グルメ・情報

2007年05月26日 紙面より

夏の紫外線から目を守れ 朝夕に対策を

「UVカット」など紫外線予防は常識の時代。だが、肌への紫外線カットに比べて、無頓着になりがちなのが目の紫外線予防だ。目の場合は肌とは異なり、影響は分かりにくいが、実は、強い紫外線を浴びれば急性の「紫外線角膜炎」が起こったり、日常生活の中で紫外線を浴び続けていると「翼状片」や「白内障」などを発症する危険性が高まる。さまざまな目の障害の原因になる紫外線。夏に向かい、紫外線から目を守る対策は大切だ。

目は、網膜に達した光(可視光線)の情報を脳に伝える重要な感覚器。この光とともに振り注いでいるのが紫外線(別項)だ。

金沢医科大学感覚機能病態学(眼科学)の佐々木洋主任教授は「通常、肌に浴びる紫外線がもっとも強くなるのは午前10時から午後2時です。しかし、目の場合は、通勤時間と重なる朝夕の紫外線対策が重要」という。

というのも、人間の顔の前部に位置している目は、頭上からの紫外線ではなく、斜めから入ってくる紫外線の影響が大きいからだ。

「一般に、顔は水平より15度程度下を向いた状態が一番自然です。例えば、太陽が一番高くなる夏至では、東京の場合、午前8時ごろと午後4時ごろが太陽の角度が40度になる。目への紫外線被爆がもっとも多い、特に注意が必要な時間帯です」(同教授)  逆に、「太陽が昇り、高度が40度を超えると前頭部で紫外線はカットされ、目には直接入ってこなくなる」(同教授)わけだが、直接目に入ってくる以外に、反射・散乱して入ってくる紫外線の対策も必要だ。

有効なのが帽子とサングラスの併用だが、背広姿のサラリーマンには帽子の着用は難しい。

佐々木教授は、「目の周囲を覆うような形状のスポーツサングラスなら、紫外線被爆率は2〜8%に低減できます。紫外線をカットするコンタクトレンズの併用も有用です」とすすめる。

通勤に色の濃いスポーツサングラスをかけるのは抵抗がある人も多いだろうが、金沢医科大学感覚機能病態学(眼科学)主任技師の坂本保夫さんは、「紫外線防御とサングラスの色は関係ありません。色の濃いサングラスは、目が光をより多く取り入れようとするため瞳が大きくなり、周囲から入ってくる紫外線量が増える。色の薄いものや透明のもののほうがかえっていいですよ」と説明する。

ますます紫外線が強まるこれからの季節。紫外線は、人間の目には見えないが、目の角膜にダメージを与え、「紫外線角膜炎」などの原因にもなる。目の紫外線による障害を防ぐためには、肌と同じように、きちんと対策をすることが大切だ。

【紫外線が引き起こす急性の目の病気】

紫外線による眼病には、急性のものと慢性のものがある。佐々木教授によると、「『雪眼炎』とも呼ばれる『紫外線角膜炎』は、スキーなどで一度に大量の紫外線を浴びたときに起こります」。症状は強い紫外線を浴びた半日後ごろに出るのが特徴で、急性の場合は、結膜の充血と、「黒目の皮である角膜上皮細胞が炎症でむけたようになり、強い痛みがある」(同教授)。
     痛みや充血は1〜2日すれば自然に消える。
     「角膜や結膜は、絶えず再生を繰り返しているので、ほとんどの場合、自然に治ります。ただし、コンタクトレンズは、感染症を起こす危険性があるので、症状が消えるまでは避けたほうがいい」(同教授)。
     痛みや充血などの症状が、「自然に消えても、安心は禁物」(同教授)。こうした目へのダメージを繰り返していると、「翼状片」や「白内障」などの慢性の眼病が誘発されるのだ。

【紫外線による慢性の眼疾患】

急性障害の経験がなくても、日常生活の中で、目に浴びている紫外線が、積もり積もって慢性の眼病を引き起こすこともある。佐々木教授は、「慢性障害は、発症までの期間が20〜30年と長く、自覚症状もない。徐々にダメージを受けていることに気がつかないまま、何の対策もなされていないのが現状です」と警鐘をならす。
     特に怖いのが「翼状片」だ。あまり知られていないが「白目(結膜)の組織が、異常に増殖し、黒目(角膜)の上にまで伸びてくる病気」(同教授)で、初期症状は結膜の充血や疲れ目など。次第に黒目の中央まで進み、「視力が良くても乱視が強くなっていることがあり、進行すると物が二重に見えるような症状が出てきます」(同教授)。放置すれば瞳孔に伸びて視力障害から失明に至ることもある。
     同教授は、「『翼状片』は、点眼薬や内服薬で治療はできません。手術で切除するしかない。予防は、紫外線を目に浴びないようにするのが一番です」という。

【紫外線とは】

自然光は、波長(周波数)の違う光の集合体。紫外線は、人間の目には見えない光で、目に見える光(可視光線)より波長が短く、波長の長い順から、UV(紫外線)−A、UV−B、UV−Cの3種類がある。このうち、UV−Cは、オゾン層で大半がカットされ、気にする必要はない。
     佐々木教授によると、「波長が短いほど、エネルギーが大きく、人体に悪影響を与える。特に問題になるのはUV−B。地表に届く紫外線で、最も細胞毒性が強い。目の角膜にダメージを与え、『紫外線角膜炎』などの原因にもなる」という。
     ちなみに、肌への影響は、UV−Aは肌の弾力を保つ組織に障害を起こし、皮膚のたるみやシワの原因になり、皮膚の老化を早める。UV−BはAの約1000倍有害で、皮膚の細胞内の遺伝子を傷つけ、皮膚がんの原因にもなる。

紫外線が関係する目の病気
★紫外線角膜炎=海水浴場やスキー場などで、大量の紫外線を強く浴びたときに起こる急性の角膜の炎症。雪面など、反射の強い場所で発症する「雪眼炎(ゆきめ)」が有名。強い紫外線を浴びた約6〜12時間後に、目が赤く充血する、痛みや異物感を感じる、涙が出るなど、角膜の多発性上皮びらんの症状がでる。通常、症状は1〜2日で消滅する
★翼状片=白目の部分である結膜が異常増殖し、黒目の角膜に伸びてくる疾患。異物感や結膜の充血、乱視などが起こり、放置すると視力障害をきたす。長期間、紫外線を浴び続けた影響が大きいとされる
★白内障=眼科疾患の中で最も多い病気のひとつ。加齢を含む、さまざまな要因から眼の中でレンズの役割を果たしている水晶体が濁り、物が見えにくくなる。病型は80種類以上あるといわれ、皮質白内障の発症に紫外線が関係している可能性がある
★加齢黄斑変性=欧米では失明原因の1位を占め、日本でも高齢化にともない急速に増えてきた疾患。網膜に異常な老化が起こり、網膜の中心部の黄斑(おうはん)が変性して、視界の中心部が歪んで見えたり、中心が見えなくなるなどの症状が現れる。長年、太陽光(紫外線、可視光)を浴び続けると、黄斑に異常が起こる可能性があるともいわれている