今、売れに売れているクラシックCD
CMに流れたり、ドラマのテーマになったりと、人気が高まるクラシック音楽。バッハやベートーベンらのおなじみの名曲のベストアルバムから“入門”する大人世代も多い(東京・日本橋の山野楽器日本橋高島屋店)
「どこかで聴いたクラシック・ベスト101」
「モーツァルト大全集」
最近、クラシック音楽がブームになっている。ipodに押されてCDの売れ行きが低迷する中にあって、クラシックの名曲を集めたアルバムだけは絶好調。さらに、CMに使われたり、オペラ歌手が歌った「千の風になって」がヒットチャートの1位に躍り出るなど人気は高まる一方だ。支えているのは「これまでクラシックを聴かなかった層」で、演歌や歌謡曲からシフトする大人世代も多いとか。その人気の背景は−。
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ブームの火付け役は東芝EMIが平成17年4月に発売した「ベストクラシック100」だ。バッハやショパンらの名曲100曲を6枚のCDに収め価格はなんと3000円。これまでに80万枚を売り、そのあと出されたシリーズ合計で200万枚近くを販売している。
このヒットに続き、各社から同様な廉価版CDの販売が続き、いずれも売れ行きは好調。平成17年8月にはエイベックスから「100曲モーツァルト=10枚10時間3000円」が発売され約20万枚、続く「500円モーツァルト」シリーズ(全10枚)も現在まで合計で約15万枚を販売。さらに、ユニバーサルジャパンの「どこかで聴いたクラシック・ベスト101」も65万枚の大ヒット。「クラシック市場は小さく、10万枚売れたら、ポップスで言う100万枚に相当する」(同社)だけに、かなりのビッグセールスというわけだ。
こうした廉価版とは逆に、25万円という超高額な「モーツァルト大全集」(CD180枚組み、ユニバーサルジャパン)の売れ行きも1000組を軽く超えた。
一方、トヨタ自動車のCMや「ニュースステーション」のオープニング曲にも使われたサラ・ブライトマンや、昨年のFIFAワールドカップのテーマ曲を歌ったイル・ディーヴォのような“クラシカル・クロスオーバー”(クラシックの歌手がポップスを歌う、あるいはその逆のケース)の人気も目立つ。
このクラシックブームを支える“柱”のひとつは大人世代だ。東芝EMI広報では「ベストクラシックを最初に買い始めたのは団塊の世代でしょうね。教養として、あるいは一家に1冊『家庭の医学』を置くような感覚なのでは」とみる。
また、音楽評論家の諸石幸生さんは「クラシックを聴きたいと思っていても、何を聴いていいか分からなかった人たちに受けた。将来的にはベートーベンやブラームスなどまだまだ切り口はあるので、この先も続くのではないでしょうか」。
ジャズもポップスも演歌も聴いてきた大人世代も、クラシックはイマイチ苦手という人は多い。今回のブームはそんな人の心をつかんだようで、HMV広報では「クラシックは肩ひじを張ったお勉強ではなく、気軽に楽しめると理解してもらえたのでは。気楽に聴いてもらえるクラシックを提案していくことで、ブームが続いていくと思う」と期待を寄せている。
★クラシックブームの流れ
CDを販売するHMVの広報では昨今のブームに至るまでの動きを次のように説明する。
「動きが見え始めたのは平成17年のゴールデンウイークから。『ベストクラシック100』の売れ行きが好調でさまざまなメディアに取り上げられ、これに類する廉価版が出てさらにブームが大きくなった。同18年はトリノ五輪フィギュアスケート金メダルの荒川静香が使った曲ということで『トゥーランドット』の入っているアルバムなら何でも売れるという状況が続いた。この年は、モーツァルトの生誕250周年でさらに盛り上がり、年末にはドラマ『のだめカンタービレ』人気がダメ押しになった。1年を通じてクラシックが取り上げられた」
★「41歳からのクラシック」著者おすすめのビギナー用名曲
演歌ファン向けにはチャイコフスキー、ポップス好きには「G線上のアリア」など、ユニークな入門方法でクラシックの楽しさをつづった同書。著者で音楽評論家のみつとみ俊郎さんは、「クラシックと演歌やロック、フォークは遠い存在ではないんです。40代以上の大人世代は、それまで聴いてきた音楽が耳と脳で枠組みを作ってしまっているから、ジャズファンにしっくりくるクラシックの名曲、演歌ならこの作曲家の作品がすんなり入る、といった考え方をすれば、クラシックの曲にもなじみやすいと思って書いたのがこの本です」という。
| ◆初心者向け!タイプ別入門クラシック曲◆ |
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| ★ロックンロールが好きな人へ/ラベル作「ボレロ」 まったく同じフレーズが繰り返され、コード進行はいたってシンプル。楽器が少しずつ増えていくので人の気持ちを次第に高揚させる。そして曲の最後で、それまでのコード進行くずれ、混沌(こんとん)の大クライマックスで曲を締めくくる |
| ★ポップスが好きな人へ/モーツァルト作「フルートとハープのための協奏曲」 多くのポップスは、滑らかなコード進行をもとに作られている。モーツァルトには、スムーズに流れるコード進行の特徴があり、それが両者の共通点。曲が流れていることすら気がつかないほど自然なのがこの曲 |
| ★ジャズが好きな人へ/ガーシュイン作「パリのアメリカ人」 「ラプソディ・イン・ブルー」と並ぶカーシュインの代表作。ジャズの特徴的なサウンドが、クラシック作品に初めて音符として取り入れられた作品として重要な意味を持つ。ガーシュインは、ジャズやブルースの要素をクラシックに取り入れた最初 |
| ★フォーク系音楽ファンに/ヴィラ=ロボス作「バキアナス・ブラジレイラス第五番」 60年代の若者の間で「フォークの女王」と呼ばれていたのがジョーン・バエズ。彼女が歌った曲といえば「ドナドナ」や「ウィ・シャル・オーバーカム」が挙がるが、レパートリーの中にこのクラシック楽曲も含まれている |
| ★演歌の大好きなあなたへ/チャイコフスキー作バレエ「白鳥の湖」 演歌ファンが素直に聞けるクラシックのナンバー・ワンはチャイコフスキーだ。その中でも誰もが知っているのがこの曲。演歌の特徴として、あまりハッピーエンドな人生を歌わないことがあるが、『白鳥の湖』も白鳥の姿を変えられた王女と王子の恋愛悲劇 |
| ★アニメ、ゲーム音楽好きへ/サンサーンス作「動物の謝肉祭」から「かめ」 アニメやゲームのテーマで最も多いのが「愛」「ファンタジー」「コミカルさ」の3つだろう。この中で意外と表現しづらいのがコミカルさだが、このサンサーンスの作品は、音楽におけるコミカルさを教えてくれる教科書的な曲 |
| ※みつとみ俊郎著「41歳からのクラシック」(新潮選書)より |

