前立腺障害 早期治療でスッキリ!勢い復活

中高年の男性にとって前立腺の病気は特に気になるもの。この前立腺は男性にしかない臓器で、さまざまな障害が出始めるのが50歳を過ぎたころからだ。夜間に何度もトイレに起きる、尿の勢いがない、残尿感がある…。何らかの排尿障害があれば、前立腺の病気の疑いがある。その代表格は「前立腺肥大症」と「前立腺がん」だろう。大人世代の男性なら気になる前立腺の病気とそのメカニズム、治療法をチェックしてみた。
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正常な前立腺の大きさは栗の実程度。ミカンに例えると、実の部分に当たる尿道を取り巻く内側の内腺と、皮の部分である外側の外腺とに分けられる。山梨大学大学院医学工学総合研究部泌尿器科学の武田正之教授は、「がんができやすいのは外腺部分。内腺にはがんはできにくいが、コブ(良性腫瘍)ができやすい。このコブが大きくなると、『前立腺肥大症』になります」という。
多くの中高年男性を悩ませるのがこの「前立腺肥大症」。この病気のメカニズムはこうだ。
前立腺が大きくなると尿道が圧迫される。前立腺は交感神経の支配を受けているため、肥大した前立腺の中にある平滑筋という筋肉が、交感神経の働きで過剰に尿道をしめつけるようになる。その結果、「徐々におしっこの出が悪くなる。夜中に何度もトイレに行きたくなる」(同教授)といった症状が出始める。
そのままにすれば、「膀胱が過敏になり、突然、がまんできないほどの尿意を感じたり、我慢できずに尿失禁をするといった過活動膀胱になることもある」(同教授)。放置すると「膀胱の中に、常に100ミリリットル程度の尿が残るようになる。この尿の中に細菌が繁殖し、尿路感染症を起こしてしまうのです」(同教授)。この尿が細菌でよどんだ状態が続くと膀胱結石を招き、次第に膀胱の壁が厚くなる。
さらに進行すると、「膀胱憩室という膀胱に動脈瘤ができたような状態になると膀胱の筋肉がこわれて、手術で前立腺を切除しても治らなくなる。進行して腎臓にも尿がたまるようになると、腎不全が引き起こされる。排尿障害がある場合は、なるべく早く専門医の診察を受けることが大切です」(同教授)。
さらに怖いのが、「『前立腺肥大症』と『前立腺がん』(別項)の発症年齢は似ており、このふたつの合併症もある」(筑波大学大学院腎泌尿器科学/男性機能科学の赤座英之教授)ことだ。
「前立腺肥大症」の治療は、「過活動膀胱も含め、初期なら、薬物療法でかなり改善できます」と武田教授。排尿障害がかなり進行した場合は、「高周波電気メスやレーザーによる内視鏡手術で肥大した部分を切除します」(武田教授)。
前立腺の病気による排尿障害は、生活の質を下げ、放置すれば命にかかわることもある。まずは、排尿障害の症状の有無をチェック(表)。気になる点があれば、早めに泌尿器科医に相談することが大切だ。
【50歳を過ぎたら「前立腺がん」の検査を】
年々、罹患者が増えている「前立腺がん」。筑波大学大学院腎泌尿器科学/男性機能科学の赤座英之教授は、「2020年には、肺がんについで、2番目の罹患率になると予測されています」と話す。原因は遺伝的要因が重要で、「近親者に罹患者が1人いれば2倍、2人以上なら発症リスクは5〜11倍。動物性脂肪の多い食生活も発症リスクが高まる可能性があります」(同教授)。
初期は自覚症状はほとんどなく、一部に排尿障害が起こることがある程度。進行は「ほかの臓器のがんと違い非常にゆっくり。がんが発生し始めてから発見まで20〜30年。発見は50歳以降がほとんどです」と同教授。 ちなみに、「前立腺肥大症」が「前立腺がん」に発展することはないと考えられている。
早期発見には、PSA(前立腺特異抗原)検査が普及しており、「この検査なら、採血するだけで『前立腺がん』の診断が可能。50歳を過ぎたら、『前立腺がん』の定期検査を受け、経過観察をしながら治療することが大切」(同教授)なのだ。
【前立腺の役割と男性ホルモン】
武田教授によると、「前立腺は、膀胱のすぐ下にあり、尿道をドーナツ状に取り囲んでいる臓器です」。精液の一部である前立腺液を分泌し、精子に栄養を与えたり、精子の活動を活発にしたりするといった役割を担っている。
「前立腺は、男性ホルモンの影響を受けています。そのため、加齢によって、血液中の男性ホルモンが減少して女性ホルモンの割合が相対的に増えてくると、さまざまな障害が出てくるのです」(同教授)。男性ホルモンは「前立腺がん」や「前立腺肥大症」などの病気の進行にも関係していると考えられている。
【大人の尿の量と排尿回数】
成人の尿の量は、1日約1・5リットル。尿意を感じるのは、150ミリリットル程度で、通常、最大300〜400ミリリットルの尿を膀胱に溜めることができるという。成人の平均的排尿回数は、朝起きてから、夜ふとんに入るまでの昼間は4〜6回が目安。
「夜間(ふとんに入ってから、朝起きるまで)の排尿回数は多くても1回程度なので、それ以上の場合、夜間頻尿として治療するべきです」と武田教授。もっとも、アルコールを飲んだ場合や、水分を多く摂取した場合などは、排尿の回数は多くなるので、心配は無用だ。
| 国際前立腺症状スコア(I−PSS 一部改変) |
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| この1カ月を振り返って、自分の排尿状態をチェックしてください。点数は★(1)〜(6)までは以下の通り。 ※該当する感覚がなし(0点)▽5回に1回の割合より少ない(1点)▽2回に1回以下(2点)▽2回に1回程度(3点)▽2回に1回以上(4点)▽ほとんどいつも(5点) |
| ★(1)排尿後に、まだ尿が残っているような感じがした |
| ★(2)排尿後2時間以内にトイレに行きたくなった |
| ★(3)排尿途中に尿が途切れることがあった |
| ★(4)排尿をがまんすることがつらいことがあった |
| ★(5)尿の勢いが弱いと感じることがあった |
| ★(6)排尿をし始めるために、おなかに力をいれることがあった |
| ★(7)夜寝てから朝起きるまでに、平均何回ぐらいトイレのために起きたか 0回(0点)▽1回(1点)▽2回(2点)▽3回(3点)▽4回(4点)▽5回以上(5点) |
| 【採点】合計点が0〜7点=軽症。経過観察が必要。医学的にはまだ、薬物療法を始める状態ではない▽8〜19点=中等症。α1ブロッカーなどによる薬物療法を始めることで、症状の改善が見込める。専門医の診断を仰ごう▽20〜35点=重症。必要があれば手術をすることも。早急に専門医の診察を受けることが大切 |

