあることがわかりました」。
同教授によると、「上の血圧」は、ふたこぶ型をしている。1つ目の山が「善玉血圧」で、これは、心臓が収縮して左心室から大動脈の入り口に向かって血液を送り出すときの血圧。ところが、心臓から送り出された血液は、全身の血管の壁に跳ね返り心臓に戻ってくる波となり、これが第2の山を作る。この時の血圧が「悪玉血圧」だ。
壁に投げたボールの反発を思いだしてみるとよい。血管が柔らかければ、波の戻りもゆるやかだが、動脈硬化が進み、血管の壁が硬くなるほど反射でできる波の戻りは速くなり、2つ目の波は高くなる。
高沢教授は、「健康のために大切なのはこの『悪玉血圧』を下げること。『悪玉血圧』を高いまま放置していると、心筋拡大、不整脈、心不全などにつながる危険性がある」と警告する。
というのも、血液を送り出しているとき、心臓は大動脈との間の扉(大動脈弁)を開け放った状態にあり、「その状態で反発圧が戻ってくると、心臓が血液の圧力をもろに受けてしまう」(同教授)からだ。
この「悪玉血圧」、実は、東京医科大学八王子医療センターをはじめ、大学病院や総合病院など、全国的に広まりつつある新しいタイプの脈派計を使えば、簡単に調べることができる。
動脈硬化の進行と直結する「悪玉血圧」。高沢教授がすすめる「悪玉血圧」を下げるための生活術は別表の通りで、基本は、「腹八分目に食べ、よく歩くこと」。
同教授は「血液の還流をよくする弁があるふくらはぎは“第2の心臓”とも呼ばれています。立った姿勢でカカトを上げ下げする。座った状態で左右のカカトを交互に上げ下げする運動を仕事中などにまめに行うといいでしょう」とアドバイスする。
【「平均血圧」の上昇は動脈硬化の始まり】
「平均血圧」とは、心臓から遠い場所にある細い血管(末梢血管)での血液の圧力を示すもの。「動脈硬化は、最初に細い血管に現われ、次第に太い血管へと進む」(高沢教授)ため、「平均血圧」の上昇は、動脈硬化の始まりを知る指針になる。
正確な「平均血圧」は、特別な医療機器を使わなければ測定できないが、単純化した計算式でおおよその値を求めることができる。
計算式は、「下の血圧+(上の血圧−下の血圧)÷3」。例えば、上の血圧が120mmHgで下の血圧が70mmHgの場合、「70+(120−70)÷3」となり、「平均血圧」は約87。上の血圧が145mmHg、下の血圧が80mmHgの場合は、「80+(145−80)÷3」で約102。
「平均血圧は90未満が理想。90以上は、末梢部分の細い血管に動脈硬化の傾向がある」(同教授)。一見、問題はなさそうな「145/80」の血圧でも、「平均血圧」を知れば、心臓から遠い血管での動脈硬化の始まりの有無がわかるのだ。
【160/70mmHgの血圧の問題点】
「血圧は、本来、上の血圧と下の血圧をセットで考えるべきです」と高沢教授。例えば、血圧が160/70mmHgの場合、上の血圧が正常範囲である140mmHgを超えていることだけでなく、「下の血圧が70mmHgであることも問題」(同教授)だという。
というのも、下の血圧は正常範囲内(90mmHg未満)でも、心臓が血液を送り出すときに生じる圧力である「脈圧」を示す上下の血圧の幅が90mmHgになるため。
「脈圧」が上がるのは、血管の内壁が硬くなったり、狭くなったりする動脈硬化が進行し、血管内の抵抗が増えているのが原因。正常範囲は、40〜60で、同教授は、「60以上の場合は、心臓に近い部分の太い血管に動脈硬化が起こっている可能性が高い」と警告する。特に、50代以降で、下の血圧が低くなってきたときは要注意。「いつ血管事故が起こってもおかしくないことを知らせる赤信号だと認識してください」(同教授)。
| 「悪玉血圧」を下げるための生活術 |
|---|
| ★1日の塩分量を小さじ1杯程度に抑え、カリウムをたっぷりとる=1日の塩分量は男性10グラム未満、女性8グラム未満が基本。血圧がすでに高い人は、1日小さじ1杯の6グラムが目標。塩分を排泄する作用をもつカリウムを豊富に含んだバナナ、りんごなどの果物、切り干し大根、ホウレンソウ、さつまいも、ひじき、かれい、大豆などを積極的にとる |
| ★カラフルな料理を腹八分目に食べる=食材に含まれる色素には、動脈硬化を助長する悪玉コレステロールの酸化を抑制する働きがある。赤・黄・緑・白・黒など、色によって含まれる抗酸化物質が異なり、料理をカラフルにすると、自然と栄養バランスのよい食事になる。腹八分目が基本で、食べ過ぎたときには、翌日の食事を減らして調節する |
| ★禁煙を実行する=たばこは血管を老化させ、血圧を上げる。ヘビースモーカーはたばこを吸わない人に比べ心筋梗塞をおこす確率が2倍以上とも。禁煙を5年間続けると、リスクは吸わない人と同等に |
| ★アルコールは適量を守る=飲酒を続けると血圧が上昇する。また、飲みすぎは血小板を固まりやすくし、血液をドロドロに。適量は、ビールなら大びん1本、日本酒なら1合、ワインならグラス1杯程度。週に2日は休肝日を作ることも忘れずに |
| ★入浴は38〜40度のぬるめのお湯で=入浴には全身を温めて血管を拡張させ、血圧を下げる作用がある。ただし42度以上の熱い湯は血圧を上げてしまうのでぬるめのお湯で。また、脱水症状をおこすと血液が固まりやすくなるので、湯につかる時間は5〜6分、入浴全体の時間も15分程度に。湯上り後は必ず水分補給をして、ドロドロ血液を防ごう |
| ★完璧主義を捨て、ストレスをためこまない=仕事など、常に満点を目指すのではなく、70点でもよしとする余裕を。仕事中には息抜きの時間をつくり、休日は仕事を忘れて好きなことをやるようにしよう |
| ★「笑い」を生活にとりいれる=イライラしたりくよくよしたりすると血液がドロドロになり、血管を傷つける。「笑い」は血管を開き、血圧を下げる。日ごろからコメディー映画や落語、コントなど、笑うための方法を用意し、ストレスを感じたら大声で笑うようにしよう |
| ★早歩き20分を週2回行う=歩くときは、大きく手を振ってリズミカルに手足の筋肉を伸び縮みさせると全身の血液循環がよくなり、末梢血管が開いて血管の抵抗が減る。運動の効果は4〜5日持続するため、週2回20分が目安。10分ずつに分けて行っても良い。運動は楽しくが基本で、雨の日などは無理をしない |

