グルメ・情報

2007年04月20日 紙面より

変わりゆく「おふくろの味」 バーでデパ地下でみそ汁

「おふくろの味」の代名詞だった味噌汁は、今やバー(写真〔上「ICHIDO。」)や居酒屋(同下「味噌汁家」)の主役。

食生活の欧米化で家庭の朝食から姿を消しつつあったみそ汁が、最近、復権している。みそ汁に力を入れる居酒屋やバーが登場したり、みそ汁専門店がデパ地下のイートインコーナーを展開するなど、さまざまなスタイルで人気を集めているのだ。外食でのみそ汁人気を受けて、家庭では何種類もの具が入った「ごちそうみそ汁」として登場するケースも多いという。おふくろの味の代名詞は、「バランスの取れたヘルシー料理」に変貌している。

カウンター席で、みそ汁をつまみに洋酒を傾ける−。昨年12月、東京・南麻布にオープンしたみそ汁バー「ICHIDO。(イチド)」の光景だ。用意しているみそ汁は、「京都の生麩汁」(西京みそ)や「秋田のはたはた汁」(秋田大豆白みそ)など17種類(500円〜)。八重一雄店長は、みそ汁に目をつけた理由を「バーとのミスマッチの面白さと、みそは保存期間も長く、ロスが少ないという利点から。郷土色も出しやすく、懐かしさや温かさが感じられるので、コミュニケーションの切り口にもなりやすい」と説明する。

デパ地下で気軽においしいみそ汁が飲めると評判なのが、東京・池袋の東武百貨店のイートインのみそ汁専門店「美噌元」だ。同店では、「温野菜と豆腐のすりごま仕立て」「季節の味噌汁」など4種類のみそ汁(420円〜)を用意。展開する諸国美味(兵庫県芦屋市)の横井伸仁社長は、「1日約120人が来店。男性の常連客も多い。1日に昼と夜の2回みそ汁を飲みにくる50代の男性客もいらっしゃいます」という。

一方、東京・内幸町の居酒屋「味噌汁家」(下)=では約30種類のみそ汁(300円〜)が飲める。鶴町泰師店長は、「ランチタイムも含め、1日160杯以上のみそ汁がでる。人気は、『かぼちゃと鶏ひき肉』(仙台みそ)や『里芋と鶏ひき肉』(あわせみそ)など、家庭で作るのは面倒な具材のもの。2、3杯飲んでいく20、30代のお客さんもいます」という。

増えつつあるみそ汁専門店。その背景を鶴町店長は、「家庭で、きちんとだしをとったみそ汁を飲む機会がなくなっている。削りたての鰹節でだしをとったみそ汁は味も香りもまったく違う。中高年世代には懐かしく、若者世代は初めて味わうおいしさ。それが受けているのでは」と分析。

みそ健康づくり委員会の高梨修委員長は、「共働き家庭の増加などで、朝、みそ汁を飲む機会が減った。今やみそ汁は、具だくさんの“ごちそうみそ汁”として夕食に登場するメニュー。料理としてみそ汁を注文することにも抵抗がなくなっているのでしょう」とみている。

かつて、「おふくろの味」の定番だったみそ汁。21世紀は、本物の味を楽しむには、外で飲むものになっている?

★みその健康効果

「高い健康効果が期待できる」(みそ健康づくり委員会の高梨修委員長)みそ汁。例えば、みその主原料の大豆に含まれるサポニンやレシチン、食物繊維がコレステロールを抑制。食物繊維が腸を掃除し、みその中の微生物が腸内の腐敗菌や有害物を体外に排出、アミノ酸や酵素の働きで一緒に食べた食品の消化吸収もよくなる。

胃の粘膜を守る働きがあるといわれ、「みそ汁を飲んでいる人は、全く飲まない人に比べて胃炎や胃・十二指腸潰瘍が少ないという研究結果もあります」(同委員長)。

ほかにも、ビタミンB12が造血作用や神経の疲労回復を促進。遊離リノール酸にはメラニン合成を抑える働きがあり、美肌効果も期待できる。

気になるみそ汁の塩分は「お椀1杯で約1.4グラム。コーンポタージュの約2.3グラムより少ない。気になるなら、塩分を体外に排出する作用があるホウレン草やイモ類、ゴボウ、ワカメなどカリウムを多く含む具を使うといい」(同委員長)。

★おいしいみそ汁を作るコツ

「味の決め手の1つがだし。前日に、水の中に昆布と鰹節を入れておくだけでおいしいだしがとれますよ」と、みそ健康づくり委員会の高梨修委員長。

具材は、火の通りの悪いイモ類や大根などは、あらかじめだしで煮ておき、豆腐やワカメはみそを溶き入れた直後に入れる。ネギやワケギなどの香りや青みを生かすものは汁が煮立つ直前に加える。みそを溶き入れるタイミングは、だしが沸騰してきた(具に火が通った)ときで、「いったん火を弱め、煮立ちを鎮めてから入れる。煮立たせないこと」(同委員長)。火を止めるのはみそがグラッとした瞬間だ。

ちなみに、みそは約1カ月で使いきれる量を購入し、表面をラップフィルムなどで覆って冷蔵庫へ。小分けにして冷凍するのも便利で、「みそは冷凍しても凍らず、麹菌が冬眠状態に入って発酵がとまるのでおいしい状態が保てます」(同委員長)という。

★手作りみそが大人気

毎年5月に予約制で手作りみそ教室を開催している小泉糀屋(横浜市港北区)。同店の小泉聡社長は、「通常の講習会以外にも、自治体や子供会、料理教室などで講習会をしてほしいという引き合いが増えています。6〜9月以外は販売している手作りみそキットも人気です」と話す。

同店では、手作りみそキット「あなたも味噌職人・米味噌」(3500円)などを販売。手作りみそは、「麹の分量も多く、味と香りが市販のものとぜんぜん違う。誰にでも簡単にでき、今仕込めば秋ごろにはおいしいみそが出来上がります」(同社長)。コツは、「配合を勝手にかえないこと。塩分を10%以下にしないこと」(同社長)。仕込み用の樽も販売しているが、「陶器、プラスチックなど、家にある容器で作れます。密閉できなくても問題はない」という。

春から初夏のおすすめみそ汁
★タケノコとフキのみそ汁/ゆでタケノコ100グラム、フキ1本、だし3カップ半、淡色の米みそ大さじ3=タケノコは薄切りに。フキは3〜4等分し、ゆでて皮をむき水にさらし、2〜3センチ長さに切る。だしを煮立て、タケノコとフキを入れて温める程度に火を通し、みそを溶き入れる
★たらの芽と揚げ玉のみそ汁/たらの芽4〜8個、揚げ玉大さじ4、だし3カップ半、米みそ大さじ3、七味唐辛子適宜=たらの芽は下部の茶色い部分をそぎ落とす。だしを煮立て、たらの芽を入れて軽く煮る。みそを溶き、沸騰直前で火を止め揚げ玉を散らし七味唐辛子をふる
★豚肉とキュウリのみそ汁/豚ばら肉薄切り150グラム、キュウリ1本、だし3カップ半、豆みそ大さじ3、ショウガ適宜=豚肉は2〜3センチ幅に切り、キュウリは皮をしま目にむいて5ミリ幅の斜め切りにする。鍋でだしを煮立て、豚肉を入れ、アクを除いてからキュウリを加える。みそを溶き入れ、沸騰直前で火を止め、千切りのショウガをあしらう
★インゲンとセロリの冷やしみそ汁/インゲン50グラム、セロリ中1本、だし3カップ、豆みそ大さじ3、塩少々=インゲンは筋を取り、塩でもむ。軽くゆでて水に取り、斜め切りに。セロリも筋を取り、少し厚めの小口切りに。だしを煮立て具を煮てみそを溶き、冷やす
★トマトとズッキーニの冷やしみそ汁/トマト大1個、ズッキーニ1/2本、だし3カップ半、豆みそ大さじ3、青ジソ適宜=トマトは湯むきして種を除き一口大に切る。ズッキーニは縦2等分にして5ミリ幅の小口切りにし、柔らかくゆでて冷ます。だしを温めてみそを溶き、冷蔵庫で冷やす。椀に具を入れ、みそ汁を注ぎ、千切りの青ジソをあしらう
★ベーコンとタマネギの洋風みそ汁/薄切りベーコン80グラム、タマネギ1/2個、ニンニク1かけ、ホウレン草100グラム、だし3カップ半、米みそまたは麦みそ大さじ2、スライスチーズ4枚、黒コショウ適宜、サラダ油適宜=ベーコンとホウレン草は3センチ長さに、タマネギは1センチ幅に切る。ニンニクは薄切り。鍋にサラダ油を熱し、ニンニク、タマネギ、ベーコンを炒め、タマネギが透き通ってきたらだしを入れる。アクを取ってみそを溶き、ホウレン草を加え、椀に盛り、スライスチーズをのせ、黒コショウをふる(材料はいずれも4人分)