グルメ・情報

2007年06月29日 紙面より

ブーム到来シングルモルト “違い”を楽しむ人続々

スパイシー、果実の香りなど、シングルモルトウイスキーは、個性豊かな味わいが特長(東京・青山の「ブレンダーズ・バー」)

シングルモルトウイスキーの味の個性は、蒸留所のある風土の違いも色濃く出る(大阪府島本町のサントリー山崎蒸留所

ウイスキーの売り上げが低迷する中にあって、最近、単一の蒸溜所のモルトウイスキーだけを使用したシングルモルトウイスキーの人気が高まっている。輸入シングルモルト市場は5年前の約1・9倍に広がり、国産シングルモルト市場も、今年になって急激な伸びを見せ始めた。人気の理由はその個性的な味。ワイン同様に、蒸溜所についてのあれこれなど“ウンチク”を語れるのも大人の男を引きつけるようだ。

シングルモルトウイスキーとは、1つの蒸溜所で作られたモルトウイスキー(大麦麦芽だけを原材料に蒸溜)のみを瓶詰めしたウイスキーだ。

このシングルモルトウイスキーの人気が高まっている。スコッチの本場、英国・スコットランドから輸入されているシングルモルトの中でも「ロールスロイス」の別名を持つ「ザ・マッカラン」は、昨年の販売数が3万4000箱と前年比121%の伸び。世界で最も飲まれているシングルモルト「グレンフィディック」が同129%、ピート(泥炭)の香りがバランス良く漂う「ボウモア」が同139%の伸びを見せている。

国産では、ニッカブランドの「余市」が1〜5月にシリーズ全体の売上金額が前年同期間比3・3倍、販売数量が約7倍。「宮城峡」シリーズ全体の売上金額が前年同期間比1・7倍、販売数量が約2倍と絶好調。ニッカブランドのウイスキーを販売するアサヒビール(東京都墨田区)酒類本部マーケティング本部商品開発第2部の山口宏さんは「このペースなら、今年の販売総数は昨年の4〜5倍。今年はブームになる予感がします」と期待をかける。

ウイスキー市場が昭和58年をピークに減少を続ける中、シングルモルトだけが人気を集める理由はその個性にある。

山口さんは「蒸溜所ごとに違う製法や、熟成に影響を与える気候風土による味の違いを面白さと感じるようになったのでは」。サントリー(大阪市北区)広報部の西崎一正さんは、「本格焼酎ブームで、芋焼酎など、素材や蔵元ごとの味の違いを楽しむようになり、個性的な味に慣れたことが大きい。景気が回復する中で、こだわりのある高級品を求める消費者に受け入れられている」。

「トマーティン」の輸入で知られる国分(東京都中央区)開発商品部の矢代将史課長は「時間に余裕ができた団塊の世代にとって、製法や味の違い、蒸溜所について語れるシングルモルトは、趣味として、ウンチクも楽しめるからでは」との見方だ。

かつては「クセ」ともとらえられていたシングルモルトの味わいも今や「個性の魅力」ととらえられる時代。ウイスキーに慣れ親しんだ大人世代なら、個性豊かなシングルモルトで、さらに奥深いウイスキーの世界を楽しんでみては?

★シングルモルトの魅力が満喫できるバー

じっくりと自分好みの銘柄を探すならホテルのバーがおすすめ(東京・虎ノ門のホテルオークラ東京「バーハイランダー」)

ホテルオークラ東京(東京・虎ノ門)の「バーハイランダー」は、英国のウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」が主催する「アイコンズ・オブ・ウイスキー2006」のホテル・バー部門で日本初となる第2位を獲得した本格バー。

200種類近いシングルモルト(シングル1300円〜)の品ぞろえを誇り、多い日には300人以上が来店する。同店の萩俊一マネージャーは、「最近は、『カリラ』『ラフロイグ』『ボウモア』などのピート香の強い個性的なアイラ島のシングルモルトの人気が高まっている」と話す。

新宿の京王プラザホテルでは、「ブリアン」、「ポールスター」など館内5つのバー&ラウンジで、7月から特に個性が強いモルトウイスキーだけをボトル詰めした「ザ・オーナーズカスクウイスキー」(サントリー山崎蒸溜所、1992年、1本3万6000円)を販売する。

一方、ニッカウヰスキー本社ビル(南青山)の地下の「ブレンダーズ・バー」の人気は、5種類のシングルモルトウイスキーが味わえる「キーモルト&カフェグレーン テイスティングセット」(各15ミリリットル3000円)。平野和也支配人は、「味の違いが分かると好評です。好みでブレンドして飲まれる方も多いですね」という。

★シングルモルトを味わうコツ

シングルモルトの個性を味わうには、「ぜひ、『スタニコフ』と呼ばれる、小ぶりのワイングラスのような形をしたテイスティング用のグラスを使ってみてください」と東京・虎ノ門のホテルオークラ東京「バーハイランダー」の萩俊一マネージャー。まずはストレートでシングルモルトを注ぎ、グラスを回して香りを楽しむ。「少し水を加えると、より香りが立つ。1対1ぐらいの比率で冷水を加え、氷は入れない。冷たくする場合は、ステアグラスにシングルモルト、ロックアイス、水を入れて1分近くゆっくりとかき混ぜ、冷えたら、スタニコフグラスに氷が入らないように注いで飲む『ステア』がおすすめです」(同マネージャー)。これでこれまでとはまったく違う、香りと味が楽しめる。

◆人気の銘柄とその特長◆
★銘柄名(蒸留所/場所)=価格。製法や味の特長など
<<国産>>
★山崎12年(サントリー山崎蒸溜所/大阪府島本町)=6780円。香りは甘く華やかで、なめらかな口当たりが特長。果物を思わせる丸みのある甘さと熟成された力強いコクが楽しめる
★白州12年(サントリー白州蒸溜所/山梨県北杜市)=6700円。甲斐駒ヶ岳の名水を仕込み水に使用。発酵樽には昔ながらの木樽が使われ、じっくりと直火の釜で蒸溜される。繊細でさわやか、ややスモーキーな味わいでキレのよい後口が特長
★余市12年(ニッカウヰスキー余市蒸溜所/北海道余市町)=6993円。創業当時と同じ、石炭直火焚きで丹念に蒸溜。力強く男性的な風味が特長で、豊かなコクとスモーキーな味わいを持つ
★宮城峡12年(ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所/宮城県仙台市)=6993円。ピートの香りが弱いローランドタイプの繊細でやわらかな風味。軽やかな麦芽の香りや甘さ、なめらかな舌触りが楽しめる
<<輸入>>
★ザ・マッカラン12年(ザ・マッカラン蒸溜所/スペイサイド)=8250円。自ら作った新樽をシェリー酒業者に提供して香りがついたものを熟成に使用。熟した果実とシェリーの香り、まろやかな味わい
★グレンフィディック12年スペシャルリザーブ(グレンフィディック蒸溜所/スペイサイド)=6000円。グレンフィディックシリーズは世界シェア約15%と世界で最も飲まれている。上品な甘さと香り
★ボウモア12年(ボウモア蒸溜所/アイラ島)=6000円。麦芽を乾燥させるときに使用するピート香りに加え、海沿いの蒸溜所らしく潮の香りがほのかに香る。アイラモルトの入門編に最適
★ラフロイグ10年(ラフロイグ蒸溜所/アイラ島)=6900円。スモーキーでピート香が強い。ラフロイグ15年は英国のチャールズ皇太子も愛飲
★トマーティン12年(トマーティン蒸溜所/ハイランド)=オープン価格。宝酒造所有のスコットランド最大級のモルトウイスキー蒸溜所で造られた。豊かなピート香と、フルーティーで軽やかな舌触り
★ストラスアイラ12年(ストラスアイラ蒸溜所/スペイサイド)=8493円。軽くピート焚きされた麦芽を使用した、「シーバス リーガル」「ロイヤル サルート」の核となるモルト原酒。なめらかで熟した果実やナッツのような風味。飲み口はドライだが、後味は甘い
★カリラ12年(カリラ蒸溜所/アイラ島)=9710円。スモーキーかつスパイシーで、ハーブ風の味わいとかすかな甘さ、果実香が魅力
※輸入シングルモルトはすべて英国・スコットランド産。スペイサイドは、スコットランドの全蒸溜所の約半数が集まるウイスキーの聖地。アイラ島は、西部にある淡路島ほどの大きさの島、ハイランドは中央部の高地地帯を指す※価格は、原則として700ミリリットルボトルのメーカー(正規輸入元)希望小売価格(消費税別)。実勢価格と大きな差がある場合もあります